最高の物語
神奈川工科大学文芸部部長の鈴木真宏です。
この作品は以前、部活内で開催された批評会で書いたものです。
良ろければ今後の作品の向上のため、感想を書いていただけると幸いです。
粉塵、怒号、砲撃音、悲鳴。嗚呼、なんて素晴らしいんだ。火薬と暴力と欲望が舞い踊る舞踏会。交わり、踊り、狂い、そして消える。春の風も、足元に咲く花も、今この場には、必要ない。
私は女神を見た。あの日、私の女神が姿を現したのだ。ずっとずっと、探し求め、いつかこの手で書き記したいと思った女神が!
嗚呼、嗚呼! これこそが最高のドラマ!
素晴らしく素晴らしい、最高の舞台!
私は今日も書き綴る。
この物語を、再現するために。
***
私は途轍もなく怒っていた。
ええ、ええ、それはそれは途轍もなく。
「先生! 待ってください、ハルジオン先生」
とても耳障りだ。品の無さが声だけで伝わってくる。
「先生……! ああクソ! 待てよ! シャルル・A・ハルジオン!!」
そう言って、声の主は劇場から出た私の肩を掴んだ。その手を払い、私は彼の方へ振り返る。
「嗚呼、体に似合った力ですね、団長。今日は蛮族の役でもしているのでしょうか? 腹の出っ張りと貧相な声がお似合いですよ」
「ふざけないでください! どうして途中で帰るのです。まだ貴方様の演劇の途中なのに」
意図せず、眉間に皺が寄った。彼は天才だ。効率よく、私を怒らせる。
「はあ、あの劇が私のもの、と。仰っている意味が理解できないですね」
「そんな……貴方の要望はすべて呑んだはずです。小道具は全て本物を揃えた! 武器だって鈍じゃ……」
「銃に火薬が入ってませんでした。あれじゃあ鈍も同然です」
「舞台上でぶっ放せと!? 役者に怪我をさせるおつもりですか!」
「別にいいじゃないですか、役者の一人や二人。実際に、何人か火薬を抜く段階で怪我をしてるのですから。と言うか、そこは別にどうでも良いんですよ」
左指のできものをいじる手を止め、私は一番気に入らない事を告げた。
「何故私の書いた話にラブロマンスが混ざってるんです?」
「貴方の話はあまりにも過激すぎる……客を選ぶんですよ」
「へえ。で、万人受けする若者の恋物語を私の物語に混ぜたと」
私は彼の膨れた腹を蹴る。我ながら行儀がよくはないと思ったが、これは正当な抗議であると、私は声を上げて主張しようではないか。
「美しくないんですよ。私は、私が書いたあの物語が良いのです。飛び交う暴力の中で、弾ける命。その中で懸命に生きようと足掻く兵士の遠吠え。その中に、愛情は不要です」
「……貴方の作品は、人に見せるものじゃないんですよ。自分の好きな物だけ書いて、登場人物と物語だけを投げるだけなのにも関わらず、演出にあれをしろこれをしろ、私が描いたものはこんなではないと文句ばかりつける……腕のいい劇作家と聞いていたのに、もうこんなの、うんざりだ」
そう言うと、以前渡した私の原稿を、地面に叩き付けた。
「狂人の自慰には付き合ってられない」
彼は私の原稿を踏みにじってから、劇場へと戻って行った。
私は踏みにじられた原稿を拾い上げ、軽くついた埃を払った。可哀想に。彼と、彼を蹴った私にぐちゃぐちゃにされて。私の事も蹴ってやりたいが、生憎私の膝は天に足を向けられない。
「私も、腕のよい劇団だと聞いていたから、物語を託したのに」
まあ、こんな道端で立ち往生していても仕方がない。残念だよ、とだけ吐き捨て、劇場前を後にした。
帰ろうじゃないか。妻が待つ我が家へ。
***
常々思う。
私の物語は何故、受け入れられる事がないのか、と。
周りを見渡せば、出るわ出るわ有象無象で在り来たりな物語。万人受けする、技術の塊。多くの人を魅了する悪魔のような物語。
貴族と平民の愛。全てを奪われた男の復讐。悪魔に誑かされる男。素晴らしいとも。称賛に値するものばかりだ。
それで、だからどうした。震えるような心も、滾る血潮も、高鳴る鼓動も、全てが足りない。人を楽しませるだけに書かれた物語は、私の口には合わない。私の瞳に、色を届けてはくれないのだ。
私は、私の書いた物語を超える物語に未だ出会った事がない。他者に望めないのならば、私が書き綴るしかない。
私が求めるのは、あの団長が言った通り、自慰の道具でしかない。だからこそ、欲しいのだ。私を感動させる溢れんばかりドラマが、心を震わせる彩りが、包み込む愛情を私に伝える女神が。
その女神は、物語なのか、風景なのか、人間なのか、今の私にはわからないが、様々な場所を巡っていれば、きっと巡り合えるはずだ。
今、生きていることを実感させる、そんな女神を私は書き、満たされたい。
我が家の戸をくぐると、台所で料理をしていた牛がその手をとめる。
「お帰りなさい」
「……肉の臭いがする」
牛と言うのは、ただの比喩だ。いいや、比喩ではないのかもしれない。少なくても、私の目には、私の妻は、鉄板の上で同族に熱を通している愚かな家畜にしか見えない。
私が自分の荷物を定位置に置くと、牛は水の入ったコップを食卓の上に置いてから、私に話しかける。
「ごめんなさい。もう少し帰るのが遅くなると思って、自分の分だけ焼いていたの。匂いは残らないようにするから」
「当然です。私のコートに移ったどうするんですか。それに、肉なんて食べているから、ふくよかを倍にしたかのような体型になるのですし、体臭がきついのです。獣と同じですよ」
「お野菜と併せて食べているのですが。それに、獣と同じ臭いがするのは、私だけではなく、他の方も同じでしょう」
「当然です。皆さん、品がないのですよ」
換気のために窓を開けて、少しわざとらしく、外に向かって手で扇いで見せた。その姿を見て、私の妻である牛のマリアが肩を落とす。
「その調子だと、また劇団の方に怒られたのですね」
「怒られたんじゃない。私から見限ったのです。これだから学のない人は」
「どちらも同じでしょう。残念でしたね」
料理の続きに戻ろうとしたマリアの一言が、私の怒りの導火線に火をつけた。
「残念? 何を以て残念だと思ったんです」
「だって、そうでしょう? 舞台は劇作家だけでは成り立たない。貴方は協力者をまた怒らせて、これでまた一つ貴方に協力してくれる劇団が減った」
「無知の分際で、わかったように口を利かないでください。ピーチクパーチク鳴く文鳥のようで見苦しいです」
「……悲しかったり、怒っているのであれば、正直に話してくださればよろしいのに。そうすれば、私だって変な意地を張らずに貴方を慰められるのに」
導火線を伝っていた火が、とうとう私の火薬を爆ぜさせた。飛び散った火は、私の体中を駆け巡り、血という血を沸騰させる。
自分でも愚かだとは思うが、今日の私はどうやら傷心のようだ。そうでもなければ、私と結婚するまで世の中を知らなかった元娼婦の牛に怒りを抱くなんて笑止千万である。
「嗚呼、そうですか。貴女の中では、夫婦とはお互いの苦労を互いに理解しあい、時に寄りかかり、時に支えるものだと、そう仰りたいと」
「ええ。それが私の望む理想の夫婦像ですわ」
「そうでしょうね。しかし、私はそんなこと、全く望んでおりません」
私の言葉に、牛はぐっと口を閉ざした。しかし、そのまま口をつぐんだままでは困ると思い、私は牛に問う。
「私は、貴女と婚約する時に幾つか条件を提示したはずですよね。それを忘れたとは言わせません」
「ええ。いくら、私が家畜のような脳をしていたとしても、覚えておりますとも」
「それなら、理想の夫婦像なんて捨ててください。私は貴女に屋根と食料品を与える。貴女はそれを調理し、私の帰りを黙って待つ。私の執筆の邪魔をしない。そして、私が求めている女神様を探す事を理解し、妨げない。私が望むのはそれだけです。それ以上は求めません。寧ろ、今貴女がしていることはそれ以下だと心得なさい」
「わかっておりますとも、シャルル様。ですけれども、私はどうしても、諦め切れないのです」
そう言って、牛は私の手を取る。
「私を、孤児院で育ち、院を出てすぐに娼館に身を置くことになってしまった世間知らずの私を、手を引いて連れ出してくださった貴方様と、私は親しくなりたいのであります」
顔を赤々と染める彼女に、私は嫌悪感を抱いた。あからさまな態度を取る私を余所に、牛は続ける。
「貴方が、貴方を満たしてくれる女神様を探し求めているのは承知でございます。しかし、その求める場所を、世界中ではなく、私にしてはいただけないでしょうか? 私に求めていただければ、私は努力いたします。空を飛べと言われれば鳥になりましょう。海を割れと言われれば何千と言われる修行をこなしましょう。だから……」
「貴女は一体何様のおつもりですか?」
私は牛の手をしっかりと握りしめ、真っ直ぐに牛を見た。
「何度も申し上げている通り、貴女は本来、私の物語の中で名前も要らない脇役なのです。それが、そんな惨めな牛が、私の女神に成り代わる? 冗談も休み休みおしゃってください。できるのであれば、冗談を言うことをおやめください」
まるで、自分が人間だとでも錯覚しているのか、一丁前に傷ついたという表情を浮かべる牛の手を放し、更なる杭を刺す。
「貴女が私に執心なのは承知です。私は魅力的な男性なので。だから貴女を選んだんです。孤児院育ちで帰る場所がない貴女は、私以外に行く当てがない。だから貴女なのです。私は都合のよい妻を放すつもりはありませんが、他を当たりたければ、どうぞ、ご勝手に」
放心で立ち尽くしていた牛は、とうとう足に力が入らなくなったのか、砂の城の如く崩れ落ちた。この程度の事実を言われた程度で一丁前に落ち込むなど、贅沢なものだ。
部屋の中は心地よい風が運ぶ草木の匂いでいっぱいになった。窓から流れ込む風に身を委ねるように、窓際にある椅子に腰かけた。ここではない、何処か遠くを眺めて、私は想像をする。
戦争の胎動は女神の産声。人の熱気は女神の血液。火薬の匂いは女神の吐息。大地と空は女神の恵み。もっと、もっと、私の愛おしい女神を感じたい。
次の旅路を決めて、私は牛の作った無駄に美味しい食事に舌鼓を打った。
***
私は、初めて自分の家を長く開けた。今まで長くても一週間で家に戻ってきていたが、今回は違う。
海を跨いだ異国に一ヶ月。現地取材と言う名目で紛争地を訪れる。
この一ヶ月間、散々な思いをした。紛争地では女神は見つからず、自分の部屋でないと集中して執筆をすることもままならない。仕方なしで書いた脚本は、どの劇団にも読まれるどころか、受け取りすらしない。
どいつもこいつも、私を馬鹿にしている。私を軽視しすぎている。
いらつきが私の脳を支配する。やはり長い間なれない場所にいるのは良くない。やはり自分の家でないと。
街の外れに建てた私の家は、都会の喧騒を忘れさせるかのように風が語りかけてくる。小鳥の歌を聞いていると、遠くから捕食者の宣戦布告の声がそれを遮る。それは決して目障りなものではなく、この地の在り方を私に教えているのだ。静かに執筆をしていると、妻の作ったスープの香りが私の集中をそぐのだ。そぎ落とされた集中は、スープの隠し味となり、私の口を通じてあるべき場所へ戻ってくる。
そんな、いつも変わらない日常を脳裏に巡らせ、私は家の戸を開けた。
変わらない日常のはずだった。私の日常が、たった一枚の紙切れのせいで崩れるなんて、誰が予想するだろうか。
『拝啓、シャルル様。私の身勝手な行為をどうかお許しください。私は、もうその家で暮らすことはありません。契約違反だと言う事はわかっておりますが、どうしても、私には耐えられなかったのです。私の弱い心をお許しください。どうか、貴方様に、私以上に良い女性と巡り会えますよう、祈っております』
嗚呼、家畜が一丁前に文字など書いて、何様なのだと。
置手紙を見た瞬間に、その言葉が私の頭に浮かんだ。何が起こっているのか、恥ずかしながら理解できていなかったのだ。
つまりこれは、彼女からの、離婚宣告だ。
ふざけるな。ふざけるな! お前に行く場所なんてないだろう。私だけのはずだろう! 衣食住に不自由はさせなかった。小遣いだって渡して、決して外出を禁じているわけではなかったはずだ。
そんな、素晴らしい夫である私から遠ざかるなんて、何を考えているんだあの牛は!
あいつがいなければ、私はどうしたらいい。料理も掃除も洗濯も、私は一度もやったことがない。私が落ちついて執筆をするためには、あいつが必要なのに!
しばらく騒いだ私は、何も満たされなかった。腹がすいた。持ち帰った私の荷物を整理するのは誰がやるのだ。
荒み、誰が片すことのない部屋に、私の咆哮だけが絶え間なく散らばるだけだった。
***
一週間と半日がすぎた。 眩しい日の出が私を嘲り、昨日も牛が帰って来ないことを知らせた。
一向に膨れない腹と、清潔感の全くない体が、自分がどれだけ惨めか知らしめる。
そんな中、今までに抱いたことのない感情が私の中に溢れる。
彼女に会いたい。
次の瞬間、誰も開けるはずがない家の戸が開き、光が濁流の如く流れ込んできた。毛布で光から身を守っていた私だったが、流れ込んできた光はあっという間に私を飲み込み、危うく溺れかける。
自分の身に何が起きているか確かめるため、私は戸の方に目を向けた。
さながら、海を割るモーセのように、そこに佇んでいた。
私の世界に色がつく。赤は赤と、黄は黄だと私の頭に流れ込む。全てが色づき、私に何かを語りかけてくる。物が動き出すのだ。家の壁は彼女の帰りを喜び歌い、水瓶はそれに続く。壁にかかった服たちは踊りだし、そして私は、女神を見た。
私の前へと歩み寄る女神は、朝日を携えていた。今まで着ていた牛の皮は地面へと剝がれ落ち、美しい御姿を空気に晒すのだ。
「シャルル様、こんなにお痩せになって……」
そう言って、女神は私の頬に手を触れ、そして悲哀の表情を浮かべた。何とも慈悲深く、何とも愛おしい。
「私が家を出てしまい、悲しんでいただけたのですか? しかし、それは嬉しい反面、とても心苦しゅうございます。私のせいで、こんなになってしまわれて……」
私は女神の手を取った。
「……嗚呼、愚かな私を、どうか、許してください」
「シャルル様、貴方様は何も悪くはないのでございます。私が耐えられないのがいけなかったのです」
「嗚呼、嗚呼……何とも慈悲深い……やはり貴女は、私の女神でした……」
女神は初めて見る私の涙に困惑しているようだった。それも仕方ない、いつも涙を見せていたのは、彼女の方だ。
「お許しください、お許しください女神。まさか、貴女が私の全てを彩る女神だとは思わなかったのです。いや、気づかなかった私の責任でございます。罰を受けさせてください。貴女様のその美しい手で、私に罰を与えてくださいまし……」
「シャルル様、一体何を仰っているのですか……」
女神は困惑している。何故だろうか。女神ならば罪人に罰を与えるのは普通である。
嗚呼そうか。今までの私の仕打ちから、きっと彼女は遠慮をしているのだ。ならば、恐縮だが私から促して差し上げなければ。
私は女神に自分の首を握らせ、微笑む。
「さあ、一思いに絞めてください」
「何を仰っているのですか。私はそんなことしたくありません」
「そんな事仰らないでください……私は貴女様に惨いことをした。その罰を受けるべきなのです! さあ、貴女様の手で私の世界に彩りをください! さあ、さあ!」
私がそう言うと、女神は私から、一歩、二歩と距離を取る。かなり怯えた表情をしている。まるで、悪魔でも見るかのように。
「どうして、どうしてそんな顔をするのですか、女神様……」
「やめてください! どうして……私は、今まで通り過ごしたかったのに……」
「気付いたのですよ。今まで私をそばで支えてくれた貴女こそが私の女神なのだと! 気付けなかった私が愚かだった! さあ、その手で私に罰を与え、そして貴女様のお望みの私になりましょう。共に支え合い、愛し混じり合う、そんな、貴女様の望んでいた夫婦に!」
「やめて!」
彼女は、耳を塞ぎ、それだけ叫んだ。
女神は震えていた。朝露の寒さ故か、はたまた何かを恐れているのか、彼女は涙を浮かべて、私から目を背けている。
しばらくして、彼女は口を開いた。
「……今まで通り暮らせると思った私が愚かでした……貴方は、もう以前の貴方ではないのですね」
そう言うと、彼女は私を見つめた。軽蔑の意を込めた瞳で。
「気色悪い」
そう言って、彼女は家を飛び出していった。
嗚呼、また彼女を失ってしまった。私は、最も大切にすべき人を失った。
……いいや、違う。これこそが彼女から与えられた罰なのだ! 彼女は私が一人では何もできないことを知っていた。だからこそ、今、私を突き放したのだ! 嗚呼、嗚呼! 何とも慈悲深いんだ!
今なら書ける。最高の物語が。
私は机の上にある邪魔なものを全て床に叩き落とし、紙に物語を書き綴った。私は女神に触れた。色がついた私の物語は、今までにないほどのできだった。
もっと、もっと、この色のついた世界を見てみたい。そう思った私は、家を飛び出した。
***
粉塵、怒号、砲撃音、悲鳴。嗚呼、なんて素晴らしいんだ。火薬と暴力と欲望が舞い踊る舞踏会。交わり、踊り、狂い、そして消える。春の風も、足元に咲く花も、今この場には、必要ない。
兵士の頭に咲いた赤い大輪が佳境を迎えたオーケストラを彩る。足音のコントラバスに、怒号のヴァイオリン。銃声のティンパニに悲鳴のトランペット……。
そして、戦場の中心に立ち踊る私の手には、タクトの代わりに万年筆が握られている。
普段と変わらないはずの戦場が、こうも素晴らしく感じるなんて! 私は女神のおかげでどん底を経験し、そして今、物語は最高潮を迎えている。
最高の物語を書きたかった。それを読み、満たされたかった。そして今、その望みが叶えられようとしている。
風が戦の背中を押し、花が泣き、太陽は戦況を見極め、月は怯えて出てくることやめた。人々は怒り、哀しみ、そして笑う。色とりどりの景色が、私の心を満たす。
そして物語は、終わりを迎えようとしている。
私の肩を貫いた銃弾の笑い声が聞こえる。
私に標準を絞った兵士が、オーケストラのフィナーレを飾る!
「見ろ! 私が、私こそが、最高傑作だ!」
フィナーレのシンバルが鳴り響く。楽器の音は遠ざかり、私は壇を降り、観客に向かって、最高の敬意を示すために礼をしよう。
私が礼をした瞬間、私の物語に幕が下りた。