表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/5

<1>

続かないはずだった話に続きがありました。

『婚約解消!ほっほーい! 王妃教育から解放されたら可憐な笑顔が花咲き饒舌になりました』の続きとなっています。が、前作をご存じない方にも流れを掴んで頂けるように書いてみました。


一話目は序章。二話目あたりから少々飛ばして参ります。by シュトーリナ

 イケテ=ルジャン国の王族は皆美しい。


 特別に神の祝福を受けているのではないかと思う程に。そして王家の血を引いている他の貴族達も美しい者が多い。この国は男も女も美人ばかりだ。


 「この国に来て本当に良かった…」 

 

 そう呟くのはシュトーリナ・ハウゼン。ちょっぴり歯に衣着せぬ物言いで周りを驚かせることがあるが、正直でシャイなもうすぐ17歳の女の子だ。


 侯爵令嬢であるシュトーリナは、8ヶ月程前まで自らの生国であるダミーダコリャ国の王太子、マージス・カ・ダミーダコリャ殿下の婚約者であった。だが、王太子の心変わりによって婚約は解消となった。 

 

 元より王太子に思い入れのなかったシュトーリナは、「正直、マジでウエルカム!」と喜び、王太子が学園のイベント会場で婚約解消の書類にサインを求めた時、快く了承し、解放感で高揚する気持ちのままに、王太子も知らなかった王室のナイショ話を色々と語ってしまった。


 語り終えたシュトーリナは、ショックと混乱で呆然としている王太子をその場に残したまま、婚約解消の書類にサインするのも忘れてサンバのリズムで踊りながら会場を退出し、「婚約解消ばっちこい!ほっほーい!」と月に向かって叫んだのだった。 


 そのまま彼女は姿を消した。婚約解消の書類にサインをもらいそこねた王太子が必死で探し回るが、杳として行方は知れず、今に至っても王太子はサインをもらえていない。


 実は、他の女性に恋をする王太子に気付いてから、その様子を静かに見ていたシュトーリナとその父ハウゼン侯爵は「いずれこの婚約はなくなるであろう」と踏んでいた。

 そして、この通達劇のかなり前から、しっかりバッチリがっちりと「その時」の対策を練っていたのだ。


 元々、稀代の遣り手実業家として名を馳せていたハウゼン侯爵は、経済をぶるんぶるん回し国益を上げ、国に貢献しているダミーダコリャ国の希望の星であった。


 次期王妃に選ばれた娘を誇りに思い、そんな国の為にも力は惜しまぬと張り切っていた。天真爛漫だった娘が徐々に大人しくなり表情が消えていっても、淑女としての自覚が出てきたのであろうと信じていた。


 だが、娘が13歳になった時、新しく王妃教育に加わった教科「護身術という名の暗殺術」「世界情勢と株の動きの見極め術」の教師達により、6歳の時から娘が受けていた歪んだ王妃教育の実態を知らされる。話を聞いたハウゼン侯爵は、驚愕し怒り後悔し、そして懺悔をした。

 そして娘を虐げていた者達へジワリジワリと静かに、だが終わることのない復讐を開始した。

 上記二教科の教師達、ラインハルト師とアマミヤ師の協力の下、シュトーリナ自身も自ら非道な教師達への意趣返しをしたのだが、侯爵は「君は適度にしておくんだよ。過剰な部分は大人に任せておきなさい。ふふふ」と言ったそうだ。



 シュトーリナには素晴らしい才能があった。

 最初に彼女の才能に気付いたのは「護身術という名の暗殺術」の教師であったラインハルト師だ。


 授業の一環で、己の使う道具は自らがメンテナンスを出来るようにと指導され、道具の手入れだけでなく作製や開発を学んだシュトーリナは、驚くべき手先の器用さと独創性で、次々と芸術的な美しさを備えた武器を生み出した。

 特に初期の作品、婦人の髪を飾る「殺れる(かんざし)」は暗殺業界でも評価が高く注文が殺到した。


 創る喜びに目覚めたシュトーリナは、武器ではない、純粋に美しく身を飾る宝飾品、装身具のデザイン製作を好むようになり、その才能を開花させて行ったのである。


 ハウゼン侯爵は、歪んだ王妃教育から解放された娘が開花させた素晴らしい才能を喜び、彼女がやりたいと願った事をバックアップする為に惜しむこと無く手腕を発揮した。


 父の後押しもあり、シュトーリナが「謎のデザイナー」として手掛ける宝飾品は、瞬く間に国内のみならず他国でも大人気となった。

 わずか1年で、この世界の半分を占めるイヨウロップ大陸中で一大ブームを巻き起こし、そして世界中に広がって行った。シュトーリナが15歳になる頃の時のことである。


 丁度その頃、王太子は「真実の愛」に出会ったらしい。

 悪い男ではないが凡庸で視野が狭い王太子は、目の前の愛しい恋人のことしか見えなくなった。一途と言えば一途である。

 シュトーリナは怒りよりも「いっその事その方と幸せになるとよろしいですわ。早く(わたくし)を解放して下さいませ」と思い、黙って二人を見守った。


 そして、迎えた運命の日。婚約解消の通達を受けたその日の内に、ハウゼン侯爵一家は揃ってダミーダコリャ国を出奔した。


 婚約解消はシュトーリナに落ち度はない。国から断罪されるネタはなかった。つまり出奔する理由もなかったのだが、事前のハウゼン家会議の時に、長年務めている執事のカトーが何気なく言った一言。


 「いよいよの時には、スッポンと出奔(シュッポン)なさるのもよろしゅうございますな」


 この言葉がハウゼン侯爵のツボにはまってしまい、「カトーちゃん面白い」としばらく笑い続けた侯爵が、「よし!出奔するぞ!スッポンと出奔するぞっ!!」と決めてしまったのだ。


 今思えば、シュトーリナが学園のイベント会場で、うっかり王室のナイショ事を余すこと無く暴露してしまったので、出奔は正解だったのかも知れない。


 隠し愛人と隠し子の事が王妃達にバレたダミーダコリャ国王が、真っ青になってハウゼン侯爵邸に秘密騎士団を送った時、既にハウゼン侯爵一家は煙のようにドロンと姿を消していた。


 それから半年程の間、シュトーリナ達は以前から招待を受け事業展開を求められていた様々な国を訪れた。そして、各地でシュトーリナがデザイナーを務める大人気宝飾ブランド「アンダンテ?」の新作発表等も行い話題をさらっていたのだった。 


 この各国での新作発表の場には、必ずダミーダコリャ国の王太子マージス殿下が駆けつけて来た。

 いつも一足遅くシュトーリナ達に会うことは出来なかったが、必死に「シュトーリナ!どこだ!?」と叫ぶ様子と、目についた物をシリーズで注文していく様子が噂になり、「マージス殿下は元婚約者が忘れられないらしい」とか、「大好きブランドの追っかけオシャレ殿下」とニュースになったものだった。 


 これは、婚約解消の書類にサインをもらい忘れたマージス殿下が、本人から了承のサインを貰わない限り愛するアンジェリカと一緒になれない!と思い込んで、必死でサインをもらおうと駆け回っていただけである。

 更に、行く先々で新作を注文していくのは、目に止まった洒落たアクセサリーをアンジェリカにプレゼントしようと思っただけである。 

 性格は悪くはないのだが、少々頭と間の悪いマージス殿下であった。 



 半年間の旅を終えたシュトーリナ達は、2ヶ月ほど前から母ハウゼン侯爵夫人の姉メリッサが嫁入りをしたイケテ=ルジャン国のア・ライチュー公爵家に身を寄せている。


 この国の王弟であるア・ライチュー公爵の庇護のもと、「アンダンテ?」の大きな工房を持ち直営店も設けられた。


 近隣の国にも名を馳せるオシャレ番長、メリッサ・ア・ライチュー公爵夫人と、その妹であるエミリア・ハウゼン侯爵夫人が広告塔となり、「アンダンテ?」の装身具は更にその名を轟かせていた。


 もちろんそれだけはない。ハウゼン侯爵も活躍をしていた。

 元々画期的なアイディアを次々と形にしていく彼が、長年構想を練っていた魔導列車の事を義兄であるア・ライチュー公爵に話し、その話がイケテ=ルジャン国王に伝わり、現在、イケテ=ルジャン国の事業として魔導列車の開発と実用化が進んでいる。

 王命として一大事業が動き始め、ハウゼン侯爵はウキウキだ。 


 そんな侯爵の元に、引退して領地に引きこもっている父、つまりシュトーリナの祖父から頻繁に帰国を促す手紙が来ていた。


 「お前、ダミーダコリャ陛下から手紙が来てるぞ。『バカ息子が迷惑かけててごめん。暴露は全然怒ってないから帰って来て。ハウゼンがいないと国の財政が大変なのねん』と仰っておる。帰って来なさい」と。


 だが、ハウゼン侯爵は「陛下は(文面が)あんまり面白くない」と無視をしている。イケテ=ルジャン国で伯爵位も得られそうだしと帰る気はなさそうである。


 

 さて、イケテ=ルジャン国に落ち着いて2ヶ月が経とうとしていたある日、シュトーリナは公爵に呼ばれ執務室を訪れた。 

 部屋に入るとそこには伯母の公爵夫人とシュトーリナの両親もいた。


 「来たか。ああ、シュトーリナ、今日も美しいね」 


 笑顔でそう言うこの国の王弟であるア・ライチュー公爵にシュトーリナは笑顔で礼をし、心の中で呟く。


 (美しいのは伯父様ですわ。本当に伯父様は美しいこと。ご長男のビナン様を思うと伯父様のお若い頃も想像がつきますわね。このような殿方とご縁を結ぶことが出来て伯母様は幸せだわ)


 そんな事を考えているシュトーリナの両親も美男美女ではある。当然シュトーリナもとても美しい少女だ。だが、この伯父一家の美しさはまた格別。

 ここに身を寄せる事になった際に紹介された、一昨年結婚したというご嫡男夫妻も一対のお人形の様に美しい方々である。


 未だ次男のビショップ様にはお会いしたことはない。第二王子の側近として外遊に同行しているそうだ。

 伯母が言うには「美しさで言ったらあの子が我が家では、いえ、この国でも一番だと思うわ。我が子ながら文武両道に長けた素晴らしい美丈夫なのよ」だそうだ。


 ふむふむ、何事も真打ち登場は後なのね…とシュトーリナは思ったものだ。お会い出来る時が楽しみだわ、と。 


 美しい伯父伯母を見ると創作意欲が湧く。そうだ、今度このお二人の為にお揃いの美しい魔道具を作りましょう。物理攻撃回避と毒無効化は必須だわね。後は何にしましょう…などと思索する。


 シュトーリナは魔力の芽生えが遅かったが、その分力が強かった。魔道具製作も難なくこなし、付与も得意なのだ。 


 そんなシュトーリナに公爵が口を開く。


 「実は陛下から内々の打診があってね、第二王子オウル殿下の妃にシュトーリナをどうかという話が出ているのだよ」


 「まあ、私がでございますか?」 


 「うん。君は私の姪でもあり、既に王妃教育を納めた優秀で美しい令嬢だ。もちろん政治的な事も色々絡むのは君もわかっているだろうが、それよりもね、これまでどんな女性にも興味を示さず、もうすぐ22歳になるのに一向にお相手が決まらない殿下が、シュトーリナに興味を持っているらしいのだよ」 


 「何故でございましょう?第二王子殿下はずっとご不在とのことで、お目にかかった事はないと思いますが…」 


 「実は3日前に外遊からお戻りになったんだよ。その時に君のブランドの装身具を着けていたそうでね、それを見た王太子殿下が『先日そのブランドのデザイナーに会ったんだよ。公には正体は明かされていないけど、頭の良さそうな可愛らしい令嬢だったよ』と仰ったようでね。それで是非会ってみたいと」


 「…伯父様、それは女性として私に会いたいということではなく、好きなブランドの謎のデザイナーに会ってみたいというだけでは…?」 


 「まあ、そうかもしれないが興味を持ったのは事実だ。とにかく、それを知った陛下達が盛り上がってしまってね。二週間後に行われる聖女様のお披露目会でさり気なく紹介させてくれないかというのだよ」


 「聖女様のお披露目会で、ですか…」



 突然だが、この国には異世界からやって来た聖女様がいる。


 1年前のこと、神殿の地下にたまたま力のある神官が集まっていた。「消費期限が切れそうなお神酒の在庫処分会」と称した宴会を行っていたのだ。


 宴もたけなわとなった頃、一人の神官が「あーあ、美しい聖女様でも現れないかなあ」と言った。酔って良い気分になっていた神官達は「呼ぼうぜ!呼んじゃおうぜー!」と盛り上がり、思い思いにおかしな踊りを踊り出した。


 最初は数人だった。

 何やってんだよと笑って見ていた者達が、面白そうだと踊りに加わった。

 やがて全員が輪になって踊りだした。


 みんなで「聖女様っ♪あ、それっ!聖女様っ♪あ、よいしょ!」と歌った。


 楽しかった。


 軽い気持ちでフザケていただけだ。歌って踊って笑いながら、楽しく過ごしていだけなのだ。



 だが…!


 踊りの輪が8周目を回った所で、いきなり神々しい一筋の光が円の中心に降りて来た。あれよあれよと言う間にそれが大きな光の柱となり、そしてその中心に輝きながら驚いた顔をした聖女様が現れたのだ。


 呼ばれた方もビックリだが、呼んだ方もビックリだ。 


 聖女様は黒髪で黒い瞳の、少々平面的な面立ちの方だった。東の国シャボンの民に似ているという噂だ。驚き固まっていた聖女様のお腹がグーと鳴ったので、恐る恐る肴にしていたテンプラソバーンを差し出すと、音を出してすするという完璧なマナーで嬉しそうに召し上がったらしい。


 聖女様は、驚くべき聖なる力で様々な怪我や病を癒し軽減させて下さる。穢れを祓い浄化をもたらす稀有な御方だ。 

 

 その存在は時が来るまで秘すべきであったが、召喚時に慌てて大騒ぎをしてしまった神官達によって、たまたま神殿に来ていた一般の人達にも知れ渡り、王宮に知らせが来る頃には市中に話が広まっていたそうだ。秘すどころではなかった。

 そして当然、そう時間がかからず諸外国にも知られてしまう。


 「聖女が出た」


 世界中を震撼させる大ニュースとなったものだ。 


 シュトーリナにとってもそのニュースは記憶に新しい。そして、今回のお披露目会で聖女様に献上する特別な品を作製しているところでもあった。


 最初はとても動揺して戸惑っていた聖女様も、1年で大分この世界に慣れていた。これまで非公式には知られていた存在だが、ここらでひとつ正式にお披露目をしようという事で二週間後に場が設けられているのだ。



 「わかりました。何れに致しましても、お披露目会では殿下にご挨拶をすることになりますもの。見合いについてはあまり期待はなさらないで頂きたいですが、お話は馬と、いえ、しかと承りましたわ」 


 「そう言ってくれると助かるよ。ありがとう」


 

 それからの二週間、シュトーリナはドレスの最終チェックや、聖女様への献上の品や、お披露目会で会う方々へのアピールともなる新作の製作に励んだ。

 今回は、ただの宝飾装身具ではなく、美しい魔道具の新ブランド発表に向けてのアピールを考えている。


 「美しい伯父様と伯母様への贈り物として作らせて頂きましょう。お二人が身に付けて下されば、この上もない宣伝になりますわ」 


 世界中で展開するシュトーリナのブランド「アンダンテ?」の商品は、沢山の腕の良い職人によって造られている。そして当然ブランドの銘が入っている。


 だが、デザイナーであるシュトーリナ自らが作製した物は、その品質の高さが他とは一線を画していると言われており、銘もシュトーリナの手による事を証明する「トーン・デ・モネ」が入るのだ。これは大変に価値のある物とされている。


 この逸品を求めて様々な立場の人達が謎のデザイナーに連絡を取って来る。それにより、いつしかシュトーリナは、表では知ることの出来ない様々な興味深い情報を知る伝手を得ていた。


 かつての師であったラインハルト師やアマミヤ師は今でも繋がりがあり、時にはハウゼン侯爵家の手の者として動いてくれる事がある。裏で囁かれる噂の真実を突き止めて教えてくれる事も少なくない。

 

 こうしてシュトーリナは、自然に世界の国々の様々な真実を集め知ってしまうのであった。もちろん、この国の秘された真実も。

 


 そして二週間後、お披露目会の日はやって来るのである。






栄養ドリンク剤を飲んでいたら、志村師匠の「あんだって?」という声が降って来ました。そしてシュトーリナの時が流れ始めたのです。


また、頑張ってチェックをしていますが、誤字等ありましたらお知らせ頂けると助かります。

どうぞよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ