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五話・アマリア=メラネシア


「あら、イヴ。おはよう」


わいわいと騒いでいる食堂に入ってきたのはお母様だった。

蒼髪紫瞳をしている父やエレーナ姉様とは違い、お母様はブロンドにピンクの瞳をした妖艶な美女だ。

毎朝ゆったりと起きてくる理由は彼女の色気から察せてしまうが、余り深くは考えないでおこう。


「おはようございます!お母様」


胸を抑えたまま悶えているお父様を置き去りにして、私はお母様の胸に飛び込んだ。


「うふふ。今日は早いのね、イヴ」

「うん!ちょっと早く目が覚めちゃって。お父様とお話をしていたの」

「あら、クロード様と…?」


そこでやっと床に蹲っているお父様へ視線を移したお母様は「あらあら、またなのね」とにこやかに微笑んだ。

あぁ、その大人の余裕が格好いいです!!


「何を話していたの?」

「えっと…魔術を習いたい、っていう…お話、を…」

「あら、魔術を?イヴはまだ小さいでしょう?急にどうしたの」

「えっと……お姉さまを、守れたらなって……」

「エレーナを?」


意外そうに瞬きをするお母様に、私は居心地悪く頷いた。

この公爵邸の警備がしっかりとしていることは重々承知している。

けれど、私が守りたいのはお姉さまの心と、お父様お母様なのだ。

馬車が崖から落ちてしまっては、護衛騎士も役には立たない。


「……まだ早いと思うんだけどなぁ~」


いつの間にか復活していたお父様が私を半目で見ながら、独り言ちる。

体育座りをして拗ねている様はまるで子供の用だが、彼の神秘的な美貌と相まって見事に似合ってない。


「そうね。魔術はとても危険なもの。三歳の女子が触れていいモノじゃないわ」

「……っ、そう…ですか…」


心のどこかで「大丈夫だ」と確信してい待っていたせいか、落胆が大きい。

三歳、という年齢はなんでも出来る様で、何も出来ないのかもしれない。

最悪独学でもいいから何とかしよう、と頑張ってポジティブに考えていた私はお母様の続く言葉に瞠目した。


「―けれどね、私はイヴの考えがとてもすてきだと思うの」

「え…?」

「まだ先生を雇うのは早すぎるわ。でも魔術なら私から教えてあげられる」

「…お母様が…?」


(えぇッ!お母様って、魔女だったの…?!)


凄艶に微笑む彼女からは全く想像のつかない魔術師としての姿に、私はただ吃驚する。


「ふふっ。これでも魔術学院は首席で卒業しているのよ。任せなさい」

「―っ!ありがとう!!お母様!!」

「いいのよ。可愛い娘の頼みだもの」


まさか、こんなところに素敵な先生がいただなんて!

一気に視界が開けた私は、思いのままに母の豊満な胸へ飛び込んだ。

ポンポンと優しく頭を撫でられるのがどうにも心地よくて、その温もりをぎゅっと強く抱きしめる。


「〈黄金の魔女姫〉から直々に教えて貰うなんて…。それはそれで心配なんだけど…」


だから盛り上がる私たちを他所に、国王の右腕なる美丈夫が不安そうに独り言ちたことに全く気が付かなかった。


本日の投稿はこれで最後です!

お付き合いいただき、ありがとうございました。

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