1.これほぼ強制の異世界転生じゃね?
俺の名前は中山暁
これといって取り柄のない社畜サラリーマンだ。
30歳の独身で恋人もいない、仕事をしてたまの休日はゲームをやる日々、つまらない毎日に嫌気がさしていた。
「…もうこんな時間か」
時刻は深夜1時。
真夏の蒸し暑さを感じながらも重い腰を上げる。
ゲーム機の電源を落としタバコを吸う為にベランダへ向かった。
「ハァ、俺、何の為に生きてんだろ」
タバコの煙と一緒にため息も溢れる。
ふと夜空を見上げると星が煌めいていた。
星を虚ろな目で見続ける。
すると流星群を見つけた、アキラはその光景に目を奪われる。
その直後大地が割れんばかりの揺れがアキラを襲う。
(あ、死ぬかも)
そう悟ると同時にアキラの視界は暗闇に閉ざされた。
そこは何も無い空間。
死後の世界ってのはこんなものなかとアキラは思った。
死んだのに心は落ち着いている、きっと心に未練がないからだ、それがとても切なかった。
「やあ、調子はどうだい?」
声がした方向に振り返ると小学生くらいの男の子がいた。
「君は誰だい?」
アキラは男の子に問いかける。
「僕は何者でもないよ」
男の子の返答にアキラは困惑する。
「そんなことより君に謝らなければいけないことがあるんだ……」
なんだそれとアキラは思った、TVのドッキリ企画かと疑うほどだった。
「はあ……君は誰でここはどこだい?」
「僕は誰でもなくここはどこでもないよ」
一昔前のAIかと思うくらい会話が成立しない。
男の子に詰め寄ろうかと思ったが大の大人が小さな子にムキになるのもバカバカしくなり、アキラはどこか諦めた口調で男の子に問う。
「謝らなければいけない事って?」
「こちらの不都合で君は死んでしまった、君は本来死ぬ運命ではなかったんだ、お詫びに第二の人生をあげるよ!」
男の子はにっこりと笑った。
「はい?」
安いクソゲーみたいな雑な展開にアキラは戸惑う。
「はい、だって!やる気は充分だね、それじゃあ設定の間に送るね!」
「いや、ちょっとま」
有無を言わせない様な間で、アキラは何も無い空間から姿を消した。
今度は真っ暗な空間に居た。
「なんだよこれ……」
理解が追いつかない。
すると真っ暗な空間に文字が浮かび上がる。
[質問は4問。]
[あなたはどれを選ぶ?]
1.孤高で揺るがない力
2.森羅万象を司る知識
3.人々を魅了するカリスマ
「心理テストかよ!」
思わずアキラはツッコむ。
今までボッチだったアキラは、生まれ変わるなら友達が欲しいという理由で3を選んだ。
[どの姿に憧れる?]
1.仲間を率いて前戦で戦う戦士
2.後衛で仲間を補佐する魔道士
「もうどうにでもなれ……」
いろいろと諦めたアキラは、体を動かす方が好きなので1を選んだ。
[あなたはどうしたい?]
1.支配
2.共存
今まで会社にこき使われていたアキラは、社畜時代のトラウマを思い出し1を選ぶ。
[あなたの性質は?]
1.清純なキャンパス
2.唯我独尊の黒鋼
心はすでに廃れていたので清純はないだろうと2を選んだ。
問いを選び終えると解析中の文字が浮かびあがる。
[あなたに相応しい職業は"大帝"になりました]
今の自分とかけ離れた職業が決まっていた、ていうか職業決めだと解っていたらもっと良く考えて答えたとアキラは後悔した。
[初期スペックを構築します]
【ステータス】
【中山暁】
レベル.1
種族 ヒューマン
職業 大帝
称号 なし
筋力.62
魔力.29
知力.35
技力.51
防御.48
俊敏.38
【ジョブスキル】
・支配する者
・異空の城
【アナザースキル】
なし
[スキルの解説をしますか?]
「お願いします」
スキルの名前だけ知っても使いようがわからないので迷わずお願いする。
『支配する者』
倒した敵を任意で支配し使役する事ができる。
支配者のレベルが上がる事に、使役者も成長していく。
『異空の城』
使役者を異空の城に移す事ができる。
使役者は現世と異空の城への行き来は支配者の権限が有ればいつでもできる。
レベルが上がる事に使役者を異空の城に移せる容量が増えていく。
(なんかよくわからないが、上手く使えばただ生きて行くには困らなそうだな)
アキラは心の中で安堵した。
「やあ、設定は終わったかい?」
声の方を振り返るとさっきの男の子がいた。
「これはいったいなんなんだ!」
アキラは思わず声を荒げる。
「君が居た世界とは違って、今から行く世界は争いが絶えなくて危険なんだ、魔物、魔法、剣有りの異世界だけど君なら大丈夫!第二の人生を楽しんでね!」
相変わらず話しが噛み合わない上に軽い口調でヤバい内容を告げられる。
「はい?」
アキラはぽかんと口を開けながら言う。
「はい、だって!やる気充分だね!これは僕からの餞別だ!アイテムボックスを渡しておく、あとステータスをいつでも見れる様に君の体にセッティングしておくよ!じゃあ気をつけてね!」
男の子は満面の笑みで手を振る。
「いやこれさっきと同じパターン!!」
アキラの叫びは虚しくまたどこかに飛ばされるのであった。
〜作者から〜
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