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無生物テイマーは家電が好きなのです  作者: はむにゃん
第2章 仙台のビルでイベントするよ
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長期戦と反発

「おい、おまえ」


 依里亜がゆっくりと立ち上がると、ブラフに近寄る。キレている時の依里亜だ。


 ブラフが剣を振るが当たらない。依里亜は圧倒的すぎるスピードでかわす。何度も剣を振るが、依里亜はレイピアも使わず素手で剣の軌道を変える。


 依里亜の本気の動体視力と最高速度ではほとんどの剣の動きは止まっているようなものだ。


 何度目かのやり取りで剣を弾いたあと、持ち手に蹴りをぶち込み剣を吹っ飛ばした。


 依里亜がブラフの胸ぐらを掴む。


「何やったかわかってんのか」


「単なるゲームだろ。朔太だってイベントなんだから死なねーよ」


「そういうこと言ってんじゃねえよ」


「お前だって、ゲーム内で他のモンスター殺さなきゃレベルだってあがらないだろうが。元々殺さねえと何にもできないゲームなんだよ」


「自分が罪深い存在だなんて今更言われなくたってわかってるよ。そりゃ、もの食べて生きること自体がそうだろうが」


「だから?」


「あくまで気持ちの問題だって言ってんの。たとえ本当に死なないとしても、目の前で恋人が殺されていい気がするかって言ってんだよ。ゲームのシステムと、殺し方は全く別物だろうが。さっきのはブラフ、おまえの個人的な判断でやったことだろうが!」


「そうだな。だったら? どうする? 殺す? どうやって? ダメージも入らないのに? あはははは」


 胸ぐらを掴んでいた腕を押し出す。ブラフがひっくり返る。手を後ろについて上半身だけ起こす。


「まあ、やれてせいぜいそのくらいだろうよ。あはははは」



「おまえ、まだダメージ入らないと思ってんのか? 」


 依里亜がレイピアを抜き、ブラフの左肩に刺す。簡単に貫通しHPが減った。


「ちっ、もうバレたか」


 ブラフも痛みは感じないのか。痩せ我慢か。


「そうだよ。パーティなんてとっくに()()してんだよ! それでお前の企みなんてチャラだろ。何が7人目だ」



 依里亜はステータス画面を出せないが、起き上がった時にレビに指示を出していた。レビの画面はまだ割れたままだが、自分で自分のステータス画面を見るのには支障がない。


 パーティのマスターは依里亜ではない。ステータス画面の表示できるレビだ。解散する権限を持つのもまたレビだ。



「運営側のインチキっぽいことすると、大抵まともに考えられなくてパニックになるんだけどな」


「知るか」


 依里亜はブラフの顔面に回し蹴りを食らわせた。3回転くらいしながら吹っ飛ぶブラフ。


 家電たちも援護に入り、攻撃を叩き込む。


「わかったのは、おまえが飛んでもないクソで、倒すべきやつってことだけだ」



 HPがある程度減ったところで、ブラフが何かを呟くと全回復する。キリがない。実際にはスキルのクールタイムは3分なのでその時間内にHPを削り切ればいいのだが、そんなことは依里亜たちは知らない。


 スキルはMPを使わないものもあるが、攻撃系や回復系は大抵MPを消費する。戦況によっては相手の物資が尽きるのを待つ長期戦狙いもなくはない。


 もちろん、マナポーションのストックも大量にある。しかし、相手の限界が見えないのに使い続けるのはあまりに無策だ。特に今回の相手のスキルはダメージをなかったことにし、全回復するものだ。スキルを封じる手立てが優先される。


 ラスボスであっても、HPもMPも量は設定されている。限界がある。スキルにMPも消費する。当然長期戦になれば、攻撃にも回復にも使うMPの最大量や供給がものを言う。


 我慢比べをするか、パターンを変えるか、はお互い同じ状況だ。


 攻撃を受け続けていたブラフが今度は攻撃に回る。


「おまえら()()()()()()


「しまった! 」


【嘘つき】スキル。


 ガクッと依里亜たちのスピードが落ちる。


 このスキルは3分に一回しか唱えられない。そして、回復については自分にかけるため100%発動するが、相手にかける場合、色々な要素が絡み発動しきらないことがままある。


 それを十分に知っているブラフは言葉を選ぶ。慎重に選んで唱える。そうしなければ、3分間何もできないことになるからだ。完全に動きを止めるのではなく、スピードを落とすだけでも十分に効果的だと判断をした。


 ブラフは1番近くにいた『火の鳥』に近寄ると一瞬で首を切り落とした。炎を上げ『卵』になる火の鳥。


 続けて依里亜を切るためにブラフが素早く距離を詰めた。


 が、剣を振る瞬間に依里亜が後ろにかつてないスピードで弾け飛ぶ。剣は当たっていないが、依里亜も転がる。切られたのではなく、スキルでもない。


 ブラフも依里亜も何が起こったかわからない顔をしている。


 ブンジの【磁力】スキル。前もって触れていれば後からでも発動できた。ブンジは先程【カウントダウン】の時にブラフに触れていた。


 同じ『N極』同士になった2人は距離を詰めても接することはない。


 そんなことは知らないブラフが、レビに詰め寄るが同じ。反発し届かない。


 本人の「すばやさ」のステータスではなく、スキルによるものと認識できなければ、無効化することはできない。


 ブンジの【磁力】スキルは切り替えが可能だ。永続的に同じ『極』ではない。時には『N極』から『S極』へ。時には『オフ』に。


 ブンジは集中し、お互いの距離を判断し、引き寄せ、反発させ、アクロバティックとも言える連続攻撃を可能にした。


 ブラフのHPが削れる。戦局からみて次の段階にいくだろうと思った。


 ブラフの全身が鎧に包まれる。ダメージ軽減。スピードは落ちない。そして接近戦からの離脱。ブラフの周囲に複数の魔法陣が現れる。【嘘つき】スキル以外にも攻撃手段はまだまだある、とばかりに攻撃魔法を連発する。


 無属性ダメージ魔法【マジックミサイル】


 弱点属性をつくのではない代わりに、どの耐性持ちにも一定のダメージを与える。そして、数が多く速い。着弾すると爆発もするため、全てをかわすのは無理だった。派手さはないが確実にHPを削る攻撃。


 あちこちで大爆発を起こし、依里亜も吹っ飛び倒れ込む。ダメージを受け転がりながら()()()()()()()()()


 続けてブラフは、何体もの金属の塊を出した。それらは、出現すると同時に人型に変形した。身体中至る所に武装しているのが見えた。


『鉄の兵隊』


 ブラフは直接戦うのを一旦やめ、1歩引いた状態で戦局をコントロールしようとした。


 大きさ的には依里亜より大きく【テイムⅡ】は使えない。ブンジが【磁力】を使うには全員に触れなければならない。


 部屋の半分をも埋めつくした『鉄の兵隊』は整列し、身体中の武器を依里亜たちに向けた。



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