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37.喜劇

仲直りしたイヴと別れ、キーラは劇の準備で体育館へ向かう。

控室では、皆慌ただしく走り回っていた。


「キーラさんこっち!」


メイク係に呼ばれ、衣裳室へ入り着替えとメイクを済ませた。

髪をオールバックにしプレートアーマーを着て、剣を持った姿は我ながら凛々しい。

衣裳室から出ると、クラスの皆は振り向きカッコいいと言いながら、頬を赤くさせた。



「キーラさんとても似合います!」


「なかなかじゃない!」


王女の衣装を着たルルが、白いつけ髭と王冠が特徴的なリノアが声をかける。



「ルルもドレス似合ってるよ!リノアはなんか面白い」


リノアがプリプリと怒ってる姿を見てキーラとルルは笑っていた、少ししてアイリスが衣装室から出てきた。



「あらあら、皆良く似合ってるわ」


大きな胸が強調された衣装を凝視しながら、キーラは顔を赤くさせる。

そんなキーラを見てルルとリノアは、やはり胸なのかと思いながら自分の胸を触りしょぼんとへこたれていた。



(……アキラさんを意識させる為に頑張った甲斐があったわ)



視線に気づいたアイリスは、心の中でガッツポーズをしていた。



「始まるわよ!」


チェリッシュの掛け声と共に劇は開幕する。

観客席は満員だった。




◆ ◆ ◆ ◆




ーーカヴァラスタ王国は、敵国ナブラレルム王国との戦争で猛追を受け滅びの運命を辿っていた、そんな国を憂いて平民のロイズは兵になったーー



ーーロイズの幼なじみシェリーは酒場で歌を披露する仕事をしていた、酒場で1番の人気で歌姫と呼ばれていた、ロイズとシェリーは相思相愛の仲だった、そんなシェリーはロイズを引き止める、だがロイズは戦へ行ってしまうーー



ーーロイズは類い稀なる才能を発揮し数々の武功を挙げていく、そして平民から騎士へとなったーー



ーーロイズは騎士になっても気持ちは変わらず、戦が終わってはシェリーと逢瀬をしていたーー



ーーロイズは敵国の将軍を倒しナブラレルムは降伏、ロイズは救国の英雄となる、王は多額の報酬を渡した後に愛する娘と結婚しろと命令した、王女はロイズを愛してしまったからだーー



ーーだがロイズはシェリー以外を愛する事などできなかった、シェリーとの逢瀬を続けていた事が発覚し、激情した王はロイズをたぶらかしたとしてシェリーを処刑台に立たせるーー




◆ ◆ ◆ ◆




「あぁ、愛しのロイズ……私はここにいるわ」


兵に囲まれたシェリー役のアイリスは、処刑台に立つ。



「待っててくれシェリー、この身が朽ち果てようとも君を助け出してみせる!」


兵と殺陣をしながら、ロイズ役のキーラは処刑台へ向かう。



ーーキャァァァァァァ!!


ーーキーラさまぁぁぁ!!カッコいい!!



観客席から数多の女生徒達の黄色い声援が、体育館内を埋め尽くした。



「ここを通すな!皆かかれぇ!」


「邪魔だぁぁぁ!!」


殺陣は更に激しくなる。



「私より何であの女がいいの?ただの酒場で歌う平民じゃない!!」


王女役のルルは憎たらしい声を出して迫真の演技をする、普通に演技がめちゃくちゃ上手い。



「ロイズ……あなたが死んでしまうわ」


「シェリーの為なら死など怖くはない!!」


「ええぃ!!今すぐ処刑しろ!!」


王様役のリノアは声を荒げた、リノアも様になっている。

そして劇はクライマックスを迎える。



「やめろォォォォ!!」


処刑台へとたどり着いたロイズは、何とかシェリーを救い出した。

場面は変わり、ロイズはシェリーの手を引いて逃げ出す。



「私の物にならないなら、もういいわ!!」


王女は矢を放つ、矢は満身創痍のロイズの胸に刺さりロイズは倒れてしまう。


観客席は静まり返る、グスッと鼻を啜り涙を堪える人も居た。

そしてラストのキスシーンが始まる。



「君の事を愛してる」


静かに目を閉じるロイズ。



「……私もよ」


シェリーは唇をロイズに近づける。



ーーギャァァァァァァ!!!!


ーーやめてェェェ!!キーラさまぁぁ!!



女生徒達の悲鳴にも似た声が響き渡る。



「させるかぁぁぁ!!」


「やっぱりダメです!!」


「やめろォォォォ!!」


リノアとルルが乱入する、観客席からはイヴが壇上へ上がってくる。



「何よぉ!!キスさせてよぉぉ!!」


アイリスは良いところを邪魔されご立腹だ。

ひっちゃかめっちゃかな状況に、観客席からは爆笑が巻き起こる。



「幕を下ろして!!」


クラスの女生徒の掛け声と共に幕は下りた。



「……私の劇が」


悲恋劇が喜劇に変わってしまった監督のチェリッシュは、エレクトロプラズマを口から出して放心していた。

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