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77.目覚め

「ゔ……ここは……?」


「大丈夫ですか?」


「……あなたは?」


「私はルクレリアです」


「……ルクレリア……?」


美しい緑の髪をシュシュで纏めた、綺麗な女性がベッドに腰掛ける。

アキラは思わず見惚れてしまう、滲み出る優しい雰囲気も相まって仮に聖女と言われてもすんなりと信じてしまうだろう。



「そうルクレリア、ここはネマナ村の孤児院です」


アキラは奇跡的に生きていた、商業都市ユルフォンから遠く離れたパルメッツァ王国にあるネマナ村へと流されていた。



「あなたのお名前を教えてください」


「……俺は……アキラ」


「アキラさん、どうして浜辺で倒れていたのですか?」


「……どうして俺は……ゔぅ」


アキラは頭痛で頭を抑える。



「無理しないでください!」


「……すみません、何も覚えてなくて」


アキラは記憶を失っていた、覚えていたのは自分の名前だけだった。

もしここに船乗りがいれば、記憶が無くなるくらいで済んで良かったなと言うだろう、凶暴な魔物、水流が速い海域、海水による低体温症、様々な危険が蔓延るのだから。



「何も覚えてないのね、暫くはここで休んでいってくださいね」


「……ありがとうございます」


ルクレリアは優しい顔で微笑んだ、そして何か食べて体力をつけないとと言いながら部屋を後にした。

少しして視線を感じた、辺りを見回すと扉の影から4人の子供達が恐る恐るアキラを見ていた。



「………………」


「俺はアキラ、よろしく」


アキラは子供達に挨拶したが子供達は慌てて逃げ出した、見ず知らずの男がいきなり自分の家に居たら誰だって警戒するかと思い、さほど気に病む事はなかった。



「卵粥作りましたので、食べてください」


「……すみません」


アキラはスプーンで粥を掬おうとするが、手に力が入らずポロッとスプーンを落としてしまった。

ルクレリアは新しいスプーンで粥を掬いアキラの口元へ運ぶ。



「はい、あーん」


アキラは恥ずかしさで少し頬を赤く染めるが口を開けた。

粥は食べやすい温度でするっと喉を通る、そしてふわふわの卵が味を飽きさせない、とても優しさが詰まった卵粥だった。



「美味しいですか?」


「すごい美味しいです、料理上手なんですね」


「良かったです、料理は毎日作っていますからね、得意です」


「俺も料理できたのかな……なんとなく下手だった様な気がします」


アキラは苦笑いする。



「ふふ、それなら私が教えますよ」


ルクレリアはニコッと笑う、その姿を見てアキラの心に淡い何かが芽生えた。


アキラはまた先程と同じ視線を感じる。

ルクレリアもそれに気づく。



「クロイル、エリサ、ロッシュ、ナコ、こっちに来なさい」


「ルク姉、大丈夫なのかよそいつ」


「クロイル、そう言う事言わないの、大丈夫だから」


クロイルは頬に絆創膏をつけたワンパクな子だ、最年長でいざと言う時は皆を守る、将来は冒険者になり皆に楽をさせてあげたいと思い、ラルドお爺さんに作ってもらった木剣で毎日素振りをしている。



「クロイルの言う通りよ!ルク姉不用心すぎ!」


「エリサも心配しすぎよ」


エリサはしっかり者で皆の纏め役、ルクレリアのお手伝いを率先してやるとても良い子だ、クロイルとは意見がぶつかり合う事もしばしばあるが、側からみれば喧嘩するほど仲がいいと思うだろう。



「でもルク姉がそう言うなら、そうなんじゃない?」


「そうよロッシュ、困ったらお互い様でしょ?」


ロッシュは食いしん坊でぽっちゃりしている、皆のムードメーカーでクロイルとエリサの痴話喧嘩をいつも仲裁している、将来は料理人になって自分のお店に皆を招待する事を夢見ている。



「……でも、あの人優しそうだよ」


「人に敏感なナコがそう言っているのだから、皆も邪険にしないであげてね」


ナコは引っ込み思案で甘えん坊の最年少だ、ラルドお爺さんから貰ったウサギのぬいぐるみをいつも持ち歩いている、おっとりしている為エリサとよく手を繋いでいる。


ルクレリアに促され皆部屋に入ってくる。



「……俺はクロイル」


「私はエリサです」


「僕はロッシュだよ!」


「……私、ナコ」


皆ペコっとお辞儀をする。

アキラはふらつきながらも、ベッドの横にある椅子を支えにして立ち上がる。



「俺はアキラ、よろしく」


ニカッと笑い、それぞれ握手をする。

弱っている体でわざわざ立ち上がり目を見て話す、悪い人では無さそうだと感じた子供達の警戒が徐々に解けていった。

少し話をした後子供達は部屋を出る。



「アキラさん、ベッドに横になっててください」


ルクレリアはアキラの体を支え、そのままベッドに寝かしつける。



「ありがとうございます、ルクレリアさん」


「子供達ともその内打ち解けられるでしょう」


「はい、とても良い子達ですね」


「ええ、皆とても優しい子ですよ」


ルクレリアは微笑んだ。



「良くなるまで、私が面倒を見ますから安心してください」


「何から何まで本当にありがとうございます」


「いえ、それじゃあゆっくり休んでください」


ルクレリアも部屋を出る、そしてアキラはまた眠りについた。




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