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無生物テイマーは家電が好きなのです  作者: はむにゃん
第2章 仙台のビルでイベントするよ
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なすりつけと引き出し

 推理小説のルールは、『ノックスの十戒』や『ヴァン・ダインの二十則』などが有名である。


「犯人は物語の当初に登場していなければならない」や「探偵方法に超自然能力を用いてはならない」などと言ったルールが並ぶ。


 当然このゲームの運営もこのルールに従ってイベントのルールを設定しているとは思うが、あくまでゲームだからどこまで拘ってつくっているのやら。


 また、推理小説で求めるべき謎がある。


Who(フー) done it?(ダニット)(誰がやったのか?=犯人の解明)』

How(ハウ) done it?(ダニット)(どうやったのか?=犯行方法の解明)』

Why(ホワイ) done it?(ダニット)(なぜしたのか?=犯行に至った動機の解明)』


 この3点ではあるが、いまの時点で『D男』が殺されたことについては全て謎だ。


 5W1Hはよく言う言葉だが、『Whenいつ』 はともかく、『Whereどこで』 はシンプルだ、殺人現場が発覚しないと事件は進まない。『 What(何を) 』はさらに言うまでもない。『殺した』だ。


 ということで、推理小説では上記の3つを追うことになる。



「D男さんてどんな人だったか、皆さんとの関係はどうだったんですか?」


 名探偵依里亜が謎に挑む。当事者ではない依里亜と朔太がまとめて話を進めた方が感情的にならないで済むだろう。というか、そうするイベントだろ、と思った。


 A子「まー、死んじゃった人を悪くいうのもなんだけど……さっきも言った通り女にも金にもだらしなかったわね」


 B子「A子は元カノだから恨んでたもんね」


 早速なすりつけあいが始まったが、依里亜は敢えて止めずに話を聞くことにした。予想通りといえば予想通りだ。


 A子「なによ、B子も口説かれてたでしょ? E男と付き合ってるのに」


 E男「その話は俺だって聞いていることだよ。ちゃんと断ったって知ってる話だ」


 B子「そうよ、相手にはしてないわ。しつこかったから嫌いなレベルだったわよ」


 依里亜「嫌いだったのね? 」


 B子「そ、そんなに憎むレベルじゃないわよ。距離をとっていただけ」


 E男「そうだよ。B子はちゃんと俺にも話してたし問題はない。そういやF男は、だらしないD男を軽蔑してよく悪口言ってたよな」


 F男「ちょっと待て。E男だって彼女に粉かけれられて超うざがっていただろ」


 依里亜「C子さんとD男さんの関係は? 口説かれたりはしてなかったの? 」


 A子「それだけは絶対にないわね」


 F男「そうだな。絶対にない」


 みんな異口同音に否定をした。そして、C子とE男は、大学では学年もサークルも別だったので接点はなかったということだった。


 依里亜「C子さんはいまどうしてるのかしら? 」


 A子「じゃあ、みんなでいきましょう。声は私がかけるわ。彼女はね、料理もできるけど頑張り屋でね。すごく努力して大学に入ったの。苦学生だし、男と付き合うとかはないわね。その辺のチャラチャラしたやつは相手にはしてなかった」



 A子がC子の部屋をノックする。中からボソボソとした声が聞こえた。無事でいるようだ。A子だけが中に入り話をして戻ってきた。


 A子「まだ具合は悪いって。さすがにD男のことは話せなかったわ」


 確かに話を聞く限り1番遠い距離のようにも思ったので、容疑者からは外れるかもしれないが、気は緩めない。




「朔太、どう思う? 全員に動機があるといえばあるけど、殺したい程の強い動機もない気がするのよね。それにしてもD男は全員に嫌われて殺されて散々ね。なんでここに来てるのかって思うくらい」


「まあ、ムカついただけで殺してたらキリがない」


「じゃあ、次にすることは? ……あー、ダイイングメッセージになるのかな、あの暗号」



『ははた1』『おんす2』『ににけ3』『だんて4』



「これが現実なら偶然とか関係ないものかもしれないけど、イベントで死体が持っていた紙が4枚もあるならそりゃ犯人のヒントでしかないよね」


「そりゃそうよね。あー凶器もわからないし、もう1回部屋を探さないとダメかもね。さっきは入ってないし、ちゃんと見てないし」



 確かに凶器すら発見されていない。そもそも部屋には誰が入り得たのかもわかってない。


 ということで、全員で再びD男の部屋に向かう。こういう時に「俺はこんなのには付き合ってらんねえぜ」と単独行動をするやつは大抵次に殺される。


 スリッパを履き、料理用の手袋をし、証拠品を保管するためのビニール袋も持った。依里亜、朔太以外は一応全員容疑者なので証拠隠滅の恐れがあるため部屋には入れられない。ドアの外で見ててもらう。


 まず、部屋が密室であったかどうか。再びマスターキーでドアを開ける。部屋の鍵は机の上に置いてあった。マスターキーは玄関の所に置いてあり誰もが手に取ることができたということだったため、被害者が自らドアを開け、犯行後犯人がマスターキーで閉めるということは不自然なことでない。


 被害者の様子を再度確認する。後頭部を一撃だと思われたが、何ヶ所か陥没しているようだ。何度も殴りつけるのは怨恨によるものが多いとはいうが、依里亜たちは警察ではないのでわからない。


 ちなみにゲームなので、血糊は物凄く偽物っぽいし、陥没箇所もぼやぼやっとしている。おそらくイベントが終わるとD男も再び立ち上がり手を振って見送るんだろうと思った。安心して依里亜も謎解きに取り組んでいる。


 ドアの方に足が向いておりうつ伏せに倒れているということは、被害者が犯人を部屋に招き入れ後ろを向いた時に殴りつけたと考えられる。となると()()()()()()()と考えるのが妥当だろうと判断した。というか、その顔見知りの中から犯人を見つけるイベントだし、と依里亜は思った。別に新しいヒントでない。推理小説での犯人は『物語の当初に登場していなければならない』のがルールだ。


 凶器を探す。部屋の中をくまなく探したが、よく凶器として登場する灰皿やトロフィーなどの固いものや、棒状のものもない。飛び散った血は部屋の中だけにしかなく、凶器を持ち去る時に垂れたようなあとはない。拭いたのかもしれないが、血液の痕跡を探すルミノール反応を調べるようなものはここにはないし、必要性はないと思った。依里亜たちがするべきなのはそういうことではない。


 部屋の中を探す時に、鍵がかかっている机の引き出しがあった。鍵は見当たらなかった。


「ねえねえ、これどう考えても中にあるのは重要アイテムよね」


「まあ、そうだろうねえ。あ、『宝島の鍵』使ってみようか」


 すんなり開いた。やはりこの島の掛かっている鍵は全て開けられるらしい。増やしておいて正解だ。


 引き出しの中からはまた1枚の紙が出てきた。


『コンピュー□ あきはば□』


 と書いてある。


「まーた、頭脳使う系のやつね。まあ、いいけど」


(しかく)に入るのは『た』と『ら』だよね。他にはなさそう」


 他にめぼしい収穫はなく全員でリビングに戻る。


 死亡推定時刻もわからないので、アリバイの有無もわからない。



 E男「F男は死体を見つけた時も1人だけ落ち着いていたし、シャワー浴びてきたよな? 返り血でも落としたんじゃないのか? 」


 F男「何言ってんだよ。誰かがやらなきゃいけないことだろ? シャワーはあくまでたまたまだよ。おまえらA子、B子、E男だっていつも一緒にいて、3人で手を組んだかもしれないだろ」


 なすりつけあいが再び始まった。確かにそうだった。単独犯とは決まってない。複数犯となるとさらにややこしくなる。


 B子「C子も料理のあとはずっと1人だから、部屋にいたとは言うけど、行動を見てた人はいないわよ」



 依里亜「いま、部屋でこんな紙が見つかりました。この言葉に見覚えとかはありませんか? 」


 指紋が付かないようにビニール袋に入れた『コンピュー□ あきはば□』の紙をテーブルにおいた。


 A子「秋葉原といえば確かにコンピュータはたくさん売ってるわね」


 B子「それより(しかく)の中の文字に注目しろってことよね」


 E男「あれ、似たようなのをD男に『持っておいて』って渡されたぞ。財布に入れてある」


 F男「俺もだな。ポケットに入ってる」


 2人が出した紙には


『□ぬき □っこ』『か□□□き か□あげ』


 とそれぞれ書いてあった。


 今回の流れは、机の引き出しを開けるのがフラグということか、と依里亜は満足そうに頷いた。



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