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無生物テイマーは家電が好きなのです  作者: はむにゃん
第2章 仙台のビルでイベントするよ
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回数と回数

 依里亜が唱える。


「【テイムⅢ】」


 テイムしている家電とのスキル共有。


「【押し潰し】」


 以蔵のスキル。【狙った敵の真上にワープしたあと、落下し押し潰す】


「からの【巨大化】」


 同じく以蔵のスキル。依里亜の身体が『鉄の兵隊』の上空にワープしたあと落下しながら巨大化する。


 一瞬遅れて以蔵も同じスキルを発動。


 金属が砕けて曲がる(いびつ)な音が響く。2体の巨体が兵隊たちの攻撃前に押し潰す。しかし、『鉄の兵隊』たちの全てではない。


「【テイムⅡ】」


【自分より()()()無生物を一定時間テイムすることができる】


『鉄の兵隊』は【巨大化】した依里亜よりは()()()


 お互いに戦い数を減らしていく兵隊。中にはブラフに攻撃を始めるのもいる。攻撃が当たった兵隊もその瞬間に連鎖しテイムされていく。


 そして、金属には【サンダー】が効果的だ。ブンジがまるで『雷神』のように雷を落としまくる。


 味方にしてもいいが、依里亜はただ勝つことだけを考えている訳ではなかった。自らの手で倒すと決めていた。だから兵隊なんてどうでもよかった。排除できればいい。


 巨大化したままブラフを蹴り飛ばした。物凄い勢いで壁に叩きつけられるブラフ。HPの3分の1が吹き飛ぶ。


「やられた」


【嘘つき】スキル発動、をしたつもりだった。


 回復しない。慌てるブラフ。しかし、次の詠唱までには3分かかる。戦いの中でクールタイムの存在にそろそろ気づき始めた依里亜は、確認のために攻撃をやめ様子見をした。


【巨大化】も解除し、『卵』となった『火の鳥』を回収し、以蔵の【アイテムボックス】にしまう。


 兵隊たちは勝手に戦い、数を減らしている。


 依里亜は、ブラフから視線を逸らさずテイム家電たちに()()()()()()()()


「あら? クソブラフとか言ったっけ、おまえ。もう回復できないの? マジでクソすぎる。ほんとにラスボスかよ」


 できるだけクールに言おうとしたが、怒りが先行して言葉が汚くなった。


「ちっ、おまえまたなんかやりやがったな」


「おまえさ、はっきり言ってやるよ。卑怯なだけで中ボスたちより弱いよ。そして戦っててクソつまんねえ」


 3分が経った。


「回復しない」


【嘘つき】スキル。発動せず。


「なにやったんだよ、おまえ! 依里亜! 」


「これだよ」


 依里亜はあるものをブラフに見せた。


 ()()()()()()だ。


「窓際に落ちてたよ。おまえには『impossible(インポッシブル)』を使った。効果があるのは実証済みだったからな」


「なぜ、使えるんだ……ああ、テイムか」


「もちろんそう。拾ったのは2枚だけだが『S』と『C』だったから、かつて朔太が使った『Self(セルフ) Copy(コピー)』で増やした。いま手元には【ダブル】の分含めて52枚全てがある。そして、いくら使ってもまた枚数は戻る』


「……本人以上の能力じゃねえか」


「さらに言うなら、【テイムⅢ】で、家電たち全員も私の【テイムⅡ】を共有したから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


【テイムⅢ】はスキル共有。依里亜のスキルを家電たちも使える。【テイムⅡ】は自分より小さいものをテイム。カードはどの家電よりも小さい。


 朔太はカッコつけてカードを1枚ずつ出していたが、全て出しておくのがありなのは本人も言っていたこと。


「……」


 ブラフは黙るしかなかった。




「『Repair(リペア)』」


 依里亜が静かに唱えると、家電たちの破損箇所が全て元通りになった。


「グダグダする気はない。1秒でも早くお前を倒す。みんなそれぞれカード使って」


「『Attack(アタック)』」


 全員の攻撃力が限界まであがる。


 レビ『『Explosion(エクスプロージョン)』』


 不発。


 ブンジ『『エアカッター』』


 不発。


 マイカ『『Protect(プロテクト)』』


 全員の防御力が限界まであがる。


 以蔵『バタン』


 何かが起こったか、わからなかった。が、全員の体から光を発する。


 今度は依里亜が慌てる番だった。発動するスキルとしないスキル。バフは入ったものの、誰も攻撃できていない。結果的にブラフにダメージは1ミリも入らない。



「お、なんだ? カード持ってるのにまた肉弾戦か? おれは何もしてないぞ。はははは」


 起き上がるブラフ。攻守が再び逆転する。隙を与えてしまった。封じたのは【嘘つき】だけだ。


「どうやらその【テイムⅢ】とやらは5()()のみしか使えないようだな」


 ブラフは自分のステータス画面から運営のコントロールパネルにアクセスし、依里亜のスキルを覗き見していた。そして書いてあることをそのまま読んだ。


 ブラフは、また金属の塊をばら撒き始めた。今度に宙に浮かび高速で飛び回る武装した飛行物に変形していく。



 依里亜は考えていた。いまの戦いで使った家電のスキルは【表示】【巨大化】【押し潰し】の3つ。だから、マイカと以蔵しか【テイムⅡ】を発動できなかった? それで5回分がおわり? ほんとに? なにか見落としてない?


「依里亜さん、5回ってみんなで5回じゃないですよ」


「え、やっぱり? 」


『鉄の空軍』が変形を終わろうとしている。


「だって、最初にスキルをとった時を思い出してください。依里亜さんは【フリーズレーザー】と【サンダー】しか使ってないけど、そのあと僕たち4人は【クイック】も【ファイア】も()()()使ってますもん。【テイムⅢ】で共有できるスキルは、1()()5()()です」


「あ、そうか! わかった。んじゃ、カードが使えなかったことは一旦おいといて、まずこの飛行隊やっつけないとね。私はあと2回誰かのスキルを使える、と」


「いや、依里亜さんそれも違うと思う」


「え? 」


「いや、だって【テイムⅢ】でスキル共有してるでしょ? その間に僕が【テイムⅢ】を()()()使()()()()? 」


「あ! 」


「そう、『使える対象』は僕ら家電たちのスキルだけど、みんなが順番に【テイムⅢ】をかけ続ければ、依里亜さんが使えるスキルは()()()2()5()()だと思うよ」


「OK! それだけあれば十分。あ、あと、以蔵の掛けたスキルだけ確認しておいて」


 迷いの晴れた依里亜は、【巨大化】をし飛行隊を【押し潰し】たあと、【フリーズレーザー】【サンダー】【ライトビーム】と家電たちのスキルを存分に撒き散らしたあと、再びブラフを蹴り飛ばした。



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