82.収穫祭と女神
「……フクちゃんしっかりと食べるんだよ」
ナコは特にフクを溺愛していた、フクの餌やりはナコの担当になっている、フクを野生に返す時きっとすごく悲しむだろう。
今日もいつもと変わらず分担された仕事に皆精を出している。
もうすぐ村の収穫祭がある、アキラは薪割りを早めに切り上げ村の広場へと向かった。
「おお!アキラか丁度良かった!」
「カラム村長どうしたんですか?」
「この丸太を運んで欲しいんだが」
「わかりました」
アキラは大きな丸太をヒョイっと2つ両手で持ち肩に乗せた。
「相変わらずすごい力持ちだなアキラは」
「何故か簡単にできちゃうんですよね」
「全くどこかの英雄だったんじゃないか?」
「まさか」
2人は笑い合う、そして3往復して丸太をを全て運び終えた。
その後も収穫祭の準備を手伝う、豊穣の神に収穫した食物を捧げる祭壇を作り終え今日の所は終了となった。
「ルクレリアさん村長に収穫祭で何かやる様に頼まれてましたけど、何するんですか?」
夕飯を食べ終えルクレリアと一緒に皿洗いをしている最中にふと思い出す。
「豊穣の神に捧げる舞をします」
「そんなのがあるんですか」
「えぇ、衣装もちゃんとあるんですよ」
「へー、それは楽しみだ」
「私は初めて舞を担当するので、少し緊張します」
「子供達と一緒に見に行きますね」
「なら恥ずかしい舞にならない様一生懸命頑張らないとですね」
2人は笑い合う。
そして時間は流れ収穫祭当日となった。
村は賑い各自持ち寄った、野菜や肉などを料理し村の皆で分けて食べる。
「わっはは!酒が美味い!」
カラムは昼間から酒が飲めてとても幸せそうだ、あまり飲み過ぎて奥さんに怒られなきゃいいが。
皆料理に舌鼓を打つ、各家庭により料理の味付けが異なりいろいろな味が楽しめた。
「ほれ!アキラも飲め!」
「カラム村長、スピード上げ過ぎですよ」
「これでも俺はネマナ村で1番の酒豪と謳われたんだぞ、これくらいどうって事ない」
「歳を考えな歳を」
奥さんのツッコミに村の皆は爆笑する。
子供達もとても楽しそうだ、ナコはフクも連れてきて世話をしながら料理を食べている。
「これ貰い!」
「あ!それ私の!」
「早い者勝ちだよ!」
「ほんとガサツね、クロイルは」
「まーた始まった、仲裁する僕の身にもなってよね」
「……フクちゃん美味しい?」
お腹いっぱいになったら村の子供達と一緒に遊びに行ってしまった、本当に元気だな、でもとても良い事だ。
「アキラさん、どうですかお味は?」
「やっぱ俺はルクレリアさんの料理が1番好きです」
「本当ですか?嬉しいです」
村の人達は2人を見てニヤニヤしている。
「甘酸っぱいねぇ、若い頃を思い出すよ」
「私も旦那に恋した頃はあんなんだったわ、今は腹が出た親父だけど」
「うるせぇ!お互い様だ!」
食卓はまた笑いに包まれた。
アキラとルクレリアは既にネマナ村の公認カップル扱いされており、早く子供を見せろとまで思われていた。
「ラルド爺さんにも見せてやりたかったな」
「そうだねぇ、今のルクレリアちゃんの姿を見たらきっと喜んだだろうね」
カラム夫妻は暖かい目で2人を見守っていた。
夕方になり豊穣の神を讃える儀式が行われる。
ルクレリアは席を抜け準備に取り掛かる、ルクレリアの晴れ舞台だアキラは子供達と一緒に最前列に行く。
「楽しみだなぁ」
「ルク姉、はりっきてたわね」
「毎日練習してたもんね!」
「……ルク姉きっと綺麗」
「そろそろ始まるみたいだから、皆静かにしような」
美しい笛の音色が響く、妖艶な衣装を着たルクレリアが登場した。
遥か過去 神々が集いし世界で 豊穣の神は人を愛した 繁栄した我々は 貴方を忘れない いつまでも讃え続けるだろう
歌と共にルクレリアは舞う、アキラはその姿に引き込まれた。
「すごく……綺麗だ……」
思わず声が洩れてしまう、その儚く神秘さすら感じるルクレリアは、正に地上に舞い降りた女神だと思った。
儀式は終わり、ルクレリアがアキラ達の元へ駆け寄って来る。
「ルク姉すげー!」
「すごい綺麗だったよ、ルク姉」
「まさにネマナ村の秘宝だね!」
「……ルク姉すごい、フクちゃんも喜んでた」
「ふふ、皆ありがとう」
子供達は興奮していた。
「……アキラさん、どうでした?」
「すごく綺麗でした、ずっと見ていたかったです」
「……嬉しいです、ありがとうございます」
2人は頬を赤く染め合う。
「流石に今日は空気読もうぜ」
「クロイルのくせにわかってるじゃない」
「邪魔になるからとっとと行こうよ」
「……ルク姉とアキラ兄は仲良し」
4人はそそくさと退散する、残されたアキラとルクレリアは既に2人の世界に入っていた。




