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無生物テイマーは家電が好きなのです  作者: はむにゃん
第2章 仙台のビルでイベントするよ
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正座と阻害

 ブラフは部屋の中を見回した。剣は構えたままだ。


【嘘つき】スキルの弱点は、『認識できたものに対してのみしか使えない』ことと『1度発動すると3分間のクールタイムが必要』なこと。


 どうやって姿を消したかわからない限り、それが【スキル】だとはわかってはいても、取り消せない。


 3分、5分、待ってみた。依里亜たちの姿は見えないまま。


「まさか、逃げたってことはないよな? ドアは開かないはずだし……。あ、割れた窓からか……」


 窓まで近づき、下を見下ろして見るが、壁に掴まっていたり落ちたりはしていない。


「そのうち現れるか」


 と、ブラフは受付の机までいき、煙草をくわえようとした瞬間大きく弾き飛ばされた。


 まるで()()()()()()()かのように。


 実際に【カメレオン】で見えなくなっていたマイカにはねられたのだが。


 メンバー全員はマイカに乗り込んでいた。


 はね飛ばされダメージを負いながらも転がった勢いを利用して立ち上がったところに更にもう1回突っ込まれた。


 姿が見えないだけでなく音も聞こえない。魔法でも来れば発射されたところから位置を割り出すことはできたが、あくまではね飛ばしの攻撃に終始されると打つ手がない。


 さすがにHPが減る。現状で【嘘つき】を使うと、クールタイムの3分を避けきれないとまずい。今は使えない。


 ブラフは『ハイポーション』を出して回復することにし、飲もうとした瞬間に右手が肘の下から吹き飛んだ。【カウントダウン】だ。はねられたついでに触れられていた。


 クールタイムなど気にしてられないと【嘘つき】を使う瞬間に狙われた。舌が凍りつく。【斬れちゃう冷凍】を食らう。しゃべれないとスキルは発動できない。そして、冷凍の範囲が広がる。


 ブラフは、自分の剣で舌を切り落とした。


 言葉はなんとか出た。が、スキルは発動しなかった。


 朔太が『impossible(インポッシブル)』を唱えていた。少なくとも朔太が解除するまで【嘘つき】スキルは使えなくなった。スキルが効くかは一か八かではあったがハマった。【ダウト】だと一回きりになるので、可能性を信じカードにした。


 かろうじて左手で『ハイポーション』を飲む。時間はかかるが、舌も回復するはず。


 ブラフは剣を投げ捨てた。そして、正座し土下座を始めた。『負けました』ということか。でも、嘘の可能性も半々。いや、たぶん嘘。でも何ができるか。


 依里亜の指示でマイカが【カメレオン】を解除する。いつでも全員が攻撃出来る状態で近づいていく。


「これはどういうこと? 降参てこと? 」


「……」


 ブラフは自分の口を指さし、『しゃべれない』というジェスチャーを続ける。


「どっちにしろ、俺のカードスキルが掛かっているので、なかったことにするスキルは使えないと思うけど」


「何言ってるかわかんないから、舌だけ治しな。自分で早く」


 依里亜がブラフの剣を遠くに蹴り、レイピアを突きつける。


 数分待った。


「あー、あー。な、なんかやたら強いね。あ、あ、会った時は、まだ初心者だった、のに」


 まだ喋りにくそうではある。


「で、なに? 降参するの? 」


「いや、するわけないでしょ。ラ、ラスボスだよ? 」


 全員が飛び退く。


「こいつやっちまおう」


 朔太が言うが、武器も持たず正座している人型の敵をやれるか、という問題だ。


 家電たちがグッと前に出た。


「あー、家電たちならそういう遠慮はしないかもね」


 以蔵、ブンジ、マイカが攻撃を仕掛けた。見る見るHPが減っていく。


 しかし、残り1割を切ったところで急に全くHPが減らなくなった。ブラフは何も言っていないし、なにかスキルを使ったようには見えなかった。


「ちょっと時間は掛かったけど、やっと右手が戻ったよ」


 というとブラフは立ち上がった。家電たちの攻撃を浴びながら平然と歩いている。剣を拾う。家電たちも攻撃をやめた。ブラフは攻撃は食らいながらもただ右手が回復するのを待っていただけだった。


「どういうこと……」


 依里亜は独り言を呟いた。


 ブラフはゆっくりと依里亜に近づき、左手を肩に置いてこういった。



()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 そうして、依里亜の腹に深々と剣を突き刺した。


 倒れ込む依里亜。


 ブラフは次に朔太に向かう。朔太は『アイスソード』で切りかかるが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 しかし、次にブラフが朔太を攻撃すると、その剣は朔太の腹に吸い込まれるように入っていった。


「もう嘘は言わないさ。言わなくてもいいし。信じるのも信じないのも自由だけど。俺は君らの7()()()のパーティメンバーになった。運営側だからルールなんてないんだよ。ああ、攻撃の瞬間だけパーティを抜けているんだ。ほんとに瞬間的に」


 痛みはないが傷が深くて依里亜も朔太も動けない。体に力が入らない。


「君らのパーティ全体にかかるバフは全部俺にも入る。そしてダメージは入らない。が、俺の攻撃は君らは食らう。さあ、どうやって勝つ? 」


 ブラフは朔太を見下ろす。


「それでね、このカードスキルとかなんとかで【嘘つき】スキルを阻害されるのはすごく腹が立つんだよね」


 ブラフは朔太の髪の毛を掴んで持ち上げる。


「待って、ブラフ! ダメ! 」


 依里亜が叫ぶ。


「だからよ」


「やめて! お願い! 」


「朔太くんはサヨナラね」


 ブラフが剣を朔太の心臓に突き刺す。その勢いで、朔太が割れた窓の方に吹っ飛ぶ。


「い、依里亜! 」


「朔太!!!! 」


 マイカが追いかけるが間に合わなかった。何枚かのカードを撒き散らしながら、朔太が窓から落下していった。



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