35.女神の涙
文化祭まで残りの日数は少ない。
ロイズが装備しているプレートアーマーは流石に製作できないので、学園の旧校舎に展示してあるプレートアーマーを借りに、リノアとキーラは薄暗い廊下を歩いていた。
「……リノアこっち」
足をプルプルさせながら反対方に向かおうとするリノアを止める。
「……ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!」
「もしかしてビビってる?」
「うるさいわね!!」
図星だったのかリノアの口調が強くなった。
この旧校舎は幽霊が出ると、学園に居る者なら誰でも知っている。
「リノアって意外とこういうのに弱いんだな」
「なによ!!あんたは平気なの!?」
「私は別に大丈夫かな」
(まぁ、実年齢30歳だし……)
「……あんま離れないでよね」
キーラは廊下の角を曲がり、すぐさま掃除道具入れの死角に隠れた。
「ちょっと!!キーラどこ!?」
まさか神隠し!?と思いながらリノアは声を上げた。
後ろからこっそり近づきリノアの肩を叩く。
「………バア!」
「うきゃぁぁぁぁぁ!!」
「あはっはははッ」
「もう!ほんっと信じられない!!」
リノアは怒りスタスタと早足で歩き出す、やりすぎたと思いリノアを追いかけた。
「ごめんって!」
「次やったら潰すからね!!」
「わかった、わかった、ほんとごめんね」
リノアの怒りを鎮める為に平謝りだ。
もうすぐプレートアーマーが展示してある部屋に着く頃、不可解な事が起きる。
ーーオオオオオオーー
怨嗟の声の様なものが聞こえ始める。
「な、何今の!?」
「んー、風かなぁ?」
その奇妙な音は近づいてきてるみたいだ、リノアは腰を抜かし尻もちをついてしまう。
流石にこれは只事ではないと思い、キーラはアズールの宝剣を出す。
そしてそれは現れた。
「ふぇぇぇぇぇぇん、人ですぅーーー!!」
「へ?」
「何あれ?」
何ともアホっぽい声に緊迫した空気は弛緩する。
おかっぱの透けた女の子が涙と鼻水を流しながらやって来た。
流石のリノアも怖くなさそうだ。
「寂しかったですぅ、私サリアって言います!よろしくお願いします!」
「あ、これはご丁寧に、私はキーラ、隣の腰抜かしてるのがリノアです」
「もう立てるわよ!!」
「リノアが立った、それよりもサリアさんは何でここに?」
「私もわからないですぅ、出たくても何故か出られなくて……」
「……何か可哀想ね、何とかしてあげられないかしら?」
サリアはシクシクと泣いていた、流石にこれは可哀想だ何とかしてあげたい。
「んー、おそらく地縛霊の類だと思うから未練があるとかかな?その根源を断てばいいとか」
「あんた、結構詳しいのね」
「まぁホラー系は割と好きだし」
「怖いの好きとか考えられないわ、それよりサリア泣いてないで根源を探しに行くわよ」
「……ありがとうございますぅ」
サリアは更に泣き出した。
「サリアは何か思い出せない?手がかりが何かないかなって」
「うーん、あ!校歌を歌ってたのは思い出せます!」
「校歌だから、音楽室とか?」
「とりあえず行ってみるか」
音楽室に着き中に入る、楽譜や吟遊詩人が使うアコースティックギター、フルートなどが綺麗に保存されていた。
「とりあえずここで手がかりを探すか」
しばらく探しているとリノアが何かを見つけた。
「この楽譜サリアの名前が書いてある!!」
「あ!本当だ!隣に何か書いてある、フェイト?字が劣化してその先が読めない……」
サリアは唐突に思い出す。
「フェイト……数字の4が何故か浮かびます」
「教室の番号かな?後はロッカーとか」
「とりあえずしらみ潰しに探しましょ!」
一階から順に教室とロッカーを探す。
すると3階の4番目の男子ロッカーに絵の具が入っており"フェイト"と言う名前が書いてあった。
「これっぽいな、でもサリアに異変はないな」
「特にこれといって何も感じないですぅ」
「んー、美術部だったんじゃない?」
「じゃあ美術室に行ってみるか」
美術室に入ると絵画が飾ってあった。
倉庫には卒業生が書き残した絵がまだいくつか保存してある。
キーラは木が描かれていた絵を見つける、作者のサインにフェイトが刻まれていた。
「んー、この木何処かで見た様な」
「私もよくわからないんですけど、何故か切ない思いが込み上げます」
「あ!この木旧校舎の裏にあったわよ!怖くてずっと周りを警戒していたから覚えてるわ!」
「ビビリのリノア、グッジョブ!!」
「ビビリって言うなぁ!!」
ふざけながらも絵に描いてあった木にたどり着いた。
こういうのはベタにあれだなとキーラは考え根本の地面を手で掘り出す。
しばらく掘ると何か硬い物に当たった。
それを地面から取り出す。
「……これは?箱?」
中を開けると指輪が2つ入っていた。
サリアはその指輪を見つめたまま動かない、少しした後目から一雫が落ちる。
「……全て思い出しました、この指輪は婚約者フェイトさんとの思い出の指輪です、2人が大人になったらこの思い出の指輪を取りに行こうと約束したんですが、私は病気で死んでしまいそれが叶わず……」
「う、……ひっく……」
リノアは話を聞いて涙を堪えるが堰き止められなかった様だ。
天から光が差す、サリアは指輪を持ち少しずつ消えていく。
「本当にありがとう、この御恩は忘れません」
そう言うとサリアは完全に消えてしまった、どうやら成仏できた様だ。
サリアが居た場所に何か落ちていた、それを拾い鑑定する。
【トゥルーティアーズ】
・光を乱反射する希少な鉱石、女神の涙とも言われている。
サリアからのお礼なのだろうか、トゥルーティアーズをリノアに渡す。
「え、いいの?」
「私が持ってても仕方ないし、ネックレスにしたらきっとリノアに似合うよ」
「……ありがと」
頬を赤くさせたリノアは、大切にトゥルーティアーズをハンカチで包んだ。




