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無生物テイマーは家電が好きなのです  作者: はむにゃん
第2章 仙台のビルでイベントするよ
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ABCと推理

 坂道だったのでマイカに全員で乗ってドライブ気分を味わう事にした。


「こんな草原だと風が気持ちよさそう。マイカはオープンカーにならないかしらねえ。それともしちゃう? ねえ、切っていい? 」


 屋根を切られそうだったのでマイカは全力で走った。2kmくらいあったように見えたが数秒で着いた。宝箱から出たアクセサリーでステータスをアップしたせいか、必死だったせいかはわからなかったが、2kmを仮に2秒で駆け抜けたならば光速には及ばないものの音速の3倍は出ている。


「あら、ドライブにならなかったわね」


 マイカから降りると別荘(仮)を眺めた。木造二階建てで部屋の数も多いのが外見からでもわかる。防犯カメラまでついている。金持ち反対!


 朔太が建物の奥行も見ようと思いひょいと覗くと、()()が建物裏に歩いて行くのがちょうど見えた。お手伝いさんかな、と思った時に急に大粒の雨が降り出し、雷が鳴り響いた。


 依里亜も雨に慌てて呼び鈴を押した。


「すいませーん」


 ガチャッ。大きな玄関扉が開き若い女性が出てきた。


「あらあら、急にこんな雨が。とりあえず入って。いまタオルを持ってくるわ」


 マイカもたぶん家に入れるが、車なのでそのまま外に駐車しておくことにした。スペースとるし。


 家電たちは依里亜と一緒に中に入った。


「図々しくてすみません。急に雨が降ってきたもので。よければ雨がやむまででもいさせていただいてよろしいですか? 」


 いつになく依里亜が丁寧だ。女性がタオルを何枚か持ってきた。


「いいわよ。空き部屋もたくさんあるし、ゆっくりしていってちょうだいな。大勢の方が楽しいわ。あら、でも全然濡れてないわね」


 依里亜が雨と同時に【バリア】を張ったので雨には全く濡れていなかった。別に外にいても全く平気だったが、どう考えてもイベントが起こるのは家の中だから入り込む理由が欲しかったのでラッキーだった。


「あらあら、あなたは随分と四角いわね。そしてあなたは四角くて大きいわね」


 ブンジと以蔵を見ながら女性が言う。イベントキャラがAIを使って喋っているのだが、この場にいるのが全てプレイヤーと認識して形容しているので変な物言いになっている。


(ピー! )

『しかくくて おおきいいぞうは おもしろい』


 自分も言われてることに気づいていないブンジ。


「わかったわ! 犯人はあな「何言ってんだよ」


 依里亜は練習をしたかったらしい。依里亜が指をさそうと上げた腕を朔太が押し下げた。事件すら起こっていない。


「今日はこのあとずっと雨のようだからぜひ泊まっていって」


 女性は依里亜のセリフをスルーした。さすがAI。話を続ける


「この島はね、『()()()()()()()()()』って噂があるのよ」




 広々としたリビングで甘くて温かい紅茶をご馳走になった。さすがにいきなり毒入り紅茶が出て、プレイヤーを殺すことはないだろう。そういうイベントではないはずだ、とは思った。おそらく何かが起こってプレイヤーは事件解決を目指すのだ! 名探偵となって! とは思ったが依里亜は朔太が飲むのをじっくり見て、さらにしばらくしてから飲んだ。サバイバル術が役に立った。ありがとう朔太。


 女性の名前は『東野(ひがしの)美子(みこ)』。ニックネームは『B子』だと言った。ここはB子の親の所有で、同じ大学の友達5人と泊まりに来ているということだった。男子3人女子3人でのバカンスだ。


「うらやまー別荘とか欲しいわよねー」


「マイカに泊まれるじゃん? 」


「動かない別荘がいいわ」


 そこに女性が1人と男性が2人来た。


 女性は『伊坂(いさか)英子(えいこ)』ニックネームは、『A子』。男性の1人は『横山(よこやま)英男(ひでお)』ニックネームは『E男』と名乗った。B子の恋人だという。


 もう1人は『宮部(みやべ)英布男(えふお)』当然ニックネームは『F男』だった。


 つまり、恋人同士の『B子』と『E男』が一緒に泊まりたくて、お互いの友達2人ずつを誘ったということだ。


 残り2人はまだ姿を見せないが、ニックネームは聞くまでもなかった。


 F男「『D男』はずっと部屋にいるね。なんかやりたいことがあるって言ってた」


『D男』の本名は『綾辻(あやつじ)日男(にちお)』。『日』なので『day』で『D男』。


 A子「また、女を口説く算段でもしてんじゃないの」


 と急に不機嫌になった。話を聞くまでもべらべら教えてくれたのは、『A子』と『D男』は元恋人同士。あまりに『D男』が女にだらしなくて嫌気がさして別れたのだが、今回の参加メンバーが当日まで分からなかったので帰る訳にもいかず、しょうがなく今回の旅行でも同じ別荘にいるということだった。


 A子「あいつ、イケメンで女にだらしないだけでなく、金にも汚くて、詐欺グループの受け子までやってるとか噂が出るくらい。まったくろくな奴じゃない。私、ご飯の時あいつが来たら部屋に戻るからね」


 とかなりお怒りの様子。


 B子「あと1人は島田(しまだ)椎子(しいこ)。『C子』と呼ばれてるわ。今回の参加者で料理できるのはC子だけなんだけど、今日の晩御飯作ったあと具合が悪いって部屋で寝ているわ」


「急にたくさん登場人物が増えたけど、A~Cが女子、D~Fが男子ね」


 依里亜がヒソヒソ声で朔太に告げる。


「あと、なんかみんなどこかで見た事のあるような苗字だよね」


「そうかしら? よくわからないわ。でも犯人はA子ね。動機は恨みよ」


「なんの犯人だよ。あ、そうだ。この別荘にはお手伝いさんとかはいるんですか? 」


 後半だけ声を大きくして朔太が先程見かけた老婆についての疑問を投げかけた。


 B子「いいえ、私たち6人の他は誰もいないわよ?」


「そうですか」


 記憶は時間と共にあやふやになる。そこにいる人が否定をすればそれ以上話を広げるものでもない。見間違えかなと思い始めた朔太は、依里亜にさえ老婆の事を伝えなかった。



 リビングにはA子とB子、E男が残り、依里亜たちと大学の話などをしてくれた。作られた設定と記憶の割になかなか細かいところまで煮詰めてあるな、と思いながら聞いていた。もしかすると本物の人間なのかもしれないとも思ったが、「あなたは随分と薄っぺらいわね」とレビに声を掛けているのを見て思い直した。



 晩御飯にはいい時間になった。C子が作り置きした肉料理が人数分しかなかったこともあり、依里亜たちは丁重に遠慮した。


「さすがにね、ご飯だとみんなも食べるから毒入りの可能性が増えるから却って助かったわ。一緒に食べると容疑者リストにも入っちゃうし」


 ヒソヒソと朔太に話しかける依里亜の話は決めつけと先入観でいっぱいだ。どうしても殺人が起こって欲しいようだ。


 依里亜たちは以蔵の冷蔵庫にあった軽めの物を食べた。そもそも食べ物はもらわなくても別にいいのだ。


「みなさん一緒に食べないんですね」


 B子「みんな自由が好きなのよ。若い人はそんなもんじゃないかしらね」


 食卓についているのは、A子、B子、E男だ。割とこの3人がいつも一緒にいるな、と思った。そこにF男がやってきた。シャワーを浴びてきたのかタオルを首にかけ髪が濡れている。4人で肉に食らいついている。


 A子「さっきC子にも声を掛けたけど、具合が悪いからご飯はいらないって言われたわ」


 E男「D男はずっと部屋から出てこないね」


「あーこりゃD男死んでるな」


 依里亜が小声で言う。


 実際その通りなのだが。



 みんながご飯を食べ終わってもD男が出てこなので、E男が様子を見に行った。しかし、いくら声を掛けてももノックしても出てこないというのだ。


 さすがに不審に思い、B子がマスターキーを持っていく。野次馬半分、何かあった時のことも考え全員で部屋までいった。D男の部屋は1階の1番奥の右側。


 ドアを開けると、D男は、ドア側に足を向けうつ伏せに倒れている。後頭部から流れている血は既に1部は乾き始めている部分もあり、犯行からはかなり時間が経っていることがわかった。


 女子は悲鳴を上げ、男たちも驚きの声を上げていた。


 F男は割とすぐに落ち着き、状況を確認した。呼吸と心臓音を確認。できるだけ体には触れないように動かさないようにしている。死んでいることはほぼ明らかなので状況保存を優先するためであろう。


 こういう時はあまり現場を荒らしてはいけないので、全員がゾロゾロと部屋には入らないように手で制し、F男1人で確認をしていった。


 うつ伏せに倒れているD男の手に何かが握られているのを発見し、キッチンにビニール袋を取りに行くよう指示をする。


 F男「後頭部を鈍器のようなもので一撃というところか」


「ニュースで時々流れる『バールのようなもの』って『バール』しかないわよね」


 依里亜が呟いた。朔太はスルーした。


 手に握られていた紙に指紋がつかないように、ハンカチを使いビニール袋に入れた。


 こういう時の基本だが、警察に電話しようとしてもつながらなかった。連続殺人が起こる可能性もあるということか、と依里亜はふむふむと頷いている。


 死んでしまっているので、やれることはない。現場保存のためドアに再び鍵を閉め、全員でリビングに戻った。


 見つかった紙は4枚で、広げると


『ははた1』『おんす2』『ににけ3』『だんて4』


 と書いてあった。


「わかったわ!犯人はあ「やめとけ」


 何もまだ推理してないのに指をさそうとする腕を朔太が押し下げた。


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