88.復讐
「おい、止まれ!何だ貴様!?」
王城の門番は、門へと徐々に近づいて来る男を警戒し声を掛けた。
「……どけ」
アキラは門番を睨みつけながら言う。
門番はアキラの目を見て後にこう語った、"あの目はまるで悪魔だった"と。
「おまえ……何」
ーバキッー
最後まで言う前にアキラの拳が門番の顔面にめり込む、門番は吹き飛びながら鼻血を撒き散らしそのまま気絶した。
「……デスト」
重厚な門を前に、アキラはデストを召喚した。
ードガァァァァァァンー
デストは言われるまでもなく拳を放ち、門を吹き飛ばす。
カンカンと城内に鐘が鳴り響く、それは敵襲の合図だった。
訓練された城内の兵は瞬く間にアキラを囲う。
「誰だ貴様!?」
「ライム、ルージュ、シルヴィア、ムゲン」
残りの4体の従者が出現する。
それと同時に兵達は一斉に剣を構えた。
「バカを探して連れてこい、邪魔するものは全て蹴散らせ」
主の命を受け従者達は散開する、だがそれを見逃すわけなく兵達は次々と交戦を始めた。
ーうわぁぁぁ
ー助けてくれぇ!
そこからはもはやアキラ達の蹂躙劇だった。
斬られ、殴られ、投げ飛ばされ、溶かされた兵達の阿鼻叫喚が場内に響き渡る。
アキラを狙う兵もいたが、アキラの剣と氷魔法によって葬られて行く。
続々と城内の兵達が参戦するが、焼け石に水だった。
重傷者が増えていく、徐々に兵達はアキラ達に怯え攻める事をやめた。
◇ ◇ ◇ ◇
「うー、頭痛ぇ……」
その頃カリードは2日酔いでベッドで眠っていた、時刻は10時、謁見の間では国を左右する議会が開かれていたが、居ても意味ない為ヘイレン王はカリードを議会へ呼ばなかった。
ードンッー
扉が勢いよく蹴破られる。
「ん?何だ?」
頭痛を堪えカリードは起き上がる。
ドアを蹴破ったそれは、部屋に入って来る。
シルヴィアだった。
「魔物!?」
シルヴィアはカリードに近寄る、カリードは慌ててベッドから降りて逃げようとするが、腰を抜かしてしまい床を這いずる。
「や、やめて……」
ーバキッゴギッー
「ぎゃあァァァ!!」
シルヴィアはカリードの両足を折ると、カリードの服の襟を掴み引き摺りながらアキラの元へと戻る。
◇ ◇ ◇ ◇
散開した従者が続々と戻ってくる、どうやらカリードを見つけた様だ。
負傷した兵達を回収した後、残りの兵達はただアキラを見ている事しか出来なかった。
痛みでうめき声を上げ苦悶の表情を浮かべる仲間の姿を見て次は自分がこうなる番だと恐怖で身震いする、いくら城を護るのが仕事とはいえ負けが確定している戦いに挑む者は居なかった。
「いだぃぃ……」
最後にシルヴィアが戻る。
痛みで涙を垂れ流しているカリードをシルヴィアはアキラの前に置く。
アキラは俯くカリードの髪を掴み、顔を上げさせる。
「おまえ孤児院に何をした?」
アキラはカリードを睨み付ける。
「俺は第三王子だぞ、こんな事をしてただで済むと思ってるのかぁ!?」
アキラはカリードの顔面を床に叩きつけた、カリードの鼻は折れ血が噴き出す。
「おまえの頭は空っぽか?いいから俺の質問に答えろ」
「……やめでぐれ」
もう一度顔面を床に叩きつける。
「はなじまずから、もうやめでぇ」
カリードは自分が計画し実行した全てを話した。
アキラは表情を変えない、カリードはそれが逆に怖かった。
アキラはカリードの髪を掴んだまま引き摺り歩き出す。
向かうのは謁見の間だ、問題児のカリードを放置していた王にカリードが何をしたのかは思い知らせる必要があるからだ。
「待て」
騎士団長ゴルドーがアキラの前に立つ。
「どけ」
「この先には行かせるわけには行かない」
「………」
アキラはアナザースキル【覇気】を発動させる。
場の空気がアキラの殺気によって重く歪んだ、ゴルドーの額から油汗が流れる。
それでもゴルドーは剣を構えた、アキラは謁見の間へと向かう為再び歩きだす。
「…………」
「…………」
ゴルドーの横をアキラは無言で通り過ぎる。
アキラが去った後、少ししてゴルドーは剣を落とし膝をついた。
「……あんな者に勝ててたまるか」
迫り来る死を前に何もできなかった、恐怖で体が震える。
アキラの気まぐれで生かされた様なものだ、1つでも選択を間違えていればあの世へと旅立っていただろう。
ードンッー
アキラは扉を蹴破り、謁見の間へと入る。
王家の面々と領主貴族達の視線が一斉に集まる。
アキラはカリードをヘイレン王の前へと放り投げた。
「もう一度何をしたか話せ」
カリードは恐怖で震えていた、歯がカチカチと勝手に動いて喋れない。
問答無用でアキラはカリードの顔を足で踏みつける。
「……聞こえないのか?何をしたか言えよ」
「いいまず、いいまずがら、ゆるじで」
カリードは先程と同じ様に孤児院にした事を話し始めた。
「それのせいで、俺の愛する人と4人の子供が焼け死んだ」
王家と貴族の面々はみるみる顔が青ざめていく。
ヘイレン王は怒りで震えていた、無理もない、この男の身勝手で栄あるパルメッツァ王国の未来が今ここで閉ざされてしまったのだから。
それを水に流してこの国に居てくれないか?など言えるわけがない、国が滅びる、現にたった1人の力によって城は落城しているのだから。
「……この、たわけがっ!!!!」
顔を赤くしカリードを怒鳴りつける。
「こいつはここで殺す」
誰も止める事が出来なかった、ここで止めればその剣先が自分に向くかもしれない。
「ごろざないでぇ……」
涙と鼻水を垂れ流しながらカリードは助けを乞う。
アキラはアズールの宝剣をカリードの首目掛けて振り下ろす、だがその時……
ありがとうアキラ もう大丈夫だから
声が聞こえた後、ルクレリアの香りがアキラを抱きしめる様に包み込んだ、それはとても優しくとても暖かかった。
アキラの目は見開き、少しして一雫の涙が頬を伝う。
アズールの宝剣はギリギリで止まる、そしてカリードの首の皮が切れ血が滴る、カリードは失禁しながら気絶した。
「……もう俺に関わるな……二度と」
そう言うと、アキラは謁見の間を去って行く。
暫しの間、王家と貴族達は無言で立ち尽くしていた。




