5.危機一髪ってどころじゃない
ライムの存在に気づいた赤色ゴブリンはギャギャっと声を発した直後走り出す。
ライムはアキラの元に誘導するよう逃げ出した。
(でかしたライム!!)
赤色ゴブリンが釣れた事に心の中でガッツポーズをした。
ギリギリまで引き付け、赤色ゴブリンが重なった所で力いっぱいにロングソードを振り落とした。
「チェストォォォォ!!」
そう叫びながら振り落としたロングソードを、赤色ゴブリン目視で確認し、一瞬の判断で腰に差していたナイフを抜きながら体を捻らせ、ロングソードを受け止めた。
その瞬間赤色ゴブリンの殺意の籠った目が合いアキラはギョッとする。
(ヤバい!!このまま戦ったら確実に殺される!!)
野生の感とでも言うのだろうか、ライムを抱えて一目散に逃げ出す。
どれくらい走っただろうか、ハァハァと息を切らしながら木の裏に隠れる。
どうやら赤色ゴブリンは追ってきてはない様だ、少しの間休憩していると、抱えていたライムが飛び出す。
「ん?どうしたライム?」
ライムは前方に向けて酸を飛ばした。
そして何かが酸を回避する様に動いた音がする。
まるで空間が歪む様にじわじわと赤色ゴブリンは姿を現す。
えっ!?とアキラは声を上げた。
一瞬のフリーズの後慌てて走り出した。
(ヤバい!!どうすればいいんだ!!)
全力で走りながら脳をフル回転させる、対策を考えないと待っているのは死だ。
(姿が見えなかった……?)
そこで赤色ゴブリンのスキルを思い出す。
"ステルス"
言葉通りのスキルならそれは相手に察知されないスキルだろうと考えた。
(奇襲やり放題じゃねぇか!!なんてチートだよ!!)
余りの理不尽に呪詛を溢したくなる。
アキラは涙目になる。
それはもう一つの"急所突き"のスキルも思い出し、併用したらエグいコンボになる事は火を見るより明らかだった。
俊敏は赤色ゴブリンの方が上手で、いずれスタミナが尽きて死ぬと考えたアキラは最後の賭けに出る。
拠点に戻り寝床にしてる洞穴に入る。
ライムが抽出で貯めておいた水を地面に撒き、水浸しにしろと指示をした。
壁を背にし赤ゴブリンが到着するのを待つ。
ピチャピチャとぬかるんだ地面を歩く音が洞穴に響く。
やがてその感覚は早くなり、獲物を見つけて走り出した事を耳で感じた。
極度の緊張がアキラを襲う。
(頼む……これでやられてくれ……)
アキラは祈りと共にロングソードを構えた。
足音は目の前まで近づき音は消える、飛びかかって来る気配を感じる。
「どりゃあぁぁぁぁぁ!!!!」
その瞬間アキラはロングソードを振り下ろした。
赤色ゴブリンはひらりと攻撃を回避するとナイフを抜き、にやりと笑った。
急所突きを発動し、心臓めがけてナイフを振る瞬間に、アキラの背後からライムが飛び出した。
ライムは赤色ゴブリンめがけてゼロ距離で酸を飛ばした。
酸が赤色ゴブリンの顔にかかる。
ギャギャっと言いながら赤色ゴブリンは焼ける様な痛みに顔を抑え悶える。
その瞬間、アキラは振り下ろしたロングソードを振り上げた。
刃が赤色ゴブリンを切り裂く。
赤色ゴブリンの動きが鈍くなる、アキラは間髪入れず無我夢中でロングソードを振るう。
しばらくすると痙攣した後に血塗れの赤ゴブリンの命の灯火は静かに消えた。
[ゴブリン(ユニーク)を従者にしますか?]
脳内にアナウンスが流れる。
どうやら倒したみたいだ。
アキラは緊張を解いた後ドカっと尻餅をついたのであった。