表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/252

18.何もできない

(……アキラさん達は大丈夫かな)


カインの表情は暗い。

アキラ達が心配で心が上の空だった、しばしばエルビスにボケっとしてるなと怒られていた。

カインはその度に謝りながら後を追う。



「まぁ、俺等ならこんなダンジョン余裕だわな」


黒の虎狼(ブラック・ファング)は既にこのダンジョンを走破している、次のダンジョンへ挑戦する為に、肩慣らしに来ていた。

何回も来たダンジョンなので、道に迷う事はなくサクサク進んでいた。



21階層をクリアし22階層に来ていた。



ーーブシャ


「たく、雑魚がめんどくせぇ」


魔物に剣を突き刺しながらエルビスが言う。



「でも普段より魔物少なくない?」


ローラは若干の異変を指摘する。



「たまたまなんじゃない?」


マーリンは楽観的だった。



「そうそう!気にしすぎだって!」


サイラはマーリンに同意した。



カインは黙々と素材を剥ぎ取る、だが心のモヤモヤは晴れずにいる。


黒の虎狼(ブラック・ファング)の快進撃は続き、あっという間に最終層のボスの間に着く。

最終層では魔物はブルーブラッドパイソン一体しか出現しない。

ブルーブラッドパイソンは大型の蛇の魔物で、防御力が高くピンチになると、強力な毒を飛ばす攻撃をしてくる。



「ん?何もいねぇぞ?」


エルビスは辺りを見回す。


普通ならブルーブラッドパイソンが塒を巻いて、侵入者を威嚇している筈だ。



「なんだぁ、超楽じゃん!このままワープ場所まで行って戻りましょ」


サイラはそう言うと駆け出す。



「サイラ!上から何か来るぞ!」


何も無いはずがないと思って警戒を解かなかったエルビスは、それに気づき大声を発する。



ーーーードゴォォォォォンーーーー



着地と同時に大地が割れんばかりの衝撃が襲う、そして土煙が舞い視界は閉ざされる。

皆武器を構える、イレギュラーすぎる出来事に緊張が走り、しばしの静寂が訪れた。


土煙は収まりその場に居る全員がそれを視界に捉えた。

それはゆっくり立ち上がる。



「ーーゴーレム?」


エルビスは思わず呟く。

だがそれはエルビス達が知っているゴーレムではなかった。


一般的なゴーレムは岩が集まって人の形をした不恰好な魔物で動作がぎこちない。

だが目の前に居るのは銀色で女体形の質感が滑らかな石像だった、何よりも動作が自然すぎる。


魔物はゆっくり近づいて来る、人が歩いてるのと変わりない足取りで。



「皆来るぞ!集中しろ!」


エルビスは喝を入れる、それに合わせて3人はわかったと言い敵を睨む。

カインは後ろに下がり戦闘を見守る。



ーーーーボギャッ


ーーーーへ?


その場にいる全員が何が起こったのかわからなかった。



ーーーードサッ



ローラが倒れる、エルビス達はそれに気づく。

うつ伏せに倒れたにも関わらず。ローラの首は180度反対に回り天井を見上げていた。



「キャァァァァ」


マーリンの悲鳴が上がる。


サイラは腰を抜かしていた。

一瞬のフリーズの後我に返ったエルビスは魔物を探す、魔物は自分達のすぐ隣にいた。



「ウワァァァァァ!!」


エルビスは剣を振り翳し魔物に迫る。



ーーキンッ



攻撃は当たったがまるで効いていない。

鋼を叩く様な音が響いた。


魔物は脅威では無いと思ったのか軽くエルビスを押す。

だがそれはエルビス側からしてみれば全然軽くなかった、エルビスは吹っ飛ばされ転がる。


魔物は腰を抜かしているサイラに近づく。



「……いやぁ、やめてぇぇぇぇ」


魔物はサイラの顔を、掴みながら頭上へ持ち上げる。

サイラは手足をジタバタさせて抵抗していた。

徐々に魔物の手に握力が篭る。



ーーグチャッ



サイラの顔は潰れ宙吊りのまま動かなくなった。


魔物は次にマーリンを見る。



「やめろォォォォ!!!!」


復帰したエルビスはスキルを発動しながら再度魔物に迫った。

そのスキルとはパワーアップと兜割りだ。


パワーアップは文字通り筋力を上昇させる、兜割りは縦一文字に強力な斬撃をくらわせるスキルだ。

今までにこのコンボで倒れなかった敵は居なかった、これならいける筈だとエルビスは願う。


だがそんな願いはあっけなく打ち砕かれる。



ーーーーガキィィィィンーーーー



折れた刃が宙を舞いやがて地面へ突き刺さる。


煩わしくなったのか、魔物はサイラを放り投げエルビスに狙いを代える。

それを悟ったエルビスは剣を捨て地を這う様に逃げた。



(……い゛や゛だ じ に゛だ ぐ な゛い゛)



大量の涙と鼻水を垂れ流し、カインの元へ向かっていた。

魔物はゆっくりと追いかけてくる、それはまるで狩りをしている様でもあった。

エルビスはカインの元に辿り着くとカインの背後に隠れ盾にした。

あまりの恐怖にエルビスに掴まれたカインの腕は、指が肉に食い込み腕から血が滴り落ちる。



(え?え?何で……)



理不尽に迫り来る死に、カインは混乱する。

母、弟、妹の顔が走馬灯の様に頭に浮かぶ、短い間だったが兄の様に思えたあの人の顔も。



(ーーーーアキラさん、助けて……)








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ