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70.敗北を知って

「目が覚めたかい?」


「ここは?」


「医務室だよ」


ミランダは読んでいた本を閉じて、目が覚めたアキラの様子を窺う。

アキラは自分の身体を見る、腕と胸には包帯が巻かれてあった。



「そうか……あのまま気絶して……」


アキラは決勝で敗北した事を思い出した。



「流石にあれには勝てなかったな」


「えぇ、すごい強かったです」


「だが、あそこまでジェイドと闘えた奴は初めて見たよ」


そう言うとミランダは少し微笑んだ。

医務室の前の廊下がやけに騒がしい、少しすると扉が開きミランダファミリーの強面おっさん達が続々と入って来る。



ーー怪我大丈夫か?これ食うか?


ーーすごかったぜ、アキラの旦那!!



いつの間にか男達はアキラの漢っぷりに惚れていた様だ、あの伝説の傭兵を前に逃げずに最後まで戦い抜いた姿を見て涙した者までいた。

ボルツもその1人だ。



「兄貴!俺感動しました!どこまでもついて行きます!」


ボルツはアキラに向かって深く頭を下げる。



「うるさいねあんた達!ここは病室だよ!」


「あ、姐さん!?すみません!」


「全く、何がどこまでもついて行くだい、あんたは私の部下だろうが馬鹿」


「そ、そうでした!」


ボルツが顔を赤すると、ワハハと病室内が男達の笑いに包まれた。

それからむさ苦しいとミランダに促され、慌てて皆病室を後にする。



「良いファミリーですね」


「あぁ、皆いい奴らだよ、顔は凶悪だがな」


アキラは笑いを吹き出しそうになり堪える。



「これは礼だ」


ミランダは袋をアキラに渡す、受け取るとずっしりした重みがあった。



「金貨30枚入っている」


「良いんですか?」


「あたりまえだ、これは正当な報酬だよ」


「ありがとうございます」


「それに私はその30倍は儲かったしな」


ミランダは決勝戦ではジェイドに賭けていた、その為予選から決勝まで一回も損をしていない。



「抜け目ないですね」


アキラは苦笑いをする。



「これくらいできなきゃ、ファミリーを引っ張っていけないよ」


「そうかもしれませんね」


「それより、いつ出発するんだい?」


「傷の痛みもそこまで酷くないので、2日後くらいには」


ミランダが取り寄せた、高品質の回復役のお陰でアバラ骨折の治りが速かった。



「わかった、それまでゆっくりしな」


そう言うとミランダは病室を後にする。



(……初めての完全敗北だな)


ジョブスキル【大帝】を使ってもジェイドに勝てるかと聞かれたら、アキラは今のままでは勝てないと答えるだろう。

それ程の強さだった、差が圧倒的すぎて悔しいと思う気持ちすら烏滸がましい。



「……世界は広いか」


ジェイドの言葉が頭に蘇る、裏コロシアムに出て良かった、自分はまだまだ弱い事を知れた、きっとジェイドクラスの戦士達は他にもいるだろう。

それらはジェイドみたいに優しいとは限らない、もし戦いになったら全力で殺しにくる可能性もある。



「精進しよう」


そう心に決意したアキラは立ち上がる、自由気ままに過ごしたければそれを貫き通す強さが必要なのだ。







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