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無生物テイマーは家電が好きなのです  作者: はむにゃん
第1章 無生物テイマー、恋人を探す
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僕と俺

 単純なトリックとすら言えないもの。1枚カードを重ねていただけ。そもそもカードを相手に見せる必要なんて一切ない。しかし、わざわざ見せるのは4枚のものを3枚だと誤認させるためだ。依里亜の左肩がだいぶ治ってきたのを確認した上でのスペル詠唱。


「『Hang(ハング)』」


 何もない空間から猿のミイラのような4本の手が現れた。依里亜を掴んで『吊り上げる』つもりだ。


 依里亜は唯一勝っているスピードでかわす。振り向きレイピアで手を切り刻み、【ファイア】で焼き尽くす。


 そのままの勢いで、朔太とは違う方向に走り出す。できるだけ地面が壊れていないところに朔太を誘導したい。


 その意図に気づいた朔太は、それはそれだ、とわかってて乗ることにした。歩いて依里亜に近づいていく。


「今度は俺のプレイヤースキルで戦ってみよう。どこまで通用するかを試したい」


 というと朔太は警棒を無造作に捨て、カードを出しスペルを唱えた。手には「(むち)」が握られていた。『Whip(ウィップ)』だ。長さは5~6mはあり、レイピアとは比べるべくもない。


「朔太は、普段『僕』なのに、戦うときは『俺』なのね」


 攻めあぐねた依里亜は、会話で間を取る。


「そういう細かいところに気づく依里亜は好きだよ」


 と言って、朔太は鞭を地面で打ち鳴らし、時間稼ぎには乗らない、とアピールする。


 依里亜が少しでも動くと、その度に鞭がしなり地面を叩く。動けない。しかし、時間が経てば朔太は恐らく次のスペルを唱えてくるだろう。そうするとさらに打つ手がなくなる。


 もう、私はただのテイマーなのに、なんでこんな肉弾戦をやってるのかしら。と思った依里亜は、()()()()()()()()。すぐにしゃがんで確認をする。


「来ないなら俺からいくぞー」


 朔太が近づいてくる。そして依里亜のしたことには気づいていない。


「私も大好きよ! 」


 立ち上がった依里亜は、【ファイア】を撃ち、その後を追い掛けダッシュした。


 朔太は、難なくファイアをかわすと、素早く鞭で依里亜の足を払う。転倒する依里亜。


「フェンシングって2mの幅で戦うから、極端な横からの攻撃には弱いんだよね」


 そんなことはわかっていた。それは()()()()()()()()()()()、だ。


「これならどう? 」


 起き上がった依里亜は【ファイア】を3連で撃ち、再び追いかける。1つ目のファイアを朔太が迎撃したタイミングで真横に飛ぶ。舞台から飛ぶと()()()()()()()()()()()()()()、朔太の後ろに回り込む。


 依里亜の姿を目で追っていた朔太は釣られて振り向いてしまった。2発目は外れたが、3発目のファイアが背中に直撃した。これでやっと初ダメージ。無防備なところに当たったので、かなりのHPを削った。衝撃でノックバックする体がこちらに飛んで来たので、さらに追い打ちでレイピアで切り付ける。追加ダメージ。


 できれば、もう一撃なにか欲しかった。


「お、やるなあ」


 戦闘中の横柄な態度は相手をイラつかせる演技だ。普段の朔太を知ってる依里亜には通じない。


「ねえ、カードってあと何枚なの? 」


「15枚」


 即答。常にカードのカウントは怠らないのは戦いに慣れているから。同じ手が通用するとはとても思えなかった。


「おいで」


 暖かくも冷たい一言。依里亜のプレイヤースキルを確認するための一言。


 依里亜は動いた。直線。突きを出すが、鞭の距離と速度の方が遥かに勝る。突くのと同時に来る鞭に足をやられ転倒する。


「フェンシングは突きばかりだから、右肩が前に出た時、視野の外からの攻撃に対応できない」


 偉そうに分析している朔太の言葉で、朔太が勘違いしていることが今はっきりとわかった。


「フェンシング舐めんなよ」


 依里亜は本気で怒っていた。そして、朔太が勘違いしている大きな大きな穴に気づいた。


 

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