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無生物テイマーは家電が好きなのです  作者: はむにゃん
第1章 無生物テイマー、恋人を探す
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悪手とライバル

 2回戦。以蔵 VS ブンジの家電対決。壁に穴を開けた因縁の戦いでもある。


「家電同士の戦いを実際に見るのは初めてだわ」


 依里亜は楽しそうだ。


 朔太はマイカに「なーなー、どっちが勝つか賭けようぜー」と絡んでいる。マイカは朔太がボディによっかかっているため動くことすらできない。物理的行動としては可能だが、精神的には不可能という意味で。



 舞台で向き合う冷蔵庫とレンジ。パッと見はシュールな状況だが、本人たちはこれ以上ないくらい真剣である。


「じゃあいくわよー、3、2、1、ファイト!」


 まずはお互いにウォーミングアップ的に攻める。いわゆる「挨拶がわりだ」というやつだ。以蔵はしゃべれないし、ブンジも液晶パネルが小さくて、依里亜たちからは何も見えないのだが、たぶんお互いにそう言っている。


 以蔵の【アイスシュート】がファーストアタック。最大5発まで発射可能なそれを範囲を広げて撃つ。ブンジはその1発を敢えて受けたように見えた。HPが僅かに減る。ダメージを確認したのか。


 続いてブンジの【スチーム】、魔法障壁が以蔵の周りに発生する。スキルレベルが上がって今は300℃を超える高温を出せるはず。以蔵が動いていないので【必中】はまだ掛けてない。小手調べ段階ではまだMPは温存なのは当然だ。


 ブンジの「挨拶」は以蔵には届かなかった。魔法障壁に全身が包み込まれる前に、以蔵はドアを思い切り開け障壁を粉々に粉砕したのだ。


「え、あれ破壊できるの? 」


 依里亜が思わず声にする。


『もしかすると、囲っている途中だと破壊できるかもしれないですね』


 レビは審判だけでなく解説者の役もこなす。


 仕切り直しのように、2人ともスタートポジションにつき、再び睨み合う。目はないが。


 以蔵が【アイスシュート】を今度は狙いを絞って撃った。さすがに今回はブンジもかわす。ジャンプで逃げたところに以蔵が【フリーズレーザー】で追い打ちをかけた。1度目のジャンプの最高到達地点から落下を始めたはずのブンジは、そこからもう一度ジャンプをした。2段ジャンプだ。


 サイクロプス戦でレビに重ね掛けされた【移動】スキルによる強制的移動で、ブンジの体の中には変化が起きていた。


 着地したブンジが、以蔵に向かっていく。跳ねるように、飛ぶように進みその速度はなかなかに速い。


 以蔵は足はないがバックステップをし、アイテムボックスを開いた。中からドロップアイテムの手榴弾をばら撒く。


「あ、アイテムボックスも攻撃に使えるか。いまさらルール変更はしないけどねー」


 以蔵の周辺で爆発が起こり、コンクリートの床に穴を開ける。ブンジは近づくのを止め、距離を一旦取ってから【必中】と【スチーム】のコンボを掛ける。


「スチーム効かないのになー」


 と朔太がマイカのボンネット上に胡座(あぐら)をかいたまま呟く。


 しかし、スキル発動直後にブンジはダッシュで距離を詰めた。


「あ、動きを縛ったのか」


 以蔵がアイテムボックスを開くには、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。つまり、魔法障壁を破るならドアを開けなければならず、近づくブンジを止めるために手榴弾を出すならドアを閉めないとならない。


 以蔵は魔法障壁を無視して、手榴弾をばら撒くことを選択した。ブンジが再び離れる、が、その瞬間【スチーム】スキルが完成し、冷蔵庫が高温の蒸気に包まれる。以蔵のHPが4割近く減る。


「なるほど、【カウントダウン】を恐れているのか。」


 ブンジの【カウントダウン】は触ってしまえばいい。あとはタイマーを1分でも2分でもセットし逃げ回れば勝ちだ。このスキルは水分を爆発させるので、金属には通用しない。


 家電にはあまり通用しなさそうではあるが、()()()()()()()()()()()()()()()。スキルを冷蔵庫の水タンクに向けて発動すれば大爆発は免れない。だから、以蔵はHPを4割減らしてでも、触られるのを避けたのだ。


 ポーションを使いHPを回復した以蔵は、タンクの水を全部使い切る勢いで【アイスシュート】を連発する。水分を減らせば、仮に【カウントダウン】を食らってもダメージを減らせるとと考えたのか。


「いやあ、それは悪手じゃろ、冷蔵庫」


 朔太がボンネットを叩きながら言う。マイカは動かないがたぶんとても嫌な気持ちでいる。


 依里亜はどこかで聞いたセリフだとは思ったが、思い出せなかった。


 以蔵のスキルは、水タンクが空になる前にMPが尽きて発動しなくなった。マナポーションをつかう。あと2本。


 以蔵の後先考えぬ攻撃は熾烈さを増してきたが、ブンジは2段ジャンプどころか3段ジャンプまでこなし、壁を使っての三角飛びまでやり始めた。戦いながらプレイヤースキルがどんどん上がっているのだろう。


「やっぱり大事なのは『好敵手』と書いてライバルね! 」


 依里亜は楽しそうに言うが、この戦いの勝者と戦うのは依里亜だ。



 以蔵のMPが完全に尽きた。手榴弾や他のドロップアイテムを撒きまくるが所詮は自分のスキルではない。今のブンジにダメージを与えられる手段はなかった。


(ピー!)


「今たぶんブンジは『往生際が悪い! 』とかなんとか言ってると思うわ」


 舞台の端まで追い詰められた以蔵は、手榴弾でできた穴につまづいて倒れた。


 タイマーをきっちり1分にセットしたブンジは、勝利を確信し以蔵に突っ込んだ。




 以蔵の体にぶつかったブンジの体が跳ね返って舞台の外に飛んだのはその直後だった。慌てて2段ジャンプ、3段ジャンプとするも間に合わず、フローリングに落ちた。


「え? 」と朔太。


『え? 』とレビ。


『え? 』とマイカ。


「場外負けじゃね? 」と依里亜。



 決着はついた。以蔵は【弾力化】を発動していた。


 やはり、プニプニツンツンのためだけのスキルではなかった。


【2回戦結果】以蔵〇 VS ブンジ✕ (場外勝ち)



 

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