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83.祝福

「ナコ、そんなに悲しむなよ」


「そうよ、フクもまたここに来てくれるわよ」


「美味しい物食べたくて、きっとまた来るよ」


「……うぅ、わかった……フクちゃんとバイバイする」


フクが完治し野生に帰す時が来た。

1番フクを溺愛していたナコは、野生に返す事を嫌がった。

アキラはそんなナコに、「フクにも家族が居るかもしれないずっと会えないのは辛いよ、ナコもルクレリア、クロイル、エリサ、ロッシュと会えないのは辛いだろ」と説得してようやくわかってもらえた。



「……フクちゃん、もう怪我しちゃダメだよ」


ナコに抱えられていたフクは飛び立つ、お礼でも言っているのだろうか何度もホウホウと鳴いていた。

去り行くフクに皆で手を振り見送る、ナコはポロポロと涙を流していた、きっとこういう経験を重ねて子供達は強く成長するのだろう。



月日は流れる。



「この珊瑚のかけらも素材ね」


ルクレリアは浜辺で素材を集めていた、アキラは村長に頼まれた仕事をして今日はそっちにかかりっきりだ。



(……そういえばアキラさんが来てからどれくらい経ったんだろう)


浜辺で倒れているのを見つけてから、今日この日までの事を思い出す。

多くの時間を一緒に過ごした、自分でもまさかこんなに大切な存在になるとは思っていなかった。

アキラの事を考えると心が暖かくもなるし不安にもなる、これが恋なのだろうと思った。


そんな事を考え耽ていたルクレリアは、背後に迫る魔物に気づくのを遅れてしまった。



ーーフシュルルーー



ルクレリアは背後を振り返る、巨大な蟹の魔物が鋏をカチカチ鳴らしながら今まさに、ルクレリアに襲い掛かる。



◇ ◇ ◇ ◇



「助かったよ、アキラ」


「いえ、これくらいどうって事ないですよ」


「相変わらず頼もしいな」


「それじゃあまた何かあったら言ってください」


「そうだ、これを持って行け」


「美味しそうな野菜ですね、いつもありがとうございます」


布に包まれた野菜を持ち、アキラは孤児院に戻る。



(そういえば、ルクレリアさんは今頃は浜辺にいるのかな)


そう考えたアキラは浜辺に寄り道する事にした。


ーキャァァァァ!!ー


「ルクレリアさん!?」


ルクレリアの悲鳴が聞こえ、野菜を落とし走り出す。

アキラの目に飛び込んで来た光景は、巨大な蟹がその大きな鋏でルクレリアの体を切断しようとしている姿だった。



「やめろぉぉぉ!!」


アキラは全力の脚力で蟹の元へ追いつきルクレリアの前に立つ、だが武器が無かった。

素手ではあの堅そうな甲殻に傷すらつけられないだろう。


蟹の攻撃が迫る刹那、無意識に剣を出すイメージを浮かべる。

するとアキラの右手に紅の装飾が美しい荘厳な剣が握られる形で現れた。

その時アキラは全てを思い出す……



前世の事、出会いと別れ、数多の戦い、自らのスキル、それらがフラッシュバックしながら、脳に雪崩れ込んで来る感覚に陥いる。



そしてアズールの宝剣で攻撃を受け止め弾き返す、巨大な蟹に大きな隙ができ、すぐさま追撃する。

先ずは関節部分を狙い蟹の鋏を叩き切った、蟹は痛みに悶える。

そして目を剣で突き刺した後、10本のアイシクルランスを放つ。

蟹は痙攣した後動かなくなった、どうやら倒した様だ。



「……アキラさん」


アキラは怯えたルクレリアを抱きしめる。



「心配しました」


ルクレリアはアキラの背中に手を回す、その後は暫しの静寂な時が流れた。



「……大事な話があります、2人で話せませんか?」


「……わかりました、子供達が寝た頃に話しましょう」


2人は孤児院に戻る。

ルクレリアは不安だった、どこか雰囲気が変わったアキラを見てとうとうこの時が来たのかと思って。


夜になりアキラとルクレリアは2階の窓から星を見上げる。

少ししてアキラが話し始めた。



「全てを思い出しました」


「……そうですか」


アキラはこれまでの事を全て話した、どんな人に出会ったのか、どんな戦いをしてきたのか、そしてもちろんジョブスキルの事もだ。



「アキラさんってすごい方だったんですね」


「俺はまだまだですよ」


「……行ってしまうのですか?」


途端にルクレリアの心は締め付けられる、覚悟はしていたつもりだ、だがそんな事は関係ないとでも言っている様に、心は悲しみで悲鳴を上げていた。



「……1つだけ、わかった事があります」


「…………」


「記憶を取り戻したらこの気持ちは、無くなってしまうのではないかと思っていました」


アキラはルクレリアを見つめる。



「だがそんな事は杞憂でした、ルクレリアさん、俺は貴方の事を愛している」


ルクレリアの目からポロポロと涙が流れる、悲しみに満たされた心が晴れていく。



「私も……アキラさんの事が好きです」


アキラは目から落ちる涙を指で拭ってあげた、そして抱き寄せた後唇と唇を重ね合わせる。


驚いたルクレリアは一瞬目を見開くが、静かに目を閉じる。

そんな2人を祝福するかの様に、月明かりが降り注いでいた。


そして2人はアキラの寝室に戻る。

軋むベッドの上、甘い吐息が混ざった男と女の会話が聞こえてくる。



ーアキラ、ルクって呼んで


ールク……


ー大好き、アキラ……



2人は何度も心と体を重ね合わせた。




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