11.馬車に揺られて
「助けてくれて、おおきに!」
オルームはアキラの前に立つと笑顔を向けた。
アキラは喋る二足歩行の猫を見て一瞬ギョッとした。
だがここは異世界だと思い出し直ぐに納得する。
「どういたしまして、何事もなくてよかったです」
アキラとオルームは握手をする。
「ほな、自己紹介しよか、ワイの名前はオルーム言います、見ての通り猫人族でしがない商人や、あんさんは?」
「俺の名前はアキラです、……えーっと旅人やってます」
アキラは転生者とか話したらややこしい事になりそうなので、旅人という事にした。
「アキラはんはえらい強い旅人やな!何処かに向かう途中なん?」
「いえ、特にこれといって予定は無く、放浪してました」
「ほんまか!ワイは輸送途中やねん、なんなら一緒にアルベルムまで行かへんか?」
「え!?いいんですか?」
「ええに決まっとるやん!ほな一緒に馬車に乗ろかぁ、護衛達もボケっとしとらんで、出発準備するでぇ!」
(フフフ、これで残りの旅路の安全性は万全や)
アキラが同行する事で、オルームは無償で安全をゲットした事に上機嫌になった。
アキラとオルームは馬車に乗り込む、しばらくして商団は出発し始めた。
生まれた時から山の奥地で暮らしていた為に、世界情勢を何も知らない設定で、アキラはオルームにこの世界の事を教えて貰った。
この世界には人間、獣人、亜人、魔人が居る、多くの国や部族集落があり、領土を広げようと争いが絶えない。
それにより優秀な人材を確保しようと、躍起になっている国もあるそうだ。
「アキラはんもかなり強いけど、ジョブスキル持ちはその上をいくらしいで!」
スキル持ちは優遇され、ジョブスキル持ちは更にレアな部類だった、世界に数える程しか居ないと言う噂らしい、国に仕えれば一生食うに困らない。
(……ジョブスキル持ちとは口が裂けても言わないでおこう、仕えるとかごめんだ)
社畜時代を経験してるアキラは自由気ままに過ごしたい、固く決意する。
「ワイは今までいろんな土地に行ったが、魔物を操るとか聞いた事あらへんで、アキラはんのスキルは街中では使用しない方がええかもな、下手したら捕まって牢獄やで」
オルームのアドバイスにアキラは頷いた。
「そうなんですか……そういえばこれ売れますか?」
アイテムボックスからパスリカ花を取り出す。
オルームはそれを見て驚愕する。
「アキラはんはアイテムボックス持ちか!?名のある旅人なんか?」
「え?そんな事はないですけど?」
オルームはじっとアキラを見つめ考える。
(アイテムボックスはアーティファクトやで、それにとんでもないスキル持ち、なんや試されてるんかワイは?まぁこれだけの傑物や、理由ありってのもありそうやし、ここは余計な詮索は御法度で行こかぁ……)
オルームはいつかアキラには、大きなビジネスチャンスが起こると予想し、良好な関係を築こうと決めた。
「またまたぁ、そんな謙遜なさんなって、お!これは良質なパスリカ花やな、ウチで買取るで!」
「ありがとうございます!よかったぁ」
「ほなアルベルムに着いたら、ウチの商会にそのまま行こかぁ」
アキラは資金の調達ができて安堵した。
道中オルームとの何気ない会話で盛り上がり時間を忘れる、ふと外を見ると道には多くの人が歩いている、遠くには大きな外壁が見えてきた。
「外壁すっげーー!!」
「もうすぐアルベルムに着きまっせ!」
(RPGの定番って言ったら酒場でしょ!酒場で絡まれるとかテンプレが起こったりして、美味い飯も食いたい!あと魔法も使ってみたいし、ダンジョンとかもいつか行ってみたいなぁ)
まだ見ぬ新地にアキラは胸を躍らさせていた。




