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無生物テイマーは家電が好きなのです  作者: はむにゃん
第2章 仙台のビルでイベントするよ
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活躍と借り物

 マイカが話を始めた。


『僕は思ったんですよね。あの海賊船を沈めるには船の底に穴を開けて水が入るようにするのが1番いいって。だから依里亜ちゃまのために何ができるかって考えたんですよ。そしたら僕にはスキルがあるじゃないですか、取っておきのやつもあるし、新しいのもあるし。これは依里亜たんのためにぜひ使わないといけないと思「結論言って」



 長すぎたので遮った。依里亜は「僕は思ったんですよね」までは聞いた。マイカが言いたかったことをまとめるとこうだ。


 マイカは【カメレオン】スキルでまず姿を消した。【悪路走行】でもさすがに水の上は無理なので、単純にダッシュしてジャンプして海賊船に乗り込んだ。マイカは狭いドアも通れることは体験していたので、そのスキルでもなんでもないご都合主義で船内に侵入。適度に邪魔なやつを轢き殺しながら、大砲の弾を【積載無制限】でガッツリと積みまくり、船同士が離れる前に再度ダッシュ&ジャンプで生還した。


『結論は、大砲の弾が大量に手に入りました』


「お、マイカすごいじゃん! 褒めてあげる! イベントおわったらひっさびさに洗車してあげるね」


『ありがとうございまするLove依里亜様』


「覚えてたらね。はい、次行くよー」


 活躍はちゃんとしていたマイカであった。



「なんとか海賊船を傾けたいのよねー。以蔵!ちょっと水を凍らせられないかな? あと、朔太も『アイスソード』と『氷の壁が出る盾みたいなやつ』があるじゃない? それ使って、海賊船が向こうに傾いた時、つまり船の底がこっちに見えてる時に固めてみて? 」


『バタン! 』


「りょ」


 海賊船の傾くタイミング、当てる場所色々試してみる。が、結局、水を表面的に凍らせても氷が浮いてるだけに過ぎないため、傾いたまま固定するのは無理だった。


 1つ分かったことは、朔太の盾は便利だということだった。なにせ盾を中心にして盾の円周部分を延長するかのように氷の壁が広がる訳だから、傾ければ斜めに広範囲で氷の壁を出せる。


 船の上から、盾の下の部分を前に傾けてから壁を発動すれば、船から海賊船まで滑り台のような角度で氷の壁ができる。もちろん誰も滑らないが。



「10秒でいいから固定してもらえると助かるんだけどなあ」


 チラチラと朔太を見る依里亜。


「はいはい。カード使うよー。固定したらどうやって攻撃するの? 大砲の弾はたくさんあるけどそんな短い時間で……あ、テイムするのか」


「そうそう! もうさっき全部触ったからテイム済み。あとは号令を掛ければ、一斉に飛んでくわよ」


「それならちと頑張って2枚使うか……【ダブル】……『G』『H』……OKきめた。いい?いくよ。『God(ゴッド) Hand(ハンド)』」


 空中から超巨大な手首から先だけの両手が現れ、海賊船のへりを掴み、向こうへ傾けた。


「よし! 大砲の弾たち! 海賊船の船底に攻撃! 」


 圧倒的な連射だった。というより同時発射であったが。速射砲以上のスピードで発射された大砲の弾たちは、自らの力で元いたはずの海賊船に突進した。


 ただし、海賊船の大砲の弾は、普通は爆発まではしない。鋼鉄についで固く、錆びにくい青銅で大量生産されたものだ。勢いをつけて重たく固いものをぶつけているだけだ。



 あと少しというところで、弾がつき、ゴッドハンドも消えてしまった。随分と船底は硬い。


「でっかいお手手はずっと出っぱなしじゃないの? 」


「ちょっとマジで『神に手を借りた』んで、長くは無理だった」


「あ、本物だったんだ。それってやってること召喚士(サモナー)? 」


 で、本物の神の手なら傾けるのではなく、ひっくり返してくれてもよかったのに。あとから思ったがもう遅かった。


 海賊船は傾きつつあるけどあと一押し。もう一度船底を狙うのはなかなか難しいか? 朔太のカードをここで使いまくるのもちょっと迷うところではある。



「あ! もしかして! ちょっと探してくる! 」


 依里亜は船の中に入っていった。


 海賊船からは途切れ途切れの弓矢攻撃がまだ来るので、朔太が氷の盾で防ぐ。


 以蔵とレビは【弾力化】していると、弓矢程度の物理攻撃は通らない。


 ヒャッハーたちは甲板での最大数が決まっているのか、溢れるということはないが常に一定数がウロウロしている。



 下の階に降りた依里亜が1階のデッキに出て、なにやら水に中に撒いている。それは水の中にはいると、まるで()()()()()するすると泳ぎ、海賊船の船底に水の中から突進した。


 海賊船が衝突音とともにダメージを受けて大きく振動している。ついに装甲の弱かった部分が壊れ浸水が始まったのか海賊船は傾き出した。


「お、これは勝ちか」


「そうね、最後の攻撃が効いたわ」


「また、なんかおかしなことやったんでしょ」


 今度は朔太が依里亜をチラチラと見た。


「レストランがあるから、食材もあると思って。冷蔵庫にあった()()をテイムしたのよ。ふふふ。名付けて『(さかな)魚雷(ぎょらい)』よ。これなら船底が見えなくても関係ないわ」


「君のネーミングセンスはいつも最高だね。色んな意味で。というか、え、依里亜、生き物のテイムは……あー死んでるのか。死んでると無生物扱いになるんだ……。それってやってること()()()()()()()よな? 」


 この船には、テイマーもサモナーもネクロマンサーもいる。



 海賊船は、船首を斜め上にして後ろ半分から水の中に沈みながら崩壊していく。ヒャッハーたちも次々と水の中に投げ出されていく。タイタニック号も海賊船も沈む時は同じだ。




 と思っていたが、剥がれた木材の下から明らかに金属製のボディが見え始めた。水中で爆発が起こる。いや、爆発というより高エネルギーを大量に噴出した衝撃だった。


 海賊船は船首を斜め上にしたそのままの姿勢で水の上に、さらに()()に浮かんだ。浮かび上がりながら周りについていた木片を全て振り落とすと濃いグレー色の全体が現れる。「これ軍艦色ってやつね」と思い「ということは軍艦なのか」と気づいた。あれが中に入っていたら大砲の弾ではなかなか壊れないよな、とも思った。


 海賊船は、明らかに軍艦と呼ばれるものとなっていた。そして空中に浮いている。


「空中戦艦? まさか艦首からエネルギー砲でも撃つの? 」


 と心配したが、そういう厄介なものが出そうな穴は開いていなかった。


 その代わり、空中戦艦は大口径の主砲を全てこちらに向け、一斉に攻撃を開始した。



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