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無生物テイマーは家電が好きなのです  作者: はむにゃん
第2章 仙台のビルでイベントするよ
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フェイントと嘘つき

 声を掛けてき人は見たことのある顔だった。


「久しぶりですね。ブラフです」


 というと、ブラフは煙草に火をつけた。


「あー、あのチュートリアルの時の人じゃん。つか、室内禁煙じゃないの? ケホケホ」


「まあ、固いこと言わないでよ。前も言った通り、ゲーム内に来た時しか吸えないんよ」


 ドアから入ってすぐの所に『受付』と書いてある机と椅子があり、机の上の灰皿には吸殻が既に山盛りにやっている。


「いやー、この部屋いても、ほっとんど誰も来ないし暇でさ。で、しかも煙草も吸えるっつーね。最高だよ」


「あなた何やってるの受付? ラスボスに受付とかある? 」


「そうそう。受付。一応運営の人だからさ。最後の戦いを見届けようと思ってさ」


「前の部屋の『子犬』と『子猫』って、なんなのよ」


「あーそれね。選んだのは『猫』だよね? んじゃこれ」


 というとブラフは机の下から猫の顔をデフォルメしたような帽子を出した。


「これを被るとね、『猫的なスキル』が使えるようになるのよ」


「あら、それは便利ね。どんなスキルかわからないけど」


「あ、じゃ試してみよっか」


 というとブラフが猫帽子を被った。




「依里亜さがれ! 」


 朔太が叫ぶ。その瞬間ブラフが『猫パンチ』と言うと、朔太の左腕の肩から下が吹き飛んだ。


「……なっ……! 」


 全員が下がり依里亜もレイピアを抜き構える。一気に戦闘モードに突入。


「な、何すんのよ! 」


「え? だから試してみただけだってば」


 白々しくブラフが言う。


「君らが選んだ『子猫』は不満かい? あ、そうか、この帽子、自分たちが被れると思ったのかな? ちがうちがう。被るのはラスボスだよ。ほら」


 というと、ブラフが部屋の奥を指さす。みんなが一斉にそちらを見た瞬間、『猫パンチ』でマイカの右前輪が吹っ飛んだ。


『うわっ! 』


 ガクンと、マイカのボディが斜めに傾く。


「あれあれ? 最上階まで来た割にはちょっとチョロいな。えーと、如月(きさらぎ)依里亜さん、だっけ? 確か、『無生物テイマー』の」


 依里亜は今起こっていることに、頭がついていけなかった。何が起こっているのか。


「依里亜! しっかりしろ! コイツがラスボスだ! 」


 朔太が叫ぶ。さすがにダメージが大きすぎでカード1枚では無理。【ダウト】を2回使い、自分の腕とマイカのタイヤを直す。これでカード10枚分。


「気づくの遅いよ」


 以蔵のドアが1枚吹き飛んだ。『猫パンチ』という技をボスに与えるために『子猫』を思い悩んで選んだのかと思うと腹が立った。


「朔太! 猫帽子に【ダウト】を! 」


「おけ、しゃあない!【ダウト】! 」


 もうこれでカードの消費は15枚。


 猫帽子をなかったことにする。が、ブラフは顔色ひとつ変えず、今度はレビに『猫パンチ』を食らわした。拳が突き抜け、レビに大穴が空く。大ダメージ。HPがまずい。


 ブラフは、余裕をかましてまた机に戻り煙草に火をつけたので、【ヒール】をかけ『ポーション』も使う。徐々にHPは戻るが穴が塞がらない。


「やばい、無駄打ちさせられた! 」


「朔太どういうこと? 」


「帽子も何も嘘だ。これこいつのそもそもの力だ」


「あ……」



 依里亜は思い出していた。『ブラフ』の日本名『荒井(あらい)(てる)』だ。チュートリアルの時に最初に自分で突っ込んだではないか。この名前は『tell a lie(テルアライ)』=『嘘つき』のアナグラムだと。


 今目の前にいるやつは『嘘つき』だ。『受付』も『帽子』も嘘。運営側というのはどうだかわからないが、少なくともこいつの言うことを信じてはいけない。


「回復おわった? じゃあそろそろ戦おうかー。僕ね物理攻撃が得意でね」


 というと、いきなりブラフの右手に剣が現れた。依里亜がバフデバフを撒き、【クイック】で接近し一撃を入れる。が、攻撃は受け止められ、後ろでブンジが魔法攻撃で爆裂した。


「あ、もちろん魔法攻撃も得意なんだけどね」


 非常にやりにくい。どうしても瞬時瞬時の判断が求められる時に、意味のある言葉は迷いを招き、判断を鈍らせる。


 でかい敵なら以蔵を壁にすることもできるが、相手が人型でしかもスピードが早いとなれば、却って障害物にしかならなくなる。


 結局、1番スピードのある依里亜が戦闘で切り結び、他のメンバーは援護の形となる。


 ブラフは『嘘つき』らしく、攻撃もフェイント、フェイクが多かった。手数を増やしここぞというところでのみ1歩深く踏み込みきっちりダメージを取りに来る。


 右に左にフェイントしながら近づいてくる。左回し上段蹴りを途中から下段に変化、レイピアで払おうとすると蹴り自体をキャンセル、真上に飛び上がったように見えた。


「 下だ! 」


 朔太が叫ぶ。依里亜は反応。バックステップでかわすが、ブラフは追撃。直進。剣を突き出す。が、左手に魔法陣が見えた。ブラフの剣をレイピアで押し下げ、魔法の発動も阻止。ブラフが超高速で消える。


 左から攻撃が来て依里亜の左腕を剣が突き抜ける。


 ブンジが【サンダー】を落とし、以蔵は【フリーズレーザー】。ブラフが剣を素早く抜き、下がる。


 再びフェイント。右が左か。か


「上だ! 」


 依里亜が上を見る。しかし、そこには残像。もう1回フェイントで後ろに回り込むブラフ。剣を振る。依里亜の背中に深く斜めの線が入る。が、その姿が掻き消える。


「こっちよ」


 という声にブラフが振り向くと、レビの【声真似】だった。


「ちっ」


 その瞬間ブラフの後ろからレイピアが深く刺される。


「……っ! 」


「嘘つきには嘘つきよ。種明かしはしないけど」



【テイムⅢ】で、依里亜は背中にブンジの【表示】を使っていた。


『みえてるからうそよろ☆ じったいかよろ』


 これを見て朔太が適当に「上」と声をかけ、ブラフに『これは決まる』と思わせ、さらにそこにレビが【実体化】した依里亜の【幻影】を出し、回り込んだ。



「さすがなかなかやるねえ。ダメージないけど」


 確かにブラフのHPはなぜか減っていない。レイピアは体を突き抜けたはずだ。さすがはボスか。



 依里亜がダッシュする。サイドからは朔太も行く。朔太も『アイスソード』を抜いている。


 ブラフが左手を前に出す。


「ちょっと待った」


 待ってしまった。嘘なのに。依里亜の左足付け根に剣が刺さる。刺す時に伸ばしたブラフの腕を朔太が上から斬りつける。剣を手放し腕を引っ込めるが右手首を切り落とした、()()()()()


「切れた」


 とブラフが言うと腕は元に戻っていた。剣すら手元に戻っている。


「こいつ、おれの【ダウト】を喋るだけで実現してる! 」


 その通り、ブラフのスキルの1つは【嘘つき】だ。口に出したことが『()()()()


「ちょっとこれは作戦会議ね。レビたくさん【実体化】して!」


【実体化】【実体化】【実体化】【実体化】【実体化】【実体化】【実体化】【実体化】【実体化】……


 大量の依里亜パーティが現れ、一斉に襲いかかる。実体化なので攻撃はかわすか受けるしかない。


 ブラフがひるんで下がったところで、その内の3体の以蔵が横になって【巨大化】する。ガラス窓を突き破りデカい壁を作り上げる。目的は目くらましと分断。


『このガラス割れるんだ』と思った次に『では、落ちるとどうなるのか』と思った。


 以蔵の壁は壊すにしても乗り越えるにしても時間は掛かるだろう。という計算だったが【嘘つき】スキルで瞬間的に消え去った。プレイヤー本体に効くかどうかは別として『スキル』自体の発動を嘘にしてしまえばいい。


 しかし、ブラフが壁を消したあと、そこには誰もいなかった。




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