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191.荒ぶる海

北側の海上には巨大な赤龍が飛んでる、アキラの従者の中で最高戦力でもあるヴェルサスだ。


「……どうやら来たようだ」


地平線の向こうからポツポツと何かが現れる、それは近づいてくるに連れ姿をはっきりとさせる、大量の大型船だった。


船員は慌ただしく動いている様だ。

それもそうだろう、目の前に赤龍がいるのだ、計算外もいい事だろう。


そんな大型船を他所に、海岸沿いにある高台でゴードンと他数名のドワーフが何やら楽しげに話していた。


「来おったか、さて、試作大型兵器を試せるのぉ」


ゴードンは望遠鏡を覗きながらニヤニヤしている。

それを見ていた周りのドワーフ達は、呆れ気味だ。


「王……、失礼、ゴードン殿、本当に良かったのですか?あれを使ってしまって……」


危うくゴードンの事を王様と言いそうになったが、ゴードンにギロリと睨まれ慌てて言い直した。


「良い加減になれろ、わしはもう王でも何でも無い、ただのアクティースの国民じゃ」


ゴードンの言葉に皆困り顔だ、元でもウォーガレフ王国の王様だったのだ、そうそう気安く口をきけるものでは無い。


その気持ちもわかるのか、ゴードンもそれ以上叱りつける事はなかった。


ゴードンは気まずくなる空気を振り払う様に話を戻す。


「こういうのは思い切りが必要じゃ、親父も喜ぶじゃろうて」


「……まさかグラビティコアを使うとは」


グラビティコアは、ゴードンの父の形見でもある鉱石だ。

そしてその鉱石はとてつもないエネルギーを秘めている。


「話は終わりじゃ、皆配置に急げ」


ゴードンの命令で皆顔が引き締まる、そして駆け足で建設途中の港へと向かって行った。


「先陣は私達が行きましょう」


人魚族(マーメイド)の長メルティナが同族達を連れながら水面から顔を覗かす。

すぐ側まで大型船が近づいて来ていた。


メルティナの言葉に皆頷く。

そして再び海に潜り、ぐるぐると円を描く様に泳ぎ始めた。


「全てを引きずりこみなさい、深海の底に眠らん(ガリュレ・テュポーン)


メルティナが合わせて魔法を発動した、直後大きな渦潮が形になり船を引き寄せ始める。


ー面舵をきれ!!ー


ー慌てるな!!ー


敵船は大騒ぎだ、渦の近くにある船からどんどん吸い込まれ海の藻屑と化しているのだから。


「進めぇぇ!!」


それでもまだ多くの船は残っている、船は渦に近寄らない様に注意しつつ陸へと向かう。


ードガァァァァァァン!!ー


急な衝撃音に船員達は動きが止まってしまう。

その音の後、隣の船が大破していた。


「な、何が起こった!!」


船長は慌てて周りを見渡すが、特になにがあるわけでも無く原因がわからなかった。


「せ、船長!!」


帆の天辺にある見張り台から慌てて1人の船員が降りてくる。

偶然にも一部始終を見ていた様だ。


「報告しろ!!」


「そ、それが、陸地の方からバリスタが飛んで来ました……」


「何を寝ぼけている、この距離で届く訳ないだろ!!」


「……私もそう思いますが事実です」


ードガァァァァァァン!!ー


またすぐ隣の船に巨大な矢が刺さる。

それは見張り役の船員が言う事は正しいのだと、強制的に理解させるには充分だった。


「……ば、バカな、大砲でも届かないだぞ」


船長の顔はみるみる青ざめた。


その頃ゴードン達は高笑いが止まらなかった。


「敵はなす術も無かろう、グラビティコアの出力で放つ巨大矢は洒落にならんじゃろうて」


「……あれは、悪魔的というとか破壊的と言うか」


ゴードンの言葉に周りのドワーフ達は顔が引き攣る、その威力たるや相手に同情するのも無理は無い。


「侵略者は海の藻屑じゃ手加減はいらん」


「……それもそうですね」


一方的に船を沈めているが原因を作ったのは相手国だ。

それを思い出すと、ドワーフ達の同情もあっという間に消えて行った。



ーーーーーーー


周りの船と後方に距離を置いた、豪華な船がその悲惨な光景を眺める。


「このままでは、多大な損害ですね」


見張り台に立つ神の使徒(エンジェルガード)の1人、リルーシェは困り顔を浮かべていた。


戦いなど好まないが未来の子供達の為、覚悟を決める。

そしてジョブスキル「大天使の福音type-ガブリエル」を発動する。


光に包まれたリルーシェの意識は消え、光は膨張し始めた。

膨張した光は天へ昇り形作られる。


そしてリルーシェの意識は再び覚醒した。


天から神々しいまでの何かが降りてくる。


「ふむ、敵として不遜は無い」


ヴェルサスはそれを見てニヤリと笑う。


その瞳に映るのはヴェルサスと同等の格を持つ、真聖竜だった。










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