表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無生物テイマーは家電が好きなのです  作者: はむにゃん
第2章 仙台のビルでイベントするよ
55/83

面舵と取り舵

「ねえねえ、ちょっと聞くけど、朔太は海賊船と戦ったことはある? 」


「そんなの前世でもないな」


「あら、偶然ね。私もよ。面舵(おもかじ)が右か左かもわからないわ」


「あの海賊旗の名前が『ジョリー・ロジャー』って言うことは知ってるよ」


「骸骨の下に交差した骨が描いてあるやつねー。見たことはあるわー」


「あ、戦ったことはないけど映画とかでよく見る海賊の戦法は知ってるよ。まず、遠いところからだと大砲を撃ってくるよね、だいたい」


「んじゃバリア」


 ドン! ヒューーー、バシャーン!(ハズレ)

 ドン! ヒューーー、ドドーン!(アタリ)


「ほんとに撃ってきたわねー」


「あ、でもバリアはパーティしか覆ってないから、船全体に届いてないけど、この船って非破壊オブジェクトじゃない? 壊れないよ。明らかに直撃してんだけど。笑える」


「海賊船はなんか帆とかそれぞれの箇所にHPゲージが見えてるわ。ゲージがたくさんあるってことは、部品を壊さないと本体ダメージ入らないパターンね」


「ちょっといまスマホで『海賊との戦い方』を検索してみたけど、『帆船は風上に向かって45度より小さな角度ではほぼ帆走できない』の時点でもうわかんないや」


「いつも通りで、遠距離メインで戦えばいいんじゃない? 」


「いやー次はだいたい船首をこっちの船の横っ腹に突っ込ませたあと、乗り移ってくるよね。近距離戦もあるよ」


 ドゥン!ガッ、ガリガリ!


 物凄い衝突音。金属と木がぶつかり(ねじ)れる音とともに船全体が大きく揺れた。


「ほらね」



 依里亜たちの船は港内をめぐる大型観光クルーザー()()()()船である。全長70m程度。速さは12ノット。4階建て。レストランと9つの部屋がある。


 一方、海賊船は、いかにもな海賊船。帆柱は4本。全長は60mくらいか。速度はこちらよりやや遅いかもしれない。大砲が船の両側に20門ずつ並んでいる。



 海賊船は定番の攻撃パターンで襲ってきているが、こちらの船は非破壊オブジェクトなので、攻撃は乗船しているプレイヤーに対してのもの、あるいは乗り移るためのものになっている。


 プレイヤーがその攻撃で水に落ちるのは『弱かったから』だが、手の届かない範囲の船の損傷でイベント失敗とする訳にはいかないのだろう。だから、船は守らなくてもいい。



「ヒャッハー!! 」「ヒャッハー!! 」「ヒャッハー!! 」「ヒャッハー!!」さらに「ヒャッハー!!」


 同じセリフしか言わない海賊が船に乗り込んできた。数で勝負の設定だからか、雑魚ばかりでスキルを使うまでもない。通常武器でいなす。


 ヒャッハーたちは、海賊帽を被ったり、バンダナを頭に巻き、武器は『カットラス』と呼ばれる湾曲した刃の剣も持っている。重くて短めな狭い船の上でも取り回しが楽な武器。


 これが地面なら以蔵の【巨大化→踏み潰し】がいいのだが、船の上となると、衝撃によってバランスが崩れるのが心配だ。船は壊れなくてもひっくり返りはするだろう。


 剣での近距離戦は依里亜と朔太が受け持ち、家電たちは遠距離攻撃で海賊船の帆からまず狙う。船の動きを止めて有利にしたい。ブンジの【サンダー】もよく効いている。


(ピー! )

『かみなりは たかいところに よくおちる』



「これ、進めなくてしたら逃げるのありかしらね? 」


「いや、そうするとクリアにならないじゃないかな? 」


「あ、そか。んじゃ、海賊船本体を沈めるまでやるってことね」


「まずはこの『無限湧き雑魚』の処理からだね」


「ヒャッハー!!」ズバッ、バタッ

「ヒャッハー!!」ズバッ、バタッ

「ヒャッハー!!」ズバッ、バタッ


 キリがない、強くないけど終わりもない。海賊船の中に雑魚発生装置があるのか、次から次へと湧いてきて、船同士の間に掛けられた鈎付きのロープやハシゴを伝ってどんどん渡ってくる。


 海賊の目的は船を「奪う」か「沈める」か。運営の設定した沈まない船に襲いかかってくる運営の設定した中ボスなのだから、目的は「奪う」つまり「プレイヤーの皆殺し」ということだ。


 依里亜としては海賊船は奪ってもしょうがないし、中から無尽蔵にヒャッハーが出てくるのを止めたいので「沈める」一択。



「まず、いったん船同士を離しましょうか。面舵いっぱいー取り舵いっぱいー」


 適当なことをいいながら、依里亜本人が甲板にある舵輪(だりん)を切る。


 進行方向を逸らして距離を取る。渡っている途中のヒャッハーたちがバラバラと水に落ち、どんどんサメその他の人喰い生物に食べられるのが見えた。


 船が離れヒャッハーたちも成果が上がらないので、海賊船の大砲が狙いをつけるために動き出した。


「まあ、船は壊れないんでこの距離で大砲受けても平気なんだけど、俺らが直撃くらうとノックバックして水に落ちるかもね」


 ドン!!ヒュンッ


「あぶっ、至近距離の大砲はやばいわね。よし、砲身を狙おう。穴でっかいし。【必中】よろ。【アイスシュート】よろ。私は【ファイア】」


 【必中】で狙うので、どんどん砲身に氷やら炎が入っていき、砲台を派手に破壊していく。


 撃ちながらロープも切り、乗り込んできた雑魚もほぼ切り捨てた。ちょっと考えがあったので、捕虜として数人を縄で縛っておく。帆もほぼなくなり海賊船本体にダメージが入るようになってきた。


 海賊船自体は木造なのでいったん火の手があがると周りが早い。が、浸水でもしない限りなかなか沈むことはなさそうだ。残った大砲での攻撃の他に弓矢での攻撃が来る。


 パーティ全体に【バリア】は張ってあるが万能ではない。耐久値も存在するため特にクリティカルが怖い。


 風が強くなり波が高くなってきた。左右に揺れる両者の船。手すりに捕まりバランスを取る。


「揺れると時々船の底が見えるわ。沈めるためにはあそこをなんとか攻撃したいわね」


『そんなこともあろうかと取ってきましたよ。依里亜様』


 まさかのマイカ大活躍か!?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ