無能を追放しまくっていたらギルドの治安が良くなりました。〜追放した無能達がたまに復讐しにくるんだが、返り討ちにするのがめんどくさい〜
ある街に、グロリアスロードというギルドがあった。グロリアスロードは依頼の達成率が高く、ギルドのメンバーも街の人達から評判が良かったので、人気のギルドとして有名だ。
しかし、お世辞にも良いとは言えない噂があった。ギルドマスターのケープ・モロロンは、人を次々に追放する。追放した理由は「無能だから」という内容だった。
そして、今日もギルドから追放されている者がいた。
「ヴィーノ。お前明日から来なくて良いよ〜」
「な、何故だ!僕は神童と言われている天才だぞ!」
「他の人が神童って言ってる所見た事ないんだけど‥‥理由は無能だから。心当たりあるでしょ?それじゃ!」
「くそっ、必ず後悔させてやるからな!」
そう言い、ヴィーノと呼ばれた青年はギルドを出て行った。
「ケープさん、また追い出したんですか?今週で10人目ですよ」
ケープに話しかけたのは、ムッシュ・コッツァー。ギルドマスターの補佐であり、ギルドで1番人気の看板娘だ。
「ムーシュちゃーん。だって無能なのが悪くない?自分の悪い所を自覚して、改善しようとしてるなら追放しないけど、全然その様子が見られないんだもん」
「ちゃんとその理由を伝えたら、相手も納得するんじゃないんですか?だからよく復讐しに来られるんですよ」
「え〜、散々他のメンバーからボロクソに言われてるんだから気づいてるでしょ〜。それに同じことを面倒いから言いたくないし」
「貴方って人は‥‥それで気づかないから無能なのでは?」
「むっ、確かに一理あるな」
ケープはちゃんとメンバーの話を聞き、自分でもその様子を見た上で追放していた。
しかし、具体的な内容を言わないで無能とだけ言って追放している為、追放された者が逆ギレして復讐しに来るということが度々あったのだ。
ヴィーノのを追放して2日後。ヴィーノはあろうことか、テイマーを仲間にしてモンスターを引き連れてギルドに復讐しに来たのだ。
「ケープさん!先日追放したヴィーノさんが、1週間前に追放したテイマーのジーオさんを連れてギルドに来てるんですが!しかもモンスターを連れてきてます!」
「ヴィーノがジーノを連れて、ムーシュちゃんのハートがヒート?」
「下手くそな韻を踏まないでください!」
「ムーシュちゃんが返り討ちにしてくれたら、俺のテンションぶち上がりーよ!」
「私はこの前やったのでやりませんからね」
「はっ!そうだった‥‥他のメンバーは?」
「モンスターの被害を出さないために、市民を避難させています」
「え?そんなにヤバいモンスターを連れてきたの?」
「ボスリザードが2体とリザードが10体程ですね」
ボスリザードが2体とリザードが10体も街にいるとなると、中級の冒険者・Bランクが5人以上いないと被害を出さない、かつ相手にするには厳しい状況だ。
「は!?馬鹿じゃないのアイツら!」
「急いでください、街の人達がカンカンですよ。ついでに追放した2人も」
「は〜めんどくさいけど行くしかないか」
ケープとムーシュはギルドの外に出ると、ボスリザード達を引き連れたヴィーノとジーノが仁王立ちで待っていた。
「おい、ケープ!この僕を無能扱いした事を後悔するんだな!」
ヴィーノの言葉を無視して、ケープは周りを見渡す。そしてムーシュに話かけた。
「あれ?周りに街の人達いるじゃん。ってかギルドのメンバーも街の人たちと一緒にリラックスしてるけど!?」
「さあ?あそこなら安全と判断したんじゃないんですか?」
「一歩も動いてないじゃん!」
ケープが文句を言っていると、街の人とギルドのメンバーにヤジ、又は応援を貰う。
「ケープ!いつものことだろう、早く終わらせろ!」
「そうだそうだー!めんどくせえ事に巻き込みやがって!」
「マスター!頑張ってくださーい!」
「マスター、ファイト!」
「ケープさん、終わったらデザートが食べたいです!」
「他人事だと思って!ちゃっかり、ムーシュちゃんも休んでるし!」
「おい!僕を無視するんじゃない!」
「俺もいるぞ!テイマーだからって追放しやがって!」
無視をしていたら、ヴィーノとジーノから抗議の声をあげた。ケープはめんどくさそうに対応する。
「はぁ、まずはヴィーノからだ」
「はぇ?」
いきなり指を刺されて、名前を呼ばれたヴィーノは素っ頓狂な声を出す。
「お前、自分が天才だと思っているの?その割にはパーティーの足を引っ張っていたけど」
「僕が足を引っ張るなんてありえない!むしろ味方が足を引っ張ってたんだ!」
「あのさ‥‥味方に止められてるのに自信満々に敵に突っ込んで、怪我をして助けられてるって馬鹿なの?挙げ句の果てには味方のポーションを奪ってまた怪我をしに行く。救いようが無さすぎない?」
「ぐっ!」
「次にジーノ!」
「俺は問題ねえだろ!」
「大ありだ!お前、テイムしたモンスターにセクハラさせてただろ!苦情がきてたからな!」
「この痴漢テイマー!」
「臭い、薄毛、デブ!」
「人型モンスターをテイムして、SMプレイをしてるとかドン引きよ!」
「ぐあっ!?」
周りにいた、女性のギルドメンバーからブーイングを受けて傷ついているジーノに、追い討ちをかける引き気味のケープ。
「‥‥‥しかも、モンスターに適当な命令をして、自分はサボってるって頭おかしいんじゃないの?その癖お金だけは一丁前に多く貰っていくし」
「う、うるせえ!モンスターにやらせてるんだから良いじゃねえか!」
「良くねえよ」
ケープの雰囲気が変わり、強烈なプレッシャーが放たれる。
「「ヒッ」」
「自分だけ嫌な目にあうんなら文句はねえ。だけどお前らはパーティー、周りに迷惑をかけてるんだよ。簡単な依頼でも何かあったらどうするんだ?下手したら命を落としかねないのが冒険者だぞ?」
「うっ」
「ぐっ‥‥」
ケープの言葉に何も言い返せず、2人は黙ってしまう。
「他のメンバーに言われて、反省するようなら追放はしなかった。だがお前らは何度も何度も同じことをし、改善しなかったな。復讐するにも、街の人への被害とか考えてやれよ」
「ぐっぞぉぉぉ!追放したお前が悪いんだよ!行け、ボスリザード達よ!」
「「グギャァァッ!」」
「本当に救えないな‥‥」
全てのボスリザードと、リザードがケープに襲いかかる。
「はぁ、恨むなら変態テイマーを恨んでくれよ?ソウルキューブ」
ボスリザード達の胸元に、白い箱のような物が出てきた。
「安らかに眠りな。フッ!」
ケープが持っていたショートソードで、白い箱のような物を斬ると、ボスリザード達が一斉に倒れ、絶命していた。ヴィーノとジーノは、ケープが斬ったのが見えなくて呆然としていた。
「な、何をしたんだ‥‥」
「くっ、僕がやる!!これが神童と言われた僕の力だ!ハアッ!」
ケープからしたら、もの凄い遅いスピードで斬りかかって来た。これを、ケープは簡単に避けて殴る。
「弱すぎなんだよ!」
「ブヘェェ!!!」
ヴィーノは見えなくなるまで吹っ飛んでいった。
「次はお前か‥‥‥」
「ヒッ、ゆ、許してくれ!俺はヴィーノに誘われて‥‥」
「もう遅え!!」
「あっ///フゴッッ!!!」
ジーノはヴィーノと同じ方向に吹き飛ばされていった。
「お前がMなのか‥‥疲れた。みんな〜撤収するよ〜」
戦闘を終え、ケープはいつもの雰囲気に戻った。
「はーい!カッコよかったよ、マスター!」
「次も面白いものを見せてくれよー!」
「見せ物じゃないんだけどね!?」
「ふふっ、やっぱりケープの戦うところはカッコいいです」
「ん?ムーシュちゃん、何か言った?」
「何でもないですよ。お疲れ様です、デザートでも食べながらゆっくりしましょ」
「さんせーーい」
ーーーーー次の日ーーーーー
「マスター!1ヶ月前に追放した奴が復讐しに来たよ!本当恨まれやすいね!」
「2日連続とか勘弁してくれぇぇ」
「今回も私はパスするので」
「そ、そんな〜〜」
グロリアスロードの騒がしい日々は続く
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