81.ドラ息子
〜パルメッツァ王国、王城〜
「問題が山積みだな」
「そうですね、魔物の増加、隣国のトレノ公国は戦争準備をするから食料を回して欲しいと通達がありました」
「我が国は一昨年食料難になりました、先を考えて食料を備蓄しなければ行けません」
「だが軍事面では我が国よりトレノ公国の方が上回っている、その矛がこちらに向かない様従うしかあるまい」
「お父様、言いなりになりすぎるのも良くないかと」
「わかっておる、匙加減を間違えぬ様慎重に行くぞ」
「あなた、カリードがまたいませんが?」
「あのドラ息子は手がつけられん、放っておけ」
ヘイレン王、ヒルダ王妃、ノーマニ第一皇子、メンデス第二皇子、アヌエル第一皇女、王家の面々がこれから先の国の方針を会議していた。
まだ5歳のセレーナ第二皇女はこの場に居ないのは理解できる、だが17歳のカリード第三皇子が居ない事は問題だった。
カリード第三皇子は領主の継承権が薄い貴族の四男達を取り巻きにし、一緒に遊び呆けていた。
プライドが異様に高く楽観主義でとても内政に向かない、正に王室の汚点だ。
「カリードはこの前も問題を起こしました」
「あぁ、確か食い逃げだったか」
「王家の恥です」
兄妹達は心底カリードを軽蔑していた。
そんなカリードは今取り巻き達と高級娼館に居た。
「あっははは!ほら皆も飲め!」
「カリード様、ご馳走様になります」
「ささ、カリード様もどうぞ」
「私、お酒強い人好きだなぁ」
「ほぅ、なら飲み比べといこうか」
カリード以外の王家の者は頭を悩ませながら国の行く末を考えているのに、カリードは優雅に美女を侍らせ酒を飲んでいた。
これくらいならまだ良い方だ、酔っ払った勢いで喧嘩を起こしたり物を破壊しても悪びれもしない、寧ろ王家だから許されるとまで考えている。
そして1番厄介な点は自信家すぎる事だ……
「次期国王の俺に媚びを売っておいた方がいいぞ、はっはっは!」
「流石カリード様!先見の明がおありで」
「カリード様について行けば間違いなしですね」
「カリード様すごーい!」
ヨイショされてカリードは非常に上機嫌だ。
次期国王になる、これが酒の席を盛り上げる冗談でも何でもなく、本人は真面目に自分が次期国王になると思っていた。
「父上は保身すぎる、やはり俺の様な野心溢れる男が国を引っ張るべきだ」
こんなのが国王になったら国は一年保たず崩壊するだろう。
取り巻き達は誰もがそう思っているが決して口にはしない、なぜなら金づるを怒らせるわけにはいかないからだ。
「そもそもトレノ公国の言いなりになりすぎだ!戦争で黙らせれば良い!」
カリードは馬鹿だった、情勢が見えてなさすぎる。
トレノ公国は仕方ないから攻めないでおいてあげる姿勢で、パルメッツァ王国が歯向かい過ぎたらいつでも進軍できる体制が整っていた。
パルメッツァ王国とトレノ公国が戦争になったらパルメッツァ王国に勝ち目は無いに等しいのだ。
「そういえば最近魔物が増えていますね」
「商人が困っているだとか」
「ふん、そんな物適当に間引いとけばよい」
カリードは馬鹿だった、情勢が見えてなさすぎる。
魔物が増え続ければ近隣の村や街は襲われて壊滅する、民は税を納めるそれは国の血液だ税金と言う血液が少なくなれば人つまり国は滅びるのだから。
それに商人が国から離れれば物価が上がり続け民の反乱も招く、魔物増加の問題は大きくなる前に手を打たないと致命傷になるのだ。
ヘイレン王は最初の内は叱っていたが、一向に改善しないカリードを既に見放していた。
どこで育て方を間違えたかわからない、本当に自分の子供かと疑う事もあったが現実だった。
「さて、今夜も騒ぐぞ!」
今宵もカリードは美女の肩に腕を回し、ワインをラッパ飲みする。




