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無生物テイマーは家電が好きなのです  作者: はむにゃん
第1章 無生物テイマー、恋人を探す
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思い込みととっておき

 以蔵が【アイスシュート】を撃つ。発射される氷も巨大化している。依里亜は直撃はしないようにかわしながらレイピアを振る。真っ二つになった氷の塊が軌道を変える。


「よし、大きくなった氷は弾けないけど、切ることはできる」


 ファイアを連発しながら、狙いを定められないように以蔵の周りを走り回る。しかし、以蔵は円の中心になって方向を変えればいいだけなのに対し、依里亜は円周をずっと走る状態。隙もできるし、パターンも掴みやすい。ファイアは直撃してもミリ単位でしかHPは減らない。以蔵はかわす必要すらないのだ。


 以蔵の前に光が現れる。【フリーズレーザー】だ。一瞬の後に元の大きさの時の10倍もの太さのレーザーが、舞台を一直線に凍らせる。


「うっわっ、危な。アイスシュートよりやっかいだわ、レーザーは。でも……かわせる」


 スキル発動時のわずかな発光は、技を知っている者からすれば逃げてくれと言わんばかりの合図にもなる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 以蔵の方が圧倒的に有利ではあるものの、決め手には欠け、膠着状態になる。以蔵の移動速度は【巨大化】したとはいえ、依里亜には遥かに及ばない。自然と遠距離からの氷による物理攻撃と、レーザーによる魔法攻撃の2択になるが、依里亜はそれを弾くことができるし、かわすことができる。そして、依里亜は決定的なダメージを与えられる攻撃がない。


 そこで、以蔵がパターンを変えてきた。


 低めに発射したレーザーをジャンプしてかわした依里亜が空中にいるタイミングで、ドアを力強く開けた。


 風圧による吹き飛ばし。


 HPを削るのではなく、場外勝ちの作戦。


 依里亜はかなりの距離を吹き飛ばされたが、舞台のほぼ中心にいたため、辛うじて落ちずにすむ。



「ますます打つ手がなくなってきたね。ちょっと依里亜が厳しいかな」


 朔太はこの戦いでどちらかを応援しているということはなかった。しかし、次の決勝で戦うのはこの試合を勝ち上がって来た方だとわかっているため、戦況を、そしてそれぞれの戦い方を真剣に見て分析している。



 以蔵が低めにレーザーを撃ち、依里亜がジャンプする。そこにドアの風圧が来る。という攻防が繰り返される。


「依里亜は、横に逃げるのは無理なのかな」


 その場で戦ってる者にしかわからないこともあるが、それは時に、()()()()()()()()()()()()()()()()の場合もある。


 依里亜の位置がやや壁よりだった。レーザーが来る。ジャンプ。しかし、ドアは開かれなかった。以蔵としては全速力のダッシュ。


 着地直前の依里亜の前に「白い壁」が超スピードで迫ってきた。



 以蔵は3ドア冷蔵庫である。1番上から右開きのドア。サイクロプスのハンマーの軌道を変えた時に破壊され、ブンジのスキルの魔法障壁を破壊し、今、依里亜に圧倒的な風を浴びせているドア。そして、YESの返事の時に『バタン!』と音を立てるドア。


 2段目と3段目のドアは引き出し型。2段目は野菜室。3段目は冷凍庫。日本の冷蔵庫の多くは2段目に冷凍庫があるのだが、以蔵は一番下にあるタイプ。


 その3段目の引き出し型冷凍庫のドアを高速で開けたのだ。


 直激を食らう依里亜。


「ぐはっ」


 壁に叩きつけられるが、勢いが強すぎて跳ね返って舞台に戻って倒れる。壁との距離が近すぎたのが幸いした。間一髪だった。HPは半分を切っている。


 以蔵にとって、ドアを開けるのはパンチ、冷凍庫を開けるのはキックということになるだろう。



 以蔵はレーザーを撃つ。依里亜はそれをギリギリで転がってかわした。手に持っていたレイピアが凍りついて地面に張り付く。絶体絶命。


 依里亜の攻撃手段は【ファイア】しかなくなった。ポーションはもうなく、【ヒール】での回復も追いつかなくなっている。


 すると依里亜は床に【ファイア】を撃ち始めた。何発も何発も。



『煙でレーザーを減衰させる作戦ですかね』


 久しぶりにしゃべったレビの解説は適当だった。



 しかし、床に着弾したファイアはしばらくの間は燃え続けたが、その煙が以蔵のレーザーを減衰させる程のものとは思えなかった。


 以蔵は構わず、依里亜に2択を迫る攻撃をする。レーザーを食らうかジャンプするか。


 依里亜がジャンプした後の以蔵の攻撃も2択だ。ドアを開けるか、冷凍庫を開けるか。


 依里亜はジャンプをした、()()()()()()()()


 動きにつられて、以蔵がドアを開け始めた瞬間、依里亜はスキルを唱えた。


 以蔵が依里亜のジャンプに合わせて、ドアを開けると()()()()()()ように、依里亜もまた、レーザーが来たら()()()()()()()()と思い込ませていた。執拗に何度も何度も。


()()()()()は何回も見せないのよ!【クイック! 】」



 依里亜の移動速度が倍になった。



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