79.休日
「ひゃっほお!」
クロイルは勢い良く海へ飛び込む。
今日は一日休みにして海水浴に来ていた、たまの息抜きも必要だとことん楽しもう。
「ほんと子供ね、クロイルは」
「エリサの胸は更に子供だけどな」
「バカクロイル!!」
「まぁまぁ2人共」
「……海きれーい」
アキラは子供達のいつもの光景を見て、今日も平和だなぁと感じていた。
子供達は水着に着替え準備体操をしてから、我先にと海へ向かって遊んでいる、元気がありすぎて足を攣らせて溺れない様にちゃんと見張っておかないと。
「……お待たせしました、アキラさん」
「いえ、ルクレリ……ア」
呼ばれて振り返る、アキラは白いビキニを着たルクレリアに見惚れて思わず固まってしまう。
健康的な大きな胸と引き締まったくびれ、髪をいつもより短く纏めたおかげでうなじが見え、恥ずかしそうにしている姿もまた可愛い。
「そんなに見られると……少し恥ずかしいです」
「あ、あぁ!すみません!綺麗すぎて思わず!」
「綺麗だなんて、そんな……」
お互い顔を赤くしていた。
陰から覗く子供達はその光景を見てニヤニヤしている。
「ルク姉にもとうとう春が来たか!」
「乙女ねルク姉は」
「2人ともウブだねぇ」
「……?」
ナコだけ意味がわからなくキョトンとしている。
「もう皆聞こえてるわよ!」
子供達は見つかったと言いながら慌てて逃げ出す
ナコだけ鬼ごっこするのかな?と勘違いしていた。
「皆でアキラ兄埋めようぜ!」
クロイルの一声でアキラは砂浜に顔だけ出して埋まる、砂で体の部分はムキムキのマッチョに作られ皆大爆笑だ。
その後は、ナコだけアキラに抱えられながら皆で一緒に海で泳いだり、浜辺でフルーツを食べたりしながら楽しい時間を過ごす。
「楽しいですね、アキラさん」
「楽しいです、子供達もまだまだ元気いっぱいですね」
「……あれ」
日差しにやられたのか、ルクレリアはふらつき倒れそうになる。
アキラはすかさずルクレリアを抱き寄せた。
肌が触れ合いお互いの体温がわかる、そして顔もキスできる距離まで近かった。
2人は途端に顔が赤くなる、だが何故かもう少しこのままでいたい、口に出さずとも互いにそう思ってしまっていた。
「大丈夫ですか?ルクレリアさん」
「すみません、熱中症だと思います」
「少し、日陰で休みましょうか」
「……はい」
抱き合ったまま会話をしていた。
2人はどこからか視線を感じ取る。
「行け!アキラ兄、そこだ!」
「キャー!なんてロマンチックなの!」
「若い男女が2人、映えますなぁ」
「…………?」
案の定子供達だった、途端に恥ずかしくなった2人は慌てて距離を取る。
「お・ま・え・らー!」
子供達は更にニヤニヤしていたのを見て、アキラの照れ隠しかまた鬼ごっこが始まった。
その光景にルクレリアは思わず笑ってしまった。
少し休憩した後、皆で釣りを始めた。
「おぉ!!すげー引っ張り!!」
「クロイル!今日の晩飯だ!僕も手伝う!」
クロイルとロッシュは強力して竿を引く、うぉぉぉぉ!と言いながら一世一代の大物を釣り上げた。
「ただの流木じゃない」
エリサは大爆笑しながら言う、クロイルとロッシュはしょぼんと項垂れていた。
「わーい、お魚さん釣れたよ」
ナコは釣れた魚をアキラに見せに来た。
「ナコは釣りの名人だな」
ナコの頭を撫でながら褒めてあげると、えへへと笑いながらナコは胸を張る。
子供達は誰が1番多く魚を釣れるか勝負を始めたので、アキラはルクレリアとゆっくり釣りを楽しむ事にした。
波の音、カモメの声、潮風、柔らかな時間がゆっくりと過ぎていく。
「……のどかですね」
「……そうですね」
「いつまでもこんな時間が続けばいいのに」
ルクレリアは遥か遠くの水平線を見つめる。
「そうですね……」
「アキラさんは記憶がもし戻らなかったらどうしますか?」
「……わかりません、ただなんとなくですけどいつか必ず記憶が蘇ると思います、いろいろな楽しい思い出があった気がして、それを忘れたくないってたまに思う事があるんです」
「……そうなんですか」
ルクレリアは何処か寂しそうな表情をした、記憶を思い出したらいつの間にかアキラが居なくなってしまうと思ったからだ。
ただそれを口に出さない、それは自分の身勝手な思いであり、それに自分に置き換えて考える、もし自分が記憶喪失になったとして子供達や村の人達を忘れたままになる事は決して受け入れたくない。
夕陽が水平線の向こうに沈んでいく。
「そろそろ戻りますか」
「……そうですね、夕飯の準備もしないと」
2人は魚が入った桶を持って歩き出す。
「アキラ兄、ルク姉!私が1番釣れたわ!」
エリサは得意気に桶を見せる、ナコと僅差で勝った様だ。
「すごいな、今日はご馳走だな」
「料理のしがいがあります、残ったのは干して干物にしましょう」
皆今日1日満喫できた様で何よりだ。
皆で笑いながら孤児院に帰る、この幸福な時は明日も明後日も続く。
アキラはそれが堪らなく、愛しくて嬉しかった。




