神さんと閻魔さん
ある日のこと、神様が地獄の閻魔様のところへ遊びに行ったときのお話。
「ねぇ、閻魔さん。最近現世に人が上がってこなくて暇にしているんだけど、地獄の方で厳しくしているのかい。」
神様は、そう言うと大きな口を開けてあくびをした。
「いやいや、そんなことは全くないですよ。ただねぇ・・・」
閻魔様は少し困った顔を知ると口ごもった。
「ただ、どうしたんだい?」
神様は、閻魔様が口ごもったので、ちょっと気になったらしく、閻魔様の顔をのぞき込んだ。」
「実は、最近地獄の卒業試験場に居座る人間が増えて困ってるんですよ。」
閻魔様は本当に困っているらしく、腕を組んで下を向いてしまった。
神様は不思議そうな顔で閻魔様に言った。
「なんであんな世界に居座ってるの?もしかして私のせい?」
「神さんなんかやったんですか?」
今度は閻魔様が神様の顔をのぞき込んだ。
「実はね、現世の人口を増やそうと思ってね、ここ数千年の間に何人か地獄の卒業試験場に使者を送ったんだよ。現世に上がるヒントをあげようと思って。でも、何故かその後、現世に来る人間がもっと減っちゃったんだよ。」
閻魔様はこの話を聞くと、何か納得したらしく、ふぅーっとため息をついた。
「まぁ、きっかけはそれかも知れませんね。」
神様はすまなそうな顔押して、閻魔様に聞いた。
「まさか、あれが逆効果になっていたなんて思いも寄らないから、悪いことしちゃったのかね。でも、良かれと思ってやったんだよ。」
閻魔様が頷くと神様は更に話を続けた。
「でもさ、人間達は何で地獄の卒業試験場に居座っているんだい。」
閻魔様はしばらく考えていたが、ぽつりぽつり話し始めた。
「人間達が神の使者の言葉を自分の都合の良いように解釈して、地獄の卒業試験場が現世ってことにしちゃったんですよ。でもって、死んだ後に天国に行けるかどうか分からないから、地獄の卒業試験場にしがみついて、少しでも長生きしたがってるんですよ。」
神様はこの話を聞くと驚いた顔をして言った。
「じゃ、何かい。私が作った現世があんなひどい世界だと人間は思っているって事かい。そいつは許せねぇなぁ。」
「その後は、一部の人間が自分の利権を守るために、法律だとか言って色んな決まりを作ってましてね、それが神の法と相容れないものが多くて。普通に人生を全うしても卒業試験に受から無いんですよ。結局地獄に戻されたり再試験になったりで、現世にあげられないんですよ。」
神様は困った顔をしてうつむいて考え込んでしまったが、しばらくすると閻魔様に言った。
「なんとかならないのかねぇ。閻魔さんよ」
「あそこは地獄の卒業試験場だから、ある程度自由にやらせているんですが、悪くなる一方ですよ。まぁでも、今のままなら人間達は近い将来に自滅しますよ。」
閻魔様の言葉を聞いた神様は、意を決したように閻魔様に言った。
「私にも責任があるみたいだし、私が直接試験場に行って、そこは現世では無く地獄の卒業試験場だと教えてくるよ。」
そう言うと神様は地獄の卒業試験場に行って、人間達にそこは現世では無いと説いて回った。
しかし、人間達には全く信じてもらえず、仕方なく神の奇跡を見せたりもしたが、イリュージョンと思われてテレビ局が出演依頼に来たりで、結局あきらめてしまった。
そして神様は精根尽き果てて閻魔様のところへ行った。
「閻魔さん。無理だったよ。あれはもう救いようが無かったよ。なんかね、警察に捕まったり、精神病院に入れられたり、袋だたきに遭ったりで、もうなんかね・・・」
神様の話を聞いた閻魔様はため息をついてうつむくとぼそっと言った。。
「やっぱりですか・・・」
しばらく二人とも黙っていたが、神様は急にニッコリ笑うと閻魔様に言った。
「後は任せるよ。ごめんね。」
「マジっすか!」
閻魔様は思わず叫んだ。