幕間.武士
ー時は戦国、永禄13年ー
織田軍は朝倉討伐に向け攻め入るが浅井家の裏切りにより、朝倉軍、浅井軍に挟撃され撤退戦を強いていた。
「弟よお前は逃げてもいいのだぞ」
「兄者、ここで逃げては生き恥を晒しまする、お館様の礎になるのが我らの誉れ、我が軍もお供致します」
木下藤吉郎秀吉に仕える東堂家の長男、東堂時貞、次男、東堂無幻は今まさに迫りくる、朝倉、浅井軍と交戦間近だった。
織田軍撤退の時間を稼ぐ捨て駒だとわかっていても、無幻は時貞について行く決意する。
「言っても聞かんか……ならば我らはこれより修羅となる、皆ついて参れ!!」
ーーうぉぉぉぉぉぉぉぉ!!ーー
東堂家が率いる三千の軍が雄叫びをあげる。
「突撃ぃ!!」
時貞、無幻を先頭に足軽達が走り出す、だがその時異変が起こった。
「な!なんだ!?」
突如辺りは暗闇に包まれる、その場にいる全員が困惑していた。
ーーズシャーー
ーーぐわぁぁぁぁ!!ーー
悲鳴が上がる、それは次々と連鎖して行った。
倒れた足軽の血溜まりができる。
「何が起こっておる!!朝倉、浅井の策か!?」
「わかりませぬ!!」
そしてそれは姿を現した、剣を持ち人の様な形をした凶々しい何かが時貞と無幻の前に。
それは続々と現れ足軽達を殺戮して行った。
妖か!?と思いながらも皆交戦し始める。
「与助!!喜一!!おのれぇぇーーー!!」
長年戦場を共にした家来達が次々と殺され、時貞は刀を持ち突撃する。
無幻も次々と襲いかかって来る敵を斬り伏せて行った。
だが斬っても斬ってもきりがなかった、それは無限に湧いて来る。
どれくらいの時間が経っただろうか……
三千の軍がもう数える程しかない、兵達の屍が積み上がる。
ーーゴフッ
時貞の脇腹に剣が突き刺さる、倒れた時貞は囲まれ次々と剣を突き刺されてしまう。
「兄者ーー!!どけぇぇぇーー!!」
満身創痍の無幻は火事場の馬鹿力を出し、敵を斬り伏せ兄の元へ辿り着いた。
「……弟よ……すまぬ」
体中から血を流した時貞は静かに目を閉じた。
「兄者ーーー!!」
無幻の心は深い憎しみと悲しみに侵食されて行く……
兄も、仲間も、誉れも、全てを奪われた無幻は血の涙を流しながら立ち上がる。
そして時貞が愛用していた刀、天霧左門を左手に、父から譲り受けた天霧右門を右手に持ち、無幻は敵へと向かって行った。




