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無生物テイマーは家電が好きなのです  作者: はむにゃん
第2章 仙台のビルでイベントするよ
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貸し借りと連携

 25階まで上がってくるとさすがに変な床はなくなった。しかし、せっかくの知り会いパーティなので、連れ立って行くことにした。確かにパーティ外にはダメージが入ってしまうが、中ボス階でもあるしわざわざ別行動をする必然性はない。


 ぞろぞろと廊下を歩いていくと、いかにも中ボスが中にいますよ、という巨大な青銅製の扉が現れた。扉には読めない文字で色々なことが書いてある。扉は3つあった。



「من الآن فصاعدا ، سيتم تقسيم الحزب إلى ثلاثة أجزاء. انها تقول」

(この先、パーティが3つに別れる、と書いてある)



 と、アラビアのギヤースッディーンが言ったが雪絵以外は何を言ってるかはわからなかったので、ほとんど全員がそのまま進んだ。すると誰かが何かのセンサーに触れたのだろう、全員が急に光に包まれ、何も出来ずに強制ワープした。


 そして、()()()()()3()()()()()()()()()()()()()



 秋月大地、京花、マイク、ブンジ、マイカ、以蔵の前には『戦車』が鎮座していた。


 広い空間ではあるが、建物の中だ。


 別に戦車には詳しい者は誰もいなかったが、それでも、一般的な戦車ではないことは明らかだった。主砲はおそらく44口径120mm滑腔砲のようであるが、取り回しが楽なようにか主砲自体が短く切ってある。


 まるで、銃砲を切り落としたソードオフ・ショットガンだ。有効射程を犠牲にしてはいるが、狭い場所では圧倒的に使いやすいはずだ。


 そして、その主砲が8()()ついていた。つまり、円周は360°だから、45°ごとに1本主砲がついている。どうやって弾を装填するの? と思ってしまうが、これはゲームだ。いずれにせよ一般的な戦車でない。


 副武装として上に機関銃もついている。これも全方向に向けて。


 いきなり主砲を発射してきた。マイカに直撃しドアが吹っ飛び壁に叩きつけられた。HPは半分残ったが、急造パーティを慌てさせるには十分だった。


 戦車は急発進して迫ってきた。通常の戦車の速度は時速70km程度であるが、そんなもんではなかった。かなりの速度で迫りながら主砲を連射する。


 京花が右にかわすと、そこに隣の主砲からの砲弾が来た。液体テイマーの京花は、防御にも液体を使う。スライムの形をしていた水が粘度を高め京花の前に壁となる。弾の勢いを殺しながら伸びるテイム水。スピードも落ちたのでかわせたが、結局水バリアは突き破られ、砲弾は壁で爆発した。


 マイクはレベル258。剣術使い。ただひたすらに剣の技を磨いてきた。持っているスキルは、自分の剣の威力を上げ、手数を増やすバフが戦闘開始時に自動で掛かるだけ。飛んでくる戦車の砲弾でも斬ったり軌道を変えたりは可能だが、6人全員分は無理だ。


 もっと追い詰められているのが大地だ。自分のテイムしていた家電が1人もいない。適当な攻撃スキルはあるが、果たして通用するのか。バフ、デバフスキルを使いながらも気持ち的にはかなり慌てていた。


「京花! なんとかなんねーかな! 」


「ちょっと1人だと厳しいと思う。大地以外のスキルがわからないから連携ができるのかどうかが全然わかんない」


「近づければ斬れると思うんだけど」


 とマイク。


「マイク、日本語しゃべれるんかい」


 当然大地が突っ込む。


「そりゃそうだ。じゃなきゃ、パーティとかやってけないさ」


「で、マイクのスキルは? 」


「斬ること」


 ニヤッと笑うマイク。


「まじか」




 隙を見て京花がマイカにハイポーション。HPも全回復はできなかったし、ドアも取れたままだ。


 以蔵が【押し潰し】を発動するが、戦車の速度が早く、落下の間にかわされる。あくまでワープするのは発動時に敵がいた真上でしかない。ホーミングではない。


 以蔵がタンク役として巨大化したまま前に出る。直撃。ここまでくると敵とのレベル差が大きい。【弾力化】を使い、貫通まではしなかったものの以蔵のドアが大きく凹み、同じ箇所にもう一度食らうと突き抜けてしまうだろう。


 壁役としては厳しい。一旦下がる。ブンジの【必中】、以蔵の【フリーズレーザー】のコンボ。が、当たるけど表面を凍らせるだけ。威力がどうしても足りない。


 マイカの【クラクション】で一瞬動きは止まったが、その隙に撃ったブンジの【サンダー】が与えたダメージは僅かなものだった。


 京花が戦車内のオイルをテイムしようとするが、レベル差がありすぎて発動せず。


 戦車は主砲と機関銃を間を開けず撃つ。避けきれず、ブンジが機関銃を被弾する。状況はかなり苦しい。マイカのドアがまだ戻っていないように、一気に受けた大きなダメージは、HPと連動して戻るというものでもない。


 なにかきっかけはないものか。


 マイクがマイカの屋根に飛び乗る。重そうな鎧を纏っている割には身軽だ。マイカも考えていることを察し、ダッシュする。スピードでは戦車を凌駕しているはず。大剣を構えるマイク。


 戦車とすれ違いざまに2本主砲を切り落としたが、戦車の横の装甲は厚すぎて、直接的なダメージは入らない。しかも、通り抜けた直後、違う主砲から狙い撃ちされた。マイカの左後ろタイヤが吹っ飛ぶ。


 走れなくはないが、もうスピードは出せない。


「マイカくん、ちょっと借りるよ。ブンジ君さっきのよろしく」


 と京花がガソリンタンクの蓋を開けた。液体テイム。他のメンバーのスキルが見えてきたからできること。


 操られたガソリンは、球状になり戦車に向かう。機銃掃射での反撃があったがこっちの方が早かった。戦車にぶつかり本体に広がったところにブンジの【サンダー】。着火する。


 炎上し、継続的なダメージが入る。


 それを見て、マイカが気づく。水を使う京花と水分を爆発させるブンジ。自分が知ってる限りは()()()()()()()()ではないか、と。


「京花さん、ブンジのスキルは……。僕のガソリンはもうないんで」


 珍しく端的な説明に終始するマイカ。もう逃げる分しかガソリンはない。ガス欠後に動けるかは試してない。



 戦車の弱点は種類によって違うが、正面から狙いはかなり頑丈に作ってあり、自分の主砲を食らっても平気なくらいだ。


 側面や後方は装甲が薄いことが多く、戦車での戦いでは敵に弱点を見せない運転が求められる。


 時代とともに戦車の装甲は厚く、重くなっているかというとそんなことはなく、重くするとスピードが落ち、また橋を渡る時に壊してしまうなどが起こるため、現在での戦車は一時期と比較するとだいぶ軽量化されている。


 いまこの目の前の戦車もかなりのスピードがでている。主砲が8本もあるのに、このスピードは異常だ。極端な軽量化、そしてこの中ボス戦のみを想定してるのであれば……真上と真下か。


 ブンジは京花が増やした水の塊の1つに()()【カウントダウン】を仕掛けた。時間は5分。かなりの長さ。


 ほかのメンバーが、時間稼ぎの援護をする。戦車に乗組員はのってないのだろうが、先程攻撃をくらってからは遠距離からの攻撃に切り替えている。しかし、主砲を短く切っているが故に命中率が著しく落ちている。


 弾が当たらないのでジリジリと前進してきた。京花が【カウントダウン】済みの水の塊を投げた。水だから機銃の弾は意味がない。易々とすり抜ける。戦車は停止をしたので、水は本体に当たらず床に広がった。戦車は本体に変なものが当たらなかった安心からか、そのまま移動を止め、主砲を撃つ。


 が、それが最初からの狙いだ。テイムしている水をさらに戦車の下に潜り込ませる。そこでちょうど5分が経過した。大爆発が起こり、戦車が相当な高さまで爆風で持ち上がる。


 そこに【巨大化】した以蔵が真上から落ちてくる。旋回砲塔を主砲ごと押し潰した。


 マイクはとっくに近づいていた。前から後ろまで駆け抜けながら一瞬のうちに太刀を数千回斬りつけた。


 爆発炎上しながら戦車はHPを0にした。



「おお、すごいなあ、俺働かなかったわ」


 ステータス画面がポップした。新しいスキルを覚えると自動でポップするように設定してある。今の戦いで丁度大地だけレベルアップしたのだ。


【テイムβ(ベータ)


【テイムされているもの同士で一定時間スキルを共有することができる。※1度の戦闘で3回まで。※1度に共有できるのは3つのスキルのみ。※1度の共有時間は3分間】


「あー、この戦いで俺の家電たちに使ってあげたかったなあ」


 と大地が言うと、暗闇の奥からキャタピラの音が聞こえた。


 戦車が3台やってきた。



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