幕間.涙の少年
「あの兄ちゃんには悪いけど、捕まる訳には行かねぇからな」
少年はアキラから盗んだ財布を、上機嫌に自分のポケットにしまう。
暫く歩くと街外れの幽霊屋敷として噂されている、誰も近寄らない館に少年は入る。
「若、どこかへ行かれてたのですか?」
「ガレフか、少し遊んでただけだ」
「……そのポケットに入ってる物は何ですか?」
「これはぁ、何でもない……」
「まさか一般市民の人から盗んだ物じゃないですよね?」
「ち、違う!」
「全く……我々の掟を忘れましたか?」
「……別に忘れたわけじゃねぇよ」
「ゼムロ様とナターシャ様が悲しみますよ?」
「……うるせぇ!そんな親父とおふくろはいつまで経っても戻って来ねぇじゃなねぇか!」
「我々も全力で捜索しております、きっと直ぐに見つかりますよ」
「もういい、俺は寝る」
少年は二階へ行き自分の部屋に篭る。
「最悪の場合、若には組織を引き継いでもらわなければ……」
ガレフはゼムロとナターシャが居ない今、自分がしっかりしなくてはと自らを奮い立たせる。
「親父、おふくろ……どこ行っちまったんだよ」
ゼムロとナターシャが率いる組織"ハリマオ"は義賊だ、悪徳貴族の調査に行ったきり行方が途絶えた。
ゼムロとナターシャの盗み、諜報の腕前は右に出る物はいない、そんな2人の行方がわからなくなるのは初めてだった。
ーーキード、正しき心を忘れるなーー
ゼムロの口癖が頭の中で蘇る。
「何が正しき心だ……結局こうなる運命じゃねぇか」
ゼムロとナターシャのすごさは、キードが1番よくわかっていた。
だが虐げられた貧しい人々の為盗みを働いて、自らが犠牲になったら元も子もない。
キードは幼い頃は父と母を尊敬していたが、成長するにつれバカバカしいと思う様になっていた。
「……クソッ」
少年の目から一雫の涙が流れる。
毎夜キードは不安に駆られては、涙で枕を濡らしていた。




