二話・エレーナ=メラネシア
『虐げられた御令嬢、隣国で幸せを掴む』
不滅の人気を誇る〈ざまぁ〉小説。
私が転生を果たしたのは題名通り、虐げられて育った少女―エレーナが幸せを掴むまでの物語である。
メラネシア侯爵家は家族を溺愛する宰相の父と、社交の花と呼ばれる優しくおっとりとした―けれど怒ると一番怖い―母、長女のエレーナ、次女のイヴの四人家族である。
しかし、そんな平和な生活はエレーナが五歳の時―両親の事故死によって幕を閉じる。
代わりに家にやって来た父の弟セメラスが、家を占領し始めたのだ。
野心を胸の奥に秘めている彼はエレーナの妹、イヴに目を付けた。
イヴは生まれ持った魔力がとても高い上、一度見れば覚えてしまう〈完全記憶能力〉という天啓を持って生まれてきた―まさに天才だったのだ。その上、母の美貌を受け継いだイヴは彼にとって非常に都合のいい駒となった。
―対して特段美しくもなく、また平凡な秀才であるエレーナは邪魔者扱いを受けた。ただ、第二王子の婚約者、という立場だけが彼女を侯爵邸に繋ぎ止めていた。
仲の良かったエレーナとイヴの間にはもう超えられない壁が出来、イヴや使用人はエレーナを邪魔者のように虐めるのだった。
そして、十年後の十五歳。
エレーナは第二王子から婚約を破棄されてしまう。
なんでも、イヴと王子が「真実の愛」に目覚めてしまったのだという。
そしてエレーナは追放された。
もう二度と国境を越えてはならないと言われ、国外へと追いやられたのだ。
―そこで、エレーナは隣国の第三王子と出会う。
二人は恋に落ち、エレーナのいなくなった侯爵家と第二王子は堕ちていくのだ。
それが『げら嬢』(小説の略称)のおおまかなストーリーになっている。
「いや、私ッ!破滅じゃなくて、自滅しちゃってるじゃんッッ!!」
『げら嬢』と訳される小説は…ちょっと…(笑)