36.乙女
劇の準備は何とか終わり、文化祭当日を迎えた。
学園内は他校の生徒が遊びに来ていて賑やかだ、演劇開始時間までイヴと学園内を周る。
「よ、よろしく頼む、キーラ」
イヴはキーラを前にしてソワソワと落ち着きがない。
「なんからしくないね?何かあったの?」
「何でもない!行くぞ!」
「……調子狂うなぁ」
イヴはこれ以上はボロを出さまいと思い、スタスタと歩き出した。
キーラは後ろから追いかける。
「お!このクレープ美味しそうだよ」
「本当ね、買いに行きましょう」
屋台に並ぶとヒソヒソと声が聞こえる。
ーーあれ、イヴさんとキーラさんよね?
ーー本当だ!2人一緒とか尊すぎ……
ーー2人共レベル高ぇ、話しかけようかな。
ーーバカ、お前じゃ釣り合わねぇよ。
かなり2人は目立つ様だ、それもそうだろう1人は神童と、もう1人はそれを負かしたルーキーなのだから。
そんな事は気にもせずクレープを買い2人揃って頬張る、イヴはチョコバナナ、キーラはイチゴ生クリームだ。
「それ美味そうだね、ちょっとちょうだい」
(か、か、間接キス……)
イヴは鼻血が出てないか鼻を確認する。
これも美味いねと言いながら口元にチョコを付け、ニコニコしてるキーラを見ていると今にも昇天しそうだった。
「わ、私もキーラのクレープ食べてみたい」
「え?いいよ!はいあーん」
(あーんだとぉ!!!!)
イヴの顔が七変化する、思春期の男の子みたいな反応がいちいち面白い。
ボーナスタイムは終わりお化け屋敷に入る。
「この前リノアがさぁ〜」
雑貨屋に入る。
「この色アイリスが好きそう」
アスレチックで遊ぶ。
「ルルはこういう運動系はダメそうだなー」
イヴはイライラしていた。
(何だこのやるせない気持ちは……)
一般的に考えてデート中に好きな人が、他の女の話題でニコニコと盛り上がってたら誰でも嫌がる、だが恋愛経験が乏しいイヴは、この状況でこの思いは普通なのかさえ解らない。
そんな思いはとうとう爆発した。
「もういい!!」
「へ?」
イヴは走りだす、どこへ行くあてもなく。
キーラはイヴを追いかけた。
下を向きがむしゃらに走り続けるイヴに、追いかけながらキーラは大声で呼びかける。
ーーそこ、池!!
「え?あ、、」
残念ながら声も届かずイヴは池に落ちて行く、その寸前キーラは全力の脚力でキーラに追いつく、そしてイヴを守る様に抱きしめる。
2人揃ってドボンと池に沈んで行った。
水中で抱き合う2人、水は冷たいがイヴの心は温もりで満たされていく。
ーーキーラ……私の為にーー
冷静に考えれば悪いのは私だ……勝手に怒って勝手に去って、でもキーラは追いかけて来てくれて、そして池に落ちる私を助け様と抱きしめてくれて……
永遠の様で一瞬の時間は終わる。
ーープハァーー、
2人は水中から上がる、ビショビショの服が肌に纏わりつく。
「ごめん、イヴ」
「私の方こそ、ごめん」
イヴは顔を上げる、キーラの頭に小さなカニが歩いていた。
その姿を見て思わず、笑ってしまう。
「ぷっ、キーラ頭にカニが」
「うわ!いつの間に!」
クスクスと笑うイヴを見てキーラは言う。
「イヴは笑った方が可愛いよ」
ニカっと笑うキーラにイヴのハートは完全に貫かれた。




