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無生物テイマーは家電が好きなのです  作者: はむにゃん
第2章 仙台のビルでイベントするよ
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網と時間稼ぎ

 建物外の柵をぶち壊した。


 建物の玄関には、ものすごく分厚い扉の外に指紋認証装置があった。指紋登録等はしていないので、触るとか以前にぶち壊す。鍵ではなく扉を直接壊した。ドアが開いた。やっとアラートが鳴った。無視。


 ロボットが動いた。歩いているのか振動は伝わるが、サスペンションなどでバランスをとっているのか、そこまでひどい揺れではない。


 次のドアは声紋で認識するものだった。ここまでセキュリティの厳しい施設だということはやはり心臓部か。しかし、出入口があるということはこのロボットも管理やメンテナンスが必要なんだなと思いながらぶち壊す。サイレンが鳴り続け赤色灯が回る。それでも開いたので関係なく進む。


 次は虹彩認証だった。もちろん覗く前にぶち壊す。さすが一流のスパイはやることが違う。大胆だ。そろそろ兵隊が集まって来る頃だろう。遅いって。


 あちこちから足音が聞こえる。「どーせ、さっきのやつらだろ。またテイムしてやんぜ」と思ったら、依里亜よりでかかったのでテイムはできない。身長2m前後の武装部隊。『NK細胞』か『T細胞』代わりか。


 今度の兵隊たちは、なにやら武器まで持っている。『ネットランチャー』。つまり『投網銃』。攻撃より束縛の効果。そして、その目的は『束縛した不審者の動きを抑制し時間を稼ぐこと』だ。結果的にその網から逃れることができたとしても、時間を稼げればいいというもの。


 一応体内だからドンパチはやりたくないのか。それとも時間稼ぎをして人を集めたいのか。


「ありゃーやばー」


 アーヴァが捕縛された。『NK細胞』だか『T細胞』がすばやく網ごと引きずっていった。


 が、パーティメンバーは全員が「しょうがないよねえ」と気にすることなく進んだ。もちろん「自分で何とかできるだろ」とも思ってはいた。


 兵隊が増えてきたが、そこに依里亜がテイムした『白血球』もタイミングよく集まってきた。


『白血球』VS『NK細胞』が始まる。ここは任せて先に進む。



 次のドアは『鍵を2本同時に入れ回す』システムだった。鍵など持ってない。ぶち壊す。


 デバフを掛けてしまえば、丈夫なドアも鍵も壁も何も関係なかった。


 派手に壊したあとのコンクリの瓦礫とかはリーナが綺麗に吸っていた。綺麗好きだ。



 数字を打ち込む式のドアが現れた。今何個目のドアだ。さすがにそろそろ終わりだろと思った。打つべき数字は8桁なのか16桁なのかわからないし、最初から打ち込む気すらない。ドアをぶち壊す。


 果たして開けた先は『原子力発電所の中心部』なのか、それとも『ロボットだけど実は心臓はリアルでした』的な落ちか。はたまた『乗組員が体中にケーブルをくっ付けて操作している』のか。



 部屋は静かで暗かった。そして何もない。最初のロボットと戦った時くらいの広さはあるように思えた。



 デカロボはまだ動いている。一定の周期で足を下ろす時の振動が伝わる。



 暗さに目が慣れてきた。暗がりの奥に何かがある。慎重に近づく。机のようなものが見える。人がいるのか。息遣いが聞こえた。目を凝らすと確かにオフィスの机のようなものの向こう側に誰かが座っているように見えた。


 明かりが急につく。眩しくて目を閉じながらも周囲の気配を探る。殺気は感じない。ゆっくりと薄目を開くとおっさんが座っていた。


 元々なのかあえて全部白く染めているのか遺伝なのか、真っ白な長めの髪のおっさん。きちっとした高そうなスーツを着ている。金持ちダンディな感じ。この格好では戦う気はないのかもしれない。


「いやあ、こんにちは。よくここまできたね」


 依里亜は、最初から言葉が通じるやつが出てきてよかったと思ってしまった。


「ここには何があると思った? ロボのでっかい心臓? エネルギー源? 発電所? それとも誰かの操縦席? 」


「……」


 依里亜はこの男の思惑がなんとなくわかってきていた。だとしたら、今のうちに()()()()()()()()()()()かもしれないとも思った。しかし、おそらく既に手遅れだろう。で、あれば謎だけは解いておきたい。


「そんなことはどうでもいいんだけど、あなた『()()()()』してるでしょ。そしてここに『()()()()()』」


「ほう、どうしてそう思ったんだい? 」


「まず、あまりにも攻撃が稚拙よ。『ネットランチャー』とか『時間稼ぎ』以外になんのためにするの? 排除するなら攻撃の方が簡単よ」


「いやいや、せっかくのロボットを中から壊したくないからね」


「パーティ間での攻撃でもダメージはくらわないでしょ。私たちが攻撃しない限りダメージはないわよ。そうであれば、『細胞』たちは圧倒的な火力で仕掛けるべきだわ」


「お、なかなか鋭いね」


「あと、確かにデバフは掛けていたけど、認証システムの数の割にあまりに通過するのが楽すぎる。あえてここまで()()()()()感じがするわ。難しすぎたら他の手立てを考えたりするけど、ある程度自分たちのスキルで通れて、それが続けば、途中でやめようとは思わない。鍵付きの部屋に侵入できたら、次に目指すのは確かに()()()()()()()()よね」


 おっさんは黙って話の続きを促した。


「撃ち合いになると『()()』まで来るのは遅くなりすぎる。別ルートを考えるかもしれない。目的地すら変えるかもしれない。時間稼ぎもしながら適度なやり取りもしつつ、()()()()に来させるのが目的でしょ。ああ、できるだけ無傷でってこともありそうね」


「うむ、なかなか賢いお嬢さんだね」


 おっさんは椅子から立ち上がると歩き出した。()()()()()に向かって。


「そこまで気づいたなら、いくつか話をして差し上げよう。まず、これも気づいているだろうが、このロボットは()()()()()()()()()


 いや、それは気づいてないって。


「だから、エネルギーというものは特に体内にはない。敢えていうなら私の意思で動いている」


 依里亜は黙った。


「2点目。君らはこれからイベント終了まで『()()()()()()』設定の場所で指をくわえて見ててもらう」


 依里亜は、部屋のドアから出ていこうとするおっさんに【クイック】で瞬時に近寄りレイピアで斬った。


 が、おっさんはホログラムかなんかで触れることはできなかった。


「はっはっはっ。ここまで来るとちゃんとプレイヤーのそれぞれのスキルに合わせた方法を考えてるさ。もちろん、抜け道も残しているからそれを頑張って見つけたまえ」


 というとおっさんはドアから出ていった。


「できるだけ無傷の状態から絶望するのを見るのが楽しみでね。あ、もう一つだけ。『リタイヤ無効』というのは、『リタイヤボタン』も使えないし、死んだら『死んだ場所にしかリスポーンしない』という意味だ。くれぐれも気を付けて」


 声だけが聞こえた。


 部屋が大きく揺れる。壁にいくつかある窓を見つけた。近寄り、外を見ると宇宙空間に向かって飛んでいるところだった。


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