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41.英雄

「このままじゃ保たないわ!」


サリー先生は徐々にアンデット達に、圧される状況に焦り声を張り上げた。

不安は戦う者全員に伝染して行く、誰もがそんな事はわかっていた、だがここで耐えなければ皆殺しに合う。

魔力切れや怪我をしリタイアする者が増えていく、イヴはそれでもキーラを信じ只ひたすらに魔法を放ち続けた。



「イヴさん!!」


ローグルカ女学園の生徒が声を上げる。

イヴにも限界が来た、魔力が尽き膝が崩れその場で動けなくなる、非常にもアンデット達はイヴに襲い掛かった。



ーーごめん、キーラーー



死の気配を感じ最後に思い浮かべたのはキーラの笑顔だった。



「どけぇぇぇぇぇ!!」


後方からアンデット達を掻き分け誰かがやって来る、急な珍入者に皆の動きが一瞬止まる。



◇ ◇ ◇ ◇



「歩けるか?」


「ごめんなさい……足が震えて動けないです……」


小水を漏らし震えている1年生の女生徒を見つける、この子が避難出来なかった最後の1人だった。



「おぶってやるから、乗れ」


アキラは腰を落とす、ごめんなさいと言いながら女生徒は背に乗った。

ダッシュで体育館へ向かう、アンデット達は体育館に集結しているのか全くと言っていいほど遭遇しなかった。


体育館が見えて来る、アンデットがひしめき合って道が無かった、どうしようか考え様とした頃に大声が聞こえた。



ーーイヴさん!!



イヴの身が危ないと瞬時に感じ取ったアキラは強行突破する。



◇ ◇ ◇ ◇



ーー誰!?



リノア、ルル、アイリス、イヴ以外の全員が同じ心境だった。

そんな事はつゆ知らずイヴの元に辿り着くと、襲い掛かるアンデット達を蹴散らして行く。

背に背負った女生徒を先生に任せ、アキラは動けないイヴをお姫様抱っこし体育館の入り口へと歩き出す。

既視感を覚えこの時イヴは、直感的にキーラ=アキラだと気づいた。



「よく頑張った、後は俺に任せろ」


イヴの目からポロポロと涙が溢れる、怖かった、苦しかった、来てくれて嬉しかった、いろいろな感情が混ざり合いアキラの首に抱きついた。


「リノア、イヴを頼む」


「わかったわ」


リノアにイヴを預け再び戦場に戻る。



「絶対に勝ちなさいよ!!」


「アキラさん!!私信じてます!!」


「……アキラさん、どうかご無事で」


リノア、ルル、アイリスは戦場へ向かうアキラの背に向かって各々が心情を伝える。

アキラは後は任せろと言わんばかりに背を向けたまま軽く手を挙げ歩き続けた。

人々は道を開ける、不思議と誰もが感じていたこの人なら何とかしてくれると。


アンデット達はアキラを脅威と感じたのか、他の人には目もくれず一斉にアキラの元へやって来た。



「ルージュ!デスト!シルヴィア!来い!」


温存していた従者を全召喚する。

待ってましたと言わんばかりに従者達は暴れ始めた。


ルージュの鋭利なナイフが、デストの強力なパンチが、シルヴィアの流れる様な格闘技がアンデット達を縦横無尽に蹴散らして行く。

そしてアキラも参戦し、既に今までひしめき合っていたアンデット達の終わりが見えていた。



ーーな、何なんだあの人?


ーーヤバすぎ、強いってもんじゃないよこれ


ーーてか、俺達助かるんじゃないか……?


ーー確かに……がんばれ!!



次第に次々とアキラを応援する声が上がり始める。

まるでお伽噺の英雄の様だと錯覚し始める者までいた。



◇ ◇ ◇ ◇



「何者なんだ……」


ウルヴェンは思わず呟く。

絶望的な状況を覆した男を只見ていた、ふと周囲を見渡すとそれはリーリア、ライオネルだけじゃない周りに居る全員が同じだった。

貴族間の情報網は広い、だがあんな逸材がいると言う噂は全く聞いた事が無かった。



レントンは静かに戦闘を見守っていた、そして思った、自分ではあの人に逆立ちしても勝てないと。

エミールは無意識にレントンの手を握る、あの人が娘を守ってくれると期待しながら。



少し前に学園周辺に到着したヴィンセントは口をポカンと開けて戦う男を見ていた。


「ほら言ったじゃない、アイリスは強運の持ち主だって」


「あなた、これで安心ね」


マーガレットとセルフィはヴィンセントの背中を叩く。

ヴィンセントが本当にアイリスは強運の持ち主だと信じた瞬間だった。



「あの人すごーい!!」


エルはキラキラとした目で戦う男を見ていた、強い憧れを抱く程に。



「……ええ、本当にすごい、イヴ良かったね」


オルティナはイヴがお姫様抱っこされながら男の首に抱きつく所を目撃しまっていた、娘の春の到来に心を躍らせる、ただジールが一緒に居たら憤慨してただろうから居なくて良かったと安堵もしていた。



◇ ◇ ◇ ◇



どれくらいの時間が経っただろうか。

残すところ数十体のアンデットしか残っていなかった。

誰もが終わりを感じていた、そして最後の一体を倒す……



ーーわぁぁぁぁぁ!!



歓声が湧き上がる、皆抱き合って喜びを分かち合う。



「……いや、まだだ」


アキラは感じ取っていた強烈な気配に。

アンデット達の死骸を吸収しながらそれは現れた。



「スケルトン?」


騎士学園の生徒が思わず呟く。

それは2本の刀を腰の左右に差したスケルトンだった。















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