85.予感
「まぁ、リンドブルムでそんな事があったの」
「あぁ、でももう心配無いよ」
リンドブルムの危機が去って3日経ち、アキラ、ルクレリア、子供達は変わらぬ日々を過ごしていた。
「やっぱアキラ兄はすげぇや!」
「ルク姉も鼻が高いわね」
「……アキラ兄、すごい」
ーバンッー
孤児院の出入り口の扉が開いた、ロッシュは息を切らしている。
「どうしたロッシュ?」
「アキラ兄!王族と2人の貴族がここに向かって来る!」
◇ ◇ ◇ ◇
(小汚い村だな)
馬に乗ったままカリードと2人の取り巻きはネマナ村へと入る、派手な服装とレインボーの羽が付いたセレブハットを被ったカリードは辺りを見回す、王都とかけ離れた貧相な村を見て眉を顰めた。
「……ネマナ村へようこそ、一体どうなされました?」
カラムは前へと出て来訪理由を聞く。
すると取り巻きの貴族がそれに応えた。
「このお方はパルメッツァ王国の第三皇子、カリード様だぞ!頭が高いぞ!」
「も、申し訳ありません!」
その場にいる村人は跪く。
そこにはロッシュの姿もあった。
「アキラと言う男に会いたいのだが?ここにいる事はわかっている」
「アキラですか……、何故会いたいのですか?」
「そんな事はおまえには関係ないだろ?」
カリードはカラムを睨み付ける。
ロッシュは隙を見て慌ててその場から逃げ出し、孤児院へと向かった。
「……申し訳ございません、アキラはこの先の孤児院にいます」
嫌な予感はしたが、教えるしか選択肢はなくカラムは渋々アキラの居場所を教えた。
「そうか、邪魔だそこをどけ」
カリードと2人の取り巻きは、人混みを掻き分けながら孤児院へと向かった。
◇ ◇ ◇ ◇
「王族と貴族?」
「そう!馬に乗ってここに向かって来る」
「……わかった、クロイル、エリサ、ロッシュ、ナコは自分の部屋に居てくれ」
「アキラ兄、大丈夫なのかよ?」
「ちょっと怖いわね」
「……大丈夫?」
「大丈夫だよ、心配するな」
ナコの頭を撫でる、子供達は自室に戻った。
「私は残ります」
「……でも」
「アキラの問題は私の問題でもあるのよ、一緒に話を聞くわ」
ルクレリアはアキラの手を握った。
アキラは頷き微笑む。
ーどんっどんっどんっー
扉をノックする音が聞こえ、アキラは出入り口へと向かい扉を開けた。
「おまえがアキラか?」
貴族の1人がそう尋ねる。
「えぇ、そうですが?」
「カリード様から話しがある、中へ入るぞ」
「ささ、どうぞカリード様」
「うむ」
カリードと2人の貴族はずかずかと中へ入って来る、アキラは少しイラついたが堪えた。
客間へ案内する、ルクレリアは既にお茶を準備していた。
カリードと2人の貴族はどかっと椅子に座り横柄な態度だ、アキラとルクレリアも椅子に座る。
「それで、話しと言うのは?」
「おまえ、俺に仕えろ」
カリードはニヤッと笑った、アキラを取り込めば次期国王の自分に箔もつく、そして何よりうざったい兄妹達を黙らせる事ができると考えていた。
「すみません、お断りします」
カリードと2人の貴族は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた、まさか断られるとは微塵も思っていなかったからだ。
「何故だ!?俺は次期国王になる男だぞ!」
「そうだ!無礼だぞ!」
「そうか?金か?金なら弾んでやる」
「俺はこの村を出るつもりはありません、金もいりません、今のままで幸せですのでお引き取りください」
「後悔するなよ!」
(平民のくせに!!)
カリードと2人の貴族は去って行く、アキラとルクレリアは嫌々ながらも最後まで見送った。
「アキラ……」
「大丈夫だよルク、俺は何処にも行かない」
アキラはルクレリアを抱きしめた。
そして4日が経つ……
「おのれ!俺をコケにしやがって!」
カリードは高級娼館で酒を飲みながら荒れていた。
「クソ!どうしたら奴を引き込める!」
カリードは諦めていなかった、はらわたが煮え繰り返る思いだがどうしてもアキラというカードが欲しかった。
暫しの間なんとか心を落ち着かせ打開策を考える、そしてある事を閃いた。
カリードはほくそ笑みながら、ワインを煽るように飲む。
2日後。
「それじゃあ行ってきます」
「気をつけね」
「前にも言った通り、今回は商会の依頼で一泊するから遅くなるよ」
「わかった、子供達と一緒に帰りを待ってる」
ーアキラ兄、行ってらっしゃいー
アキラはリンドブルムへと向かう、アキラが見えなくなるまでルクレリアと子供達は手を振って見送った。
リンドブルムへ着き、いつも通り集めた素材を売りお金を受け取る。
「では、お任せしますね」
レイブンから荷物を貰い隣町まで向かう。
無事荷物を届け、再度リンドブルムへと戻る。
「だいぶ遅くなったな」
リンドブルムに着いた、時刻は21時アキラは宿に戻ろうとすると、何かが飛んでくる。
ーホウッホウッホウッー
「フク!どうしたんだ?」
フクはアキラの服を嘴で引っ張りながら鳴き続ける。
最初は甘えてるのかと思っていたが、徐々に様子がおかしい事に気づく何だか焦っている様に見えてきたからだ。
「……皆に何かあったのか?」
ーホウ!ー
フクは一際大きい鳴き声を発した。
アキラは胸騒ぎを覚え、慌ててリンドブルムを後にした。




