17.イレギュラー
ダンジョン最終日の朝を迎える。
道中に昨日は酷い目に遭ったと笑い話しにしていたら、時間を忘れあっという間にダンジョンへたどり着いた。
いつも通りのフォーメーションでダンジョンを進んでいく。
9階層まで何事もなく進み、10階層への階段を下がる途中にロベルトが呟く。
「アキラは今日で最終日だよな、真面目に働いてくれるし、またこの仕事頼みたいぜ」
「そうじゃのぉ、飲み込みが早くて助かったわい」
バレルが頷く。
「解体も大分上手くなってるしね!専属に欲しいくらいだよ!」
マルスはアキラに親指を立てグッドをした。
「なんだか寂しくなりますね」
リベイアはどこか切なそうにしている。
「俺も皆さんと出会えて良かったです!いろいろ教えてくれてありがとうございました、また機会があれば是非ご一緒したいです!」
アキラは鉄の翼竜に向け深くお辞儀をした。
「なーに畏まってるんだよ!俺等はもう仲間だ!」
ロベルトはアキラの背中をバンバンと笑いながら叩いた。
3人もそうだよと言いながら笑っている。
(……すごくいいなこの感じ)
アキラは充実感に満たされていた、前世では忘れていた感覚である、仕事しかしてこず人との関わりがほとんど無かったアキラに心の温もりが蘇る。
そうこうしている内にワープ装置にたどり着く。
「さて、地上に戻るか」
ロベルトがそう言うと皆ワープ装置に乗り込み地上へ出る……はずだった。
「あれ?何だここ?」
「まだダンジョンの中みたいだね」
「こんな事初めてじゃわい」
「何か薄暗くて怖いです……」
ロベルト達は辺りを見回しながら言う。
「魔物の気配が近寄って来ます!」
アキラは皆に注意を促した。
やって来たのは大型のネズミだった。
「な!ポイズンバイトラットじゃねーか!!全員構えろ!!」
ロベルトの掛け声に瞬時に3人は武器を構えた。
それと同時にアキラは後ろに下がる。
「噛まれたら終わりだ!!背後を取りながら倒す、しくじるなよ皆!!」
そう言うとロベルトはポイズンバイトラットの、注意を引くために駆け出し交戦し始めた。
それに合わせ、バレルは背後から槌を打ちつける、マルスは矢を放ち援護する、ロベルトが危ない場面はリベイアの水魔法をくらわせ体制を立て直していた。
しばらくするとポイズンバイトラットは動かなくなる、どうやら倒した様だ。
「……ここはダンジョン20階層か?」
「そうかもしれんのぉ、ポイズンバイトラットは20階層以降に出現すると記録があったはずじゃ」
「もしそうなら最悪だね」
「何かヤバいんですかこれ?」
「このダンジョンは14階層から毒持ちの魔物が現れ、下層に行くに連れ毒が強力な魔物が多くなり危険になります……」
「あぁ、俺等はそもそも10階層より下に潜るつもりはなかったから解毒薬を持ってきてねぇんだ」
「さっきの魔物は噛まれた箇所から肉が腐り始める毒持ちだよ」
「……確かにそれはまずいですね」
状況把握をしているとワープの光が出現する、誰か飛ばされて来た様だ。
「んだぁこれ?20階層じゃねぇかここは」
「あら、ほんとだわ」
「確かにこの道は見た事あるわね」
「あれ、あそこにいるの鉄の翼竜じゃない?」
「……アキラさん」
飛ばされて来たのは黒の虎狼と荷物持ちのカインだった。
「あぁクソ雑魚共か」
「……なぁこれどうなってんのわかるか?」
「知るわけねぇだろ、知ってたとしても教えねぇよ、まぁ俺等は解毒薬たんまりあるから、ダンジョンの何処に出ても別に構わねぇが」
「……解毒薬を分けてくれないか?地上に戻ったら普通の2倍の値段を払う…この通りだ」
そう言いながらロベルトは頭を下げた。
「はぁ?やるわけねぇじゃん、雑魚共は勝手に死んでろ」
取巻きの女達はキャハハとロベルト達を嘲笑う。
カインは何も言えなくて悔しそうに俯いている。
少しして黒の虎狼とカインは下層に向かう階段を目指す為に去って行った。
「……皆、すまない」
「ロベルトのせいじゃないよ」
「そんな事よりもどう地上に出るか、考えるのが先決じゃわい」
「上に行くか、下に行くか……」
「下に行く方がいいんじゃないっすか?普通に考えて上に行く方がクリアする階層数が多いですし」
「それもそうだな……今ならエルビス達の後ろを行けば魔物を倒しているだろうから、エンカウントする魔物も少ないはずだ」
「よし!どうするか決まったね!」
「みんなで助け合って行きましょう」
「よし!フォーメーションを崩すな!出発するぞ!」
ロベルトの掛け声の後に鉄の翼竜とアキラは下層に向けて歩きだした。




