7.マジで死ぬよこれ
角ゴリラがゆっくりと近づいて来る、随分と余裕そうな態度だった。
鑑定を使ってステータスを見る。
個体名 なし
種族 ホーンコング
筋力.408
魔力.152
知力.92
技力.242
防御.300
俊敏.192
【スキル】
・剛力
・ラッシュブレイク
「俺らなんか雑魚ってか」
明らかにパワータイプだ、一撃でもくらえば致命傷なのは一目瞭然だった。
骨が砕けるだろう。
ライムとルージュがアキラを守る為に前へ出る。
「おまえら……」
ライムとルージュも自分達より強者だと解っているはずだ、死の気配がすぐそこまで来ている事を嫌でも感じているだろう、それでも主を守ろうとする。
その姿にアキラは勇気を貰う。
「俺がビビってちゃおまえらに愛想尽かされるよな」
アキラはそう言ってロングソードを構えた。
ホーンコングはこちらへ向けて走り出す。
恐怖で体が鉛の様に重くなる、動け動けと自分に言い聞かせる。
ホーンコングは走りながらジャンプし、強烈なパンチをかます。
それをアキラはライムを慌てて抱え、間一髪で回避した。
ルージュもバク宙をして回避する、その光景がスローモーションの様に見えた。
砂塵が舞い上がり石礫が肌を打つ。
それでも目を瞑ってなんかいられない。
(なんてパワーだよ!!)
酸がホーンコングに当たる。
ライムがすかさず攻撃した様だ。
だがあまりダメージは届いていないのか、ホーンコングも何事もなかったかの様に追撃してくる。
ルージュは着地した後フルスピードでアキラの懐に入り、ホーンコングの攻撃をナイフで逸らす。
だが逸らしきれずルージュは吹き飛んだ。
「この野郎ぉぉぉ!!」
ルージュに気を取られた隙を逃さず、アキラはロングソードを振るった。
今すぐにでもルージュの安否を確認したいが、命懸けでルージュが作った好機を無駄にはできない。
ホーンコングは剛力を発動させロングソードを掴む。
そのまま投げ飛ばされ、ものすごいスピードでアキラは大木にぶつかった。
その衝撃はまさに、大型トラックに撥ねられた様な衝撃と言っても過言ではなかった。
「ごaはぁッ@&〆#」
声にならない声が漏れる。
肺から空気が無理やり零され、胃の底から込み上げる胃液と血液が混ざった物を吐き出し、アキラはぐったりしていた。
慌ててライムはアキラの体全体に抽出したパスリカ花のエキスをかけた、だがアキラは動かない。
ホーンコングは余裕を崩さずゆっくり近づいて来る。
ライムは触手を出し、倒れているアキラの頭を撫でると静かにホーンコングに向かって歩みだした。
(行くな……ライム……)
止めたくても声すら出ない。
アキラは何もできない自分がただただ惨めだった。