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100.相葉家の災難 Part1

静岡県焼津市に住む男子高校生の相葉京介(17)は、同じクラスの友達と一緒に下校していた。



「京介、この後カラオケ行かない?」


「ごめん、今日用事あるわ!」


「親父さんの手伝いとか?」


「いや、家族で回転寿司」


「お前ん家、ほんと仲良いよな」


「まぁ、妹はうるさいけどな」


2人は笑い合う、夕焼と蝉の鳴き声が何気ないひと時に青春を感じさせられる。



「じゃあ、俺はこっちだがら!」


「おう!また明日な!」


友達と別れ家へと足早に帰る、空腹を覚え今日はとことん食べるぞと意気込みながら玄関の扉を開けた。



「ただいま」


「京介、お帰り」


京介の母、静子(42)が息子の帰りを出迎える。

京介が帰宅したすぐ後にまた扉が開く、誰か帰ってきた様だ。



「ただいまー」


美里(15)は玄関にバックを置いて、そそくさと二階の自室に行ってしまう。



「美里、バックを玄関に置かない!」


「もう、わかってるわよ!」


母を怒らせると怖い、美里は階段を渋々降りながらバックを持って再度自室に戻った。



「母さん、父さんは帰ってきた?」


京介はそう言いながら冷えた麦茶を飲む、蒸し暑い夏にはやっぱりこれだなと思いながら冷蔵庫にあったハムをつまみ食いした。



「もうすぐ帰って来るわよ、あとこれ以上食べないでね」


静子はハムをつまみ食いしている京介にチョップする、明日の弁当に入れる予定だった物がこのままでは食べ尽くされてしまう。



「ただいま」


暫くして相葉家の大黒柱、修二(44)が帰宅した。

回転寿司が楽しみで美里も二階から降りて来る、静子は財布の中のお金を確認し、京介は麦茶を冷蔵庫に戻した。



「寿司行くぞー」


修二は長靴を履き替え車の鍵を持ち外で待つ、少しして3人は車に乗り込んだ。



「もう、バカ兄貴もっとそっち寄って!」


「おまえが太ったんだろ」


「ほんと最低、だからモテないんだよ」


「うるせぇ」


いつもの兄妹喧嘩が始まる。

修二は困った顔をし、静子は睨みを効かす。

静子の目を見た2人は途端に大人しくなった、母を怒らせるのは得策ではない。



「もう夜か」


修二は運転しながら空を見る。

時刻は19時、回転寿司が混む時間帯でもありもう少し早く帰宅すれば良かったと少し後悔していた。



「腹減ったー」


「私もー」


「ウチの食べ盛り共は、遠慮がないからなぁ」


修二はそう言いながら笑う、静子はもう少しお金を下ろしてくればよかったかしらと財布の中をもう一度確認する。



「ん?何だ?」


修二は前方に何かがあるにの気づき車のスピードを緩めた。

ノシノシとそれは近づいて来る、車のライトに照らされそれは姿を現した。



ーブモォ!!ー



人の形をした牛が棍棒を振り翳し迫って来る、慌てて修二はギアをバックに入れ猛スピードで下がる。



「父さん、どうしたの!?」


「え?何かあったの?」


「何か知らないがヤバイ!!」


「あなた、何あれ!?」


慌ててしまった修二は車をガードレールにぶつけてしまいエアバックが作動する、皆その衝撃で目を瞑ってしまう。

あの化け物がすぐそこまでいるかもしれない、そう思った修二は恐る恐る目を開けた、だが化け物に遭遇するよりも驚愕する事が起きた。



「……な、何だここは?」


見慣れた道路を走っていた筈なのに、景色が一変していた。

辺り一面に荒野が広がる、暫しの静寂の後、相葉家全員が車から降りた。



「……嘘だよね」


「俺、夢でも見てるのか?」


「夢じゃないわ……」


皆あり得ない出来事に思考が鈍る、少しして車に一旦戻りどうするか話し合う事にした。



「とりあえず、車で行けるとこまで行ってみよう」


「パンクしてるわよね?」


「限界まで走らせるさ」


「……もしかして異世界とか?」


「あり得ないわよ、そんなの」


修二は車をゆっくり走らせる、変わらない景色が続き皆の不安は積もっていった。

車もガタガタ言い始めた、もう少しで限界が来る。

こんな所で彷徨ったらそれこそ死に直結する、家族を死なせるわけにはいかないと思いながら、修二は荒野を抜けるまで車が壊れない事を祈った。



「道があるぞ!」


修二の祈りが届いたのか、土が剥き出しの道を見つけた。

車の後輪が完全にパンクし、長年乗り続けた愛車を仕方なく乗り捨てた。

相葉家は下りの道を歩く。



「ここ日本かよ?」


「私のスマホは圏外だわ」


京介と美里をスマホを見るが、電波が届いていない事を確認するとスマホをポケットに戻した。



「あなた、これからどうするの?」


「とりあえず、人を探そう」


家族を不安にさせない為に修二は先陣を切っているが、正直自分も不安でいっぱいいっぱいだった。

下手したら野宿も考えられる、サバイバル経験など無くキャンプをした事あるくらいだ、道具もなければ食料も無い、人間とはこんなにも弱い生き物だったのかと嫌でも思い知らされる。


そして相葉家はひたすら歩き続けた。

どれくらい歩いただろうか、足が筋肉痛になりかけた頃にガラガラと音が聞こえ始めた。



「何だ?」


それは徐々に近づいて来る、皆未知なる恐怖に怯える。



ーヒヒィン!



ガラガラと言う音に紛れて、馬の鳴き声が聞こえた。

人がいるかもしれないと思い、皆走り出す。

そして馬車と遭遇した、御者台には人の姿がある。



「すみません!!」


修二は慌てて声をかけた、御者は馬を止め御者台から降りる。



「どうなさいましたか?」


「あの、ここは何処ですか?」


「ここは、メラフューレ王国へ向かう道ですが?」


御者は不思議そうな顔をした。



「めらふゅーれ?」


「……外国にそんなのあったけ?」


「たぶん無いわよね……」


「ほんと何なのよ!」


聞き慣れない国名に皆戸惑っていた。



「何か事情がお有りなのでしょう、よろしければ乗りますか?」


「よろしいのですか?」


「ええ、困った時はお互い様です」


「ありがとうございます!!」


皆嬉々として馬車に乗り込む、これで助かったと喜びあった。

だがここは日本という治安の良い国では無い、人を簡単に信じると言うのは愚かだった事をすぐ知る事になる。


御者の男はほくそ笑みながらまた馬車を走らせた。







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