46.山奥のドワーフ
「し、死ぬぅ……」
ガガムラ山に来ていたアキラは遭難していた。
木々が生い茂る変わらない景色に、方向感覚が狂ってしまったようだ。
魔物との遭遇はまだいい、寒さに耐えられなかった、日は沈みかけ雪が降り始めて来ている、このままでは凍死してしまう。
「あれは、煙?」
彷徨っていると煙が昇っている事に気付く、人の気配を感じて慌てて寒さを堪えながら煙を目印に走り出す。
煙の発生源に到着すると、そこには古屋があり煙突から煙が昇っていた。アキラはドンドンと古屋の扉を叩く。
「すみませーん!!誰かいますかー!?」
誰も居なければドアを蹴破ってでも中に入ろうと思っていた、居住者が戻って来たら怒られるだろうが命には代えられない。
暫くドアを叩いていると扉が開く。
「なんじゃい!!誰じゃこんな山奥に!?」
扉を開けそこに居たのはドワーフだった、ドワーフはアキラを見ると怪しむ。
「すみません、遭難して……中に入れて貰えませんか?」
鼻水を凍らせガタガタと震えている、アキラを見てドワーフを中へ入れと言うジェスチャーをした、アキラを古屋の中へ入れるとドワーフは毛布とホットミルクを出す。
「ありがとうございます、助かりました」
毛布に包みながらホットミルクを飲む、次第に寒さは消え体の震えも収まってきた。
「おまえさん、なんでこんな所におる?」
「ガガムラ山に秘湯があると聞いて、そこを目指していたのですが遭難してしまって」
「ガガムラ山だぁ?それならもう少し手前の山だぞ?」
「え?」
「ここは名前もない只の山だぞ、阿呆かおまえさん」
アキラはキョトンと固まっていた、その顔を見れば阿呆と思うのもわからなくもない。
「全く……もう夜だから今日はここで泊まって行け」
「本当ですか!?ありがとうございます!!」
「ワシはゴードンじゃ、お前さんの名前は?」
ゴードンは火酒を飲みながら暖炉に薪を焚べている。
「俺はアキラと言います、ゴードンさんは何故ここに?」
魔物も居るしましてやこの寒さだ、こんな山奥に1人で暮らしているのが不思議だった。
「探し物じゃ」
火酒のせいか酔ったゴードンの口は軽くなる。
「探し物?」
「グラビティコアという鉱石を探しておる、その鉱石が欲しいんじゃ」
「あれ?でもここ鉱山なんてあるんですか?」
「グラビティコアがそこらの鉱山で採れる訳なかろう、この先に地下研究施設があるんじゃがそこにあると調べは付いている、じゃが防御システムが作動したままで途方に暮れてるんじゃ」
「なるほど……よかったら手伝いましょうか?」
「お主になんも得などないぞ?」
「得はありましたよ、命が助かりました」
「物好きなやつじゃわい……勝手にせい」
ゴードンはアキラを見てニヤッと笑った。
「……それにしてもすごい武器や防具の数ですね」
アキラは部屋を見渡す、街の鍛冶屋で買えば相当高いだろうなと思う武器や防具が乱雑に部屋に転がっていた。
「それはワシが作ったやつじゃ」
「これを全て!?」
「まぁ暇じゃったしな、それよりもう寝ろワシは明日も早いんじゃ」
ゴードンはランプの灯りを消す。
疲れからかアキラはそのまま気絶する様に眠った。
小鳥の囀りが聞こえ朝日が昇る。
カンカンと何かを叩く音に起こされ、眠い目を擦りながらアキラは音の場所へ向かう。
外へ出る、雪は止んでいた、積もった雪に足を取られながらも音の場所に近づく。
古屋の近くに設置されていた簡易的な作業場で、ゴードンは鉄を叩いていた。
「おはようございますゴードンさん、何してるんですか?」
「おまえさんか、見ての通り鉄を叩いておる、感覚を鈍らせない様にな」
ゴードンは黙々と鉄を叩いている、それを只黙ってアキラは眺めていた。
暫くすると満足したのかゴードンの手は止まり古屋へ戻る準備をし始めた。
「朝飯食ったらワシは研究施設へ行くが……おまえさん本当に来るのか?」
「え?手伝うって言ったじゃないですか?」
「……勝手にせい」
ゴードンは呆れた口調で歩き出す、アキラはその後ろをついて行く。




