50.転生
眠らない街歌舞伎町、井上里奈(28)はいつもの雑居ビルへと向かう。
ホストクラブRe.Cielの扉を開けると、中は爆音のパーティポップが響き今日も男と女の駆け引きが交差していた。
ボーイに案内され席へと座る。
「里奈、来てくれてありがとう」
「ううん、私も聖夜に会いたかったから……」
大学時代友達にホストクラブに誘われて、一回だけならと思いついて行ったらハマってしまい、この歳まで通い続けてしまっていた。
ホストに通うお金を稼ぐ為に大学を中退してから、アルバイトとソープを掛け持ちし、たまにパパ活で生計を立てていた、大学を勝手に中退した事が両親に発覚しそこから絶縁状態になっている。
担当の聖夜に会えるのが里奈の生き甲斐だった。
今日は閉店まで延長し、金額は120万を超えた。
ーー今日のラスソンはNo.1の聖夜だ!!よろしく!!
盛り上げ役のホストがマイクを渡す、聖夜は里奈の隣でラブソングを歌い始めた。
この後はアフターしてから聖夜の家へと行く、それだけが里奈の幸せだった。
ディナーを食べ聖夜が住むタワーマンションに着く。
そして寝室に行きお互い服を脱ぎ始める。
ーーあ、あぁん、ダメ。
女の喘ぎ声と肉と肉がぶつかり合う音が寝室に響いた。
暫くして全てが終わり聖夜はタバコに火をつける。
「来月いくら持ってこれんの?」
「……300万くらい」
「はぁ?少ねぇよ、俺のエースだろ?あと倍は用意しろよ!」
「ごめん、コロナだからあまりお客さん来なくて」
「言い訳してんじゃねぇよ!!今日も恵は200万持って来たぞ」
恵とは里奈とエースの座を奪い合うライバルだ、エースとは1番聖夜にお金を使っている姫の事で、当たり前だがお金を使えば使うほど聖夜に優遇される。
「もうすぐ締日だし……今回もNo.1になりたいんだよ俺は!!」
ーーウッ
聖夜は里奈に腹パンをする、里奈は疼くまってしまう。
聖夜は我に帰り、里奈を抱きしめる。
「殴ってごめん、俺はお前ともっと一緒にいたいんだ」
「私の方こそごめん、もっとがんばるから……」
痛みも和らぎ里奈は立ち上がるとパパ活の太客に、もっとお金を強請る算段を立てながら服を着る。
そして帰り支度をする為に、寝室を出た時それは起きた。
「な、なんだこれ!?」
聖夜の大声が聞こえた、慌てて里奈は寝室のドアを開ける。
「どうしたの!?」
「ゆ、揺れてる!!」
「え?」
別に揺れてなどいないし、地震すら起きていない。
心配になった里奈は聖夜に駆け寄る、すると世界は暗転した……
真っ白な世界に聖夜と里奈は居た、辺りを見渡すが何も無い白い空間だけが果てしなく続いていた、そして違和感に気づく。
その違和感は自分に実体がない事だ、光の球になってただ浮かんでいた。
「何だよここ!!どうなんってんだよ!!」
『なによこれ!?聖夜!!ねぇ、聖夜ってば!!』
「そうか……ドッキリだろ?Re.CielのYouTubeチャンネルに載せるとかだろ?もうわかったから出てこいよ!」
聖夜はホスト仲間を探し始めた。
ここにいるよ!と里奈は聖夜の周りを飛び回りアピールするが、聖夜に声は届いてないどころか、光の玉すら見えてなかった。
そして少しした後少年が現れる……
急に現れた少年を見て聖夜は困惑する。
そんな事はお構いなしに、聖夜に向かって少年は言った。
「こちらの不都合で君は死んでしまった、君は本来死ぬ運命ではなかったんだ、お詫びに第二の人生をあげるよ!」
少年はにっこりと笑っていた。




