87.議会
〜パルメッツァ王国、王城〜
王家と全ての貴族領主が謁見の間に集まり、パルメッツァ王国の未来を左右する重要な議会が開かれていた。
「アキラと言う男の調べはついたか?」
リンドブルムの領主が、ヘイレン王の前へ出る。
「は!報告致します、移住してきた時期は不明ですが現在はネマナ村の孤児院に居住しています」
「他には?」
「孤児院にはルクレリアと言う若い女と、4人の孤児が同居しています」
「うむ、下がれ」
速やかにリンドブルムの領主は持ち場に戻る。
「ノーマニ、アキラの過去はわかったか?」
「ラマダグェン法国の学園都市ラクーリアで起きた事件をご存知ですか?」
「確か何者かの手によって、アルフィリオ学園に数千のアンデットが出現した事件だったか」
「ええ、その数千のアンデットを1人で滅ぼした者がいます」
「まさか……?」
「そのまさかです、名はアキラ、偶然と言うには些か無理がありますね、そして事件での死者は驚異の0でした」
「それほどの手練れか……」
「それと、そのアキラは自由気ままに人生を謳歌する事に執着し、どの国にも属した事がありません」
「そんな男が我が国で暮らす理由はおそらく……」
「お父様、そのルクレリアという人と恋仲にあるのは、ほぼ間違いないかと」
「アヌエルもそう思うか」
「えぇ、それしか考えられません」
「父上、これは絶好のチャンスです」
「メンデス、お主の言いたい事はわかる、アキラを完全に我が国に引き込めればトレノ公国からの足枷から解放され、魔物の増加も解決すると言いたいのだろう?」
「そうです父上、もしかしたら更なる繁栄も望めます」
「あなた、四大国しかり強国には必ずと言っていい程、ジョブスキルを持つ者が仕えています」
「ヒルダよ、ジョブスキルを持つ者と決めつけるのは早いのではないか?」
「それは私から見解を述べます」
「うむ、騎士団長ゴルドーよお主はどう思う?」
「私は数多の戦場を経験しましたが、魔物を従え共に戦う者など見た事も聞いた事もございません、ジョブスキルの可能性が1番考えられます」
「わかった、全てを踏まえて今後の方針を決めるとしよう」
「お父様、まずはパルメッツァ王国に愛着を持ってもらう事が第一優先かと思います」
「アヌエルよ、なぜそう思う?」
「この国が居心地悪いと感じたら、恋人と子供達を連れて他国へ移るかもしれないからです、話の通りのお方ならどの国も高待遇で向かい入れますわ」
「アヌエル、自由気ままに過ごしたいアキラはそう簡単にコロコロと居住地を代えるかな?生活基盤が出来上がれば、とやかく言う国の方を何とかしてしまうと思うけど」
「ノーマニお兄様、殿方に守るべき者ができた場合、まず第一優先は誰だと思いますか?」
「……恋人や家族だね」
「そうです、きっとアキラと言う人も同じ事を考えるでしょう」
「私もそう思いますわ、いくら強き者でも恋人や家族を戦いに巻き込まない、男とはそういう生き物なのです」
「お母様もそう思いますか、これは女性の目線からの方がわかりやすいですね」
「うむ、ヒルダとアヌエルの意見を取り入れよう」
「父上、国に愛着を持って貰うのはわかりました、ではその方法はどうしますか?」
「特に何もしない」
「父上、それは何故ですか?」
「アキラは何かを強要されるのを心底嫌がるとみている、ここは焦らず長い時間をかけてゆっくりと友好関係を築いて行こうではないか」
「メンデスよ、父上の言う通りだ焦って下手な事をすれば、逆にアキラはこの国を敵対視するかもしれない」
「そうだ、あの力が我が国に向けられるのは肝が冷える」
「私も、それで構いませんわ」
「お母様と同じく私もその案が1番良いかと」
「では多数決を取る、話を聞いて何か意見のある者はいるか?」
貴族達は誰も手を挙げない。
「では、満場一致で暫く静観する方針にする」
ーは!ー
議会が終わろうとした頃、慌てた兵が扉を勢いよく開け息を切らしながら入室する。
「た、大変です!!城内に侵入者が!!」
「一体何人おる!?」
「そ、それが……魔物を引き連れた男1人です」
謁見の間にいた全員が驚愕する。
そんな男など、たった1人しか知り得ないからだ。
「……ヘイレン王、私は迎撃に向かいます」
ゴルドーは足早にその場を立ち去る。
「一体何が起こっておる……」
ヘイレンは何かアキラの逆鱗に触れた事をしたか考えるが、全く思いつかなった。




