6.新転地へと歩んだが、また波乱の予感。
「……勝った」
足が今更ながら震え出す。
生きている実感が湧いて来る。
忘れかけたアナウンスの問いにYESと答えると、赤色ゴブリンが従者に加わった。
赤色ゴブリンの名前は"ルージュ"と名付ける。
死体が粒子となり異空の城へ転送された。
続いてレベルアップのファンファーレが頭の中で響く。
ステータスを確認する。
格上を倒した事からか一気にレベルが10になった。
上がった箇所のステータスをチェックする。
【中山暁】
筋力.181
魔力.105
知力.125
技力.156
防御.116
俊敏.134
【ライム】
筋力.60
魔力.88
知力.68
技力.90
防御.59
俊敏.96
アナザースキルは今回は覚えなかった。
それでもステータスが大幅に伸びた事が嬉しかった。
今回の戦いはアキラに自信をつかせる結果になり、危ない面もあったが収穫の方が大きかった。
◇ ◇ ◇ ◇
ルージュはステルスを使い野生の鹿の喉笛をナイフで切り裂く、倒れた鹿をその場でライムが血抜きをし、アキラはそれをアイテムボックスに入れ拠点に帰っていた。
あの戦いから10日は過ぎただろうか、サバイバル生活に慣れてしまっていた。
魔物も倒し続けてレベルは11になったが、そこから上がらずにいるので、アキラは拠点を捨て移動する事を考えていた。
(ある程度は強くなったから、そろそろ村でも探したい、ていうかマジでちゃんとした飯食いたい)
水浴びをしているから風呂は我慢できるが、味気のない飯に飽きていた。
心の中で明後日には移動しようと決意する、それまで食料と水の確保だ。
あっという間に移動決行の日がやってきた。
ライムとルージュを連れアキラは新転地へ向けて歩き出す。
ちょいちょい出てくる雑魚魔物を倒しつつ、しばらく歩いていると一面の花が咲く開けた土地が見えて来た。
ライムが駆け出す。
不思議に思いながらもアキラとルージュはライムを追いかけた。
ライムは花畑の前に立ち止まりプルプル震える。
「この花に何かあるのか?」
アキラは鑑定で花を調べた。
【パスリカ花】
ポーションの原料、エキスの抽出度が高い程に回復効果が高まる。
「でかした!!ライム!!」
ライムを撫でる。
ライムが反応しなければ調べもしなかっただろう、少しの事でも鑑定をして調べ癖をつけようとアキラは反省した。
なんとこの花畑一面全部パスリカ花だ、いつか村や街に行く時に採取しておいて売れば金になるだろう。
ライムはパスリカ花をスキルを使い抽出し始めた。
その行動の意味を悟る。
「ライムは限界までパスリカ花のエキスを抽出してくれ、ルージュは俺と一緒に、パスリカ花を採取するぞ」
抽出と採取は夕方まで続き、アイテムボックスはパスリカ花一色になった。
全部は採取せずある程度残しておく。
残しておいてまた生えてくる頃に採取しに来ようと考ていた。
夜が近くなり今日はここで一泊する事にした。
焚き火をしアイテムボックスから食料を取り出し、皆で分け合い食べる、その何気ない時間に愛おしさを感じながら。
朝を迎える。
柔らかな日差しが降り注ぎ小鳥の囀りが心地よい。
眠気を感じ欠伸しつつも起き上がる。
朝食を終え出発する準備を終えた頃にそいつは現れた。
その存在に気づいたアキラは、波乱の予感に生唾を飲み込んだ。
「……角ゴリラ」