98.交渉
アキラ一向は冒険者ギルドに居た。
「すみません、鉄の翼竜は居ますか?」
受付の女性に尋ねる。
「彼らなら依頼で街を出ています」
「……そうですか」
「おや?アキラではないか」
ギルドマスターのヒューリーがアキラに声を掛けた。
「久しぶりです、ヒューリーさん」
「噂通り、エルフが本当に一緒とはな」
「フェルシエと申します、アキラ様の従者です」
フェルシエが頭を下げると、ヒューリーは軽く手を挙げそれに応える。
「んで、マタタビ商会のお偉いさんが2人と、やけに変わったメンバーだ」
ヒューリーはニヤッと笑った。
ヒューリーはロベルト達はその内戻って来ると言い、客間で何があるのか聞きたい様だ、確かに第三者からしてこのメンツを見たら気になって仕方ないか。
「んで、何があったのか私にも教えてくれよ」
「まぁ、別に良いですけど」
アキラはこれまでの事を話す、ヒューリーの目は次第にキラキラし始めた。
「御伽噺でも出来過ぎだが、本当なんだろうな」
「本当です」
「ロベルト達に用があるらしいが私も聞いていいかい?」
「リベイアは元貴族なので、領地運営の事を詳しく知っているのかと思って」
「……それはスカウトか?」
「…………」
「リベイアが居なくなれば鉄の翼竜は自然に解散になるだろうな」
「すみません、そこまで考えてませんでした」
「鉄の翼竜はBランクになった、そう簡単に解散されちゃ私も困る、だが1つ取り引きしないか?」
「取り引きとは……?」
「話を聞く限りその地にダンジョンができた事も期待できる、もしダンジョンを見つけた際、鉄の翼竜に探索させてもらえないだろうか?」
「それは何故です?」
「私は鉄の翼竜に期待している経験を積ませてやりたい、対策が練られたダンジョンと未知のダンジョンでは得られる経験量が違うからな」
「わかりました」
「それと、いつかはアキラが作る国に冒険者ギルドを置いて欲しい、これは強制ではない、私からのお願いだ」
「俺もそのつもりです、ダンジョンが有れば積極的に攻略して欲しいですから」
ヒューリーはニカッと笑う。
「ありがとう、ロベルト達には私からも後押ししておく、まぁ喜んで行くだろうが」
ードンドンー
「どうやら戻って来たようだね、私は席を外すよ」
ヒューリーは部屋を出る、入れ替わりにロベルト達が入ってきた。
「アキラ!久しぶりだな!」
「アキラさん!」
「元気そうで何よりじゃ」
「やぁ!元気だった?」
「お久しぶりです、アキラさん」
ロベルト、バレル、マルス、リベイア、カインは満面の笑みを浮かべる。
「久しぶり、とりあえず座って」
ロベルト達はソファーに座る。
アキラはフェルシエ、イルーム、オルームを紹介し、早速本題に取り掛かる。
リベイアから父親の話を聞く、元ミスラウェル聖皇国の伯爵で領地運営をしていたがあらぬ疑いで国外追放されてから今日まで至り、0から生活基盤を作る為無理をして重い病気になってしまったのだとか。
「わかった、リベイアにお願いがある」
「お願いとは?」
「アルグレームさんを治すから、俺に力を貸して欲しい」
「治せるのですか!?」
「治せる、俺はとある地に国を作る、その際アルグレームさんには領地運営の補佐をして欲しいんだ」
「国!?」
ロベルト達はアキラの目を見る、その目は真剣で嘘を言っている様ではなかった。
「私からの命令だ、行ってこい」
「ギルドマスター!?」
「アキラとは話をしてある、きっと更に強くなれるぞ」
鉄の翼竜は更に強くなれると聞いて、目を爛々とさせていた。
「あの、僕は……?」
「もちろんカインも一緒に来い、家族も一緒に面倒をみる」
「ありがとうございます!!」
「わかりました、父が治るのならその話受けたいと思います」
「俺らもその話受けるぜ」
ロベルト、バレル、マルスは頷いた。
「皆ありがとう、早速だがアルグレームさんのいる所に行きたいのだが?」
「父はメルサ村に居ます、ここから結構離れているのですがどうしますか?」
「それは大丈夫、全員乗っけてくから」
「?」
皆頭にクエスチョンマークを浮かべていた。
そして全員を連れてアルベルムから少し離れた地へと向かう、何故かヒューリーも一緒についてきたがこの際気にするのはやめよう。
「アキラはん、こんなとこでどないするつもりや?」
「まぁ、見てなって、あと驚いて気を失わない様に気をつけてくれ」
「なんやそれ」
オルームは呆れる。
「冗談抜きで、驚くと思いますよ」
フェルシエの言葉に、他の皆は何があるのかワクワクしていた。
「ヴェルサス来い!」
空に巨大な魔法陣が浮かび、そこからヴェルサスが出現する。
そしてヴェルサスは羽を広げ、飛びながらこちらへ向かって来た。
アキラとフェルシエを除く全員が石化したかの様に固まった。
「主よ、何用か?」
「毎度悪いな、また乗せてくれ」
「うむ、承知した」
「おーい、皆乗るぞ」
アキラとフェルシエはヴェルサスの背に乗る。
「きっと俺は夢を見てるんだ」
「奇遇じゃな、同じ夢をワシも見ているわい」
「え?ロベルトとバレルも?」
「え、目の前に竜がいるんですが」
「アキラさんすごい!!」
鉄の翼竜の中で石化からいち早く復帰したのは、意外にもカインだった。
「アキラはん……やりすぎや」
「ダメ、私濡れてきた……」
オルームは疲れた顔をし、イルームは恍惚な表情を浮かべる。
イルームは獣人特有の、強いオスに非常に惹かれるみたいだ。
「あはははは!とんでもない奴だ!」
ヒューリーは爆笑していた。
暫くして落ち着いたのか皆ヴェルサスの背に乗る。
「では、行くぞ」
ヴェルサスは羽を広げ飛び立つ、向かうはメルサ村だ。




