71.エルフの危機
エルフ、それは精霊を信仰し魔力が豊富な森を好む一族だ、容姿淡麗で魔法に関する事は右に出る者がいない。
そして閉鎖的で基本的に住処とする森からは出てこない、なぜなら体内に森の魔力を取り込んで生きるからだ、その為エルフは長命であり600年は生きると言われている。
エルフは出生率が悪く数が少ない、その為か同胞を何より大切にしている。
ある領主がエルフを隷属にしようと軍を出すが、エルフの逆鱗に触れ軍は全滅し逆に領地は更地と化した、その出来事が広まり"エルフと竜種は怒らせるな"と言う諺ができた程だ。
そんなエルフが住むリュームの大森林に今、死活問題が起きていた。
「このままでは我らは滅びゆく運命です!」
「わかっている!だがどうしろと言うんだ!」
まだ若いエルフが声を荒げる、それに長のヴィクセンが反論した。
リュームの大森林に邪竜が住み着いた、邪竜は森の魔力を吸い上げ肥大化し続け、更には瘴気を撒き散らし森は衰弱していた。
対策会議は手の施しようが無いほど荒れている。
「第一討伐部隊を派遣したが誰1人戻って来なかった!」
ヴィクセンは頭を抱えていた。
「なら、他の森に移住するのはどうでしょうか?」
「そんな森どこにある……?魔力が豊富な森などそうそう無い、見つかるまで彷徨うか?そんなの砂漠で光る一粒の砂を見つける様な者だ」
「……今日はこれまでだ、各自持ち帰って良い案を考えてくれ」
会議は白熱しまた口論になりかねない、今は仲間割れをしている時では無いと思ったヴィクセンは対策会議を終わらせる。
皆会議室を後にする、良い案など浮かんでいたらとっくに話していると言う思いを心の内に留めながら。
「はぁ……いったいどうしたらいい」
「……お父様、大丈夫ですか?」
「あぁ、フェルシエか」
紫色のロングヘアーの美女が会議室へ入ってくる、ヴィクセンの1人娘だ。
「少しお休みになった方が……お母様も心配しております」
「すまない、だが長として休んではいられない、アーシェにも心配かけてすまないと謝っておいてくれ」
「……お体に気をつけてください」
フェルシエは心配そうな顔をしながら会議室を後にした、残ったヴィクセンは引き続き解決策を見つける為に思案に老ける。
その日の夜フェルシエはある夢を見る。
ーーこれで終わりだぁぁぁ!!ーー
ーーガァァァァァーー
黒髪黒目の男が邪竜の頭に剣を刺した後、邪竜は凍りつきひび割れそして崩れた。
それを見たフェルシエは飛び起きた。
「ハァハァ……これは……?」
(精霊様のお告げ……?)
フェルシエは精霊の巫女だ、エルフを愛する精霊がエルフの繁栄の為お告げを齎す、そのお告げを聞く役目を果たすのが精霊の巫女だ。
「……お父様に報告しないと」
フェルシエは忘れない様夢の出来事を紙に事細かく書き留めた。
翌日の対策会議にて……
「それは本当なのか?」
「はい、これは精霊様のお告げです、黒髪、黒目の剣を持ったヒューマンの男が邪竜を滅ぼします」
会議室がざわつく。
「だが他所者に頼るなど……」
「だったら他に案があるなら言ってみろ?」
「この森に他所者を入れると言うのか!?」
「そもそもそのヒューマンの男は本当に存在するのか!?」
若いエルフ達が言い争いを始めだした。
「……黙れ!!!!」
ヴィクセンの大声で会議室は静まりかえる。
「フェルシエ、そのヒューマンの男を探し出してくれ」
現状フェルシエしかその男の顔がわからない、探しに行くならフェルシエしか頼めるものは他に居なかった。
「わかりました、必ず見つけ出します」
そしてエルフの未来はフェルシエに託された。
3日後……
旅路の格好をしたフェルシエを、エルフの里に住む者達総出で見送る。
「フェルシエ、気をつけてね」
「はい、お母様」
アーシェはフェルシエを抱きしめる。
「フェルシエ、エルフの未来は託したぞ」
「お父様、必ず戻ります」
アーシェと同じ様に、ヴィクセンもフェルシエを抱きしめた。
「フェルシエ、これをつけなさい」
ヴィクセンは変化のペンダントを渡す。
変化のペンダントは元々はエルフ製の魔道具だ。
変化のペンダントをつけたフェルシエはヒューマンの女に変わる。
「それでは行って参ります」
フェルシエは男を必ず探し出すと決意を胸に、長い旅路へと歩み出した。




