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無生物テイマーは家電が好きなのです  作者: はむにゃん
第1章 無生物テイマー、恋人を探す
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休憩と幻影

 休憩。


 手頃なサイズの倒木に腰掛け、以蔵の中にある食べ物を配る。こういう時にアウトドア大型冷蔵庫は便利。もちろん、レンジも使える。


 今日は土曜日なので、一旦実家に戻ってまた明日来る手もあるが、折角ここまできたし、という思いもある。


 決して油断や無理はしていない。ポーション、マナポーションは雑魚キャラのドロップでも出るし、実家に来る前に買っておいた分が、以蔵のアイテムボックスに500本以上入っている。


 ポーションも決して安いとは言えない値段ではあるが、そもそも普段の戦いでのドロップする金額は相当なものだ。


 もちろん戦わずに仕事をしてもお金を稼ぐことはできる。実際に働いている人もたくさんいるし、父親だって平日は営業の仕事だ。格好はケンタウロスだが。


 おそらく、依里亜たちが帰れば両親は戦闘することはないだろう。今回戦闘の楽しさに目覚めなければ……母親は既に楽しんでいる気もするが。


 転生組は死んだら終わりだからハイリスクハイリターン。戦わない選択もあるだろう。それでも仕事をすれば生活はできるし、新幹線や車を使っての旅行は可能だ。


 プレイヤー組はもっとお気楽だ。ログアウトすれば現実世界での生活に戻れるし、「死に戻り」だってある。実際に生きている世界ではできない仕事をし、その余暇にちょっと戦い、そのお金は武器につぎ込むことだってできるだろう。


 転生組が「餓死」することはあるのかどうかはわからない。もちろん試す気もない。満腹パラメータがあるのかも分からない。隠しパラメータとしては存在するのかもしれないが、ステータス画面にはそんな数値はない。


 だから、依里亜は、お腹がすいた気になればご飯を作り、そして食べる。今のところはそれをただ繰り返すだけだ。



 戦いの目標は両親がLv10になること。そこまで上げれば、依里亜たちも全員当然Lv10を超える。パーティに人が多いうちに経験値を稼いでおきたいとか、横浜に行くならその位まで上げておきたいとか、Lv10は区切りがいいからいいスキルが手に入るだろうとか、理由は色々である。


 が、1番の理由は簡単だ。マイカが勝手にLv10まで上げたから、置いてきぼりにしているうちに追いつき、いっそのこと抜いてしまえということだ。


 ちなみに、パーティ全体の経験値は均等割であるが、現在マイカは入ってない。両親を入れてときっちり6人にするためには、誰か1人が外れないといけないからだ。


 というか、マイカは最初からずっとパーティに入れるのを忘れられている。だから、マイカが勝手にレベルを上げようと、依里亜たちは何にも変化がなかった。


 そして、そのことに今はまだ誰も気づいていない。


 くれぐれも勘違いして欲しくないのは、みんなマイカのことは好きだということである。ただ、いつの間にかそういうポジションになってしまっただけであり、そしてマイカ本人も全く気にしてないというだけのことだ。



 落ち着いたところで、ステータスチェックをすることにした。お互いのスキルを把握していた方が戦略が立てやすいし、動きやすい。



「私以外はレベルが上がっているわね。新スキルはレビの【幻影】と以蔵の【巨大化】ね。見てみよ」



【幻影】【パーティ全体の幻を別の場所に作りだす。実体はなく攻撃力もない。スキルレベルが上がると幻の数が増える】


【巨大化】【一定時間巨大化する】



 何も言わないうちに、以蔵がスキルを使った。生い茂った木の枝をメキメキと折りながら巨大な冷蔵庫が目の前に現れた。高さは10mくらい。3階建てマンションくらいの高さであろうか。


「きゅ、急にやるとびっくりするわ。わ、わりと使えそうなスキルね。これ家の中ではやらないでね。元に戻っていいわよ」


 戻る時は一瞬だった。以蔵はうれしそうにドアをバタンバタンしている。


(ピー!)

『わがやには このれいぞうこ おおきすぎ』


「あら、ブンジくんは以蔵に妬いているのかしらぁ? 」


 この間も以蔵と模擬戦をしていたし、ライバル心でも燃やしてるのかしらと思い、依里亜がからかう。


(ピー!)

『むむむむむ むむむむむむむ むむむのむ! 』


 ブンジの庫内がオレンジ色に光り始めた。赤外線も出して赤面してるということか。


「ビンゴね! ツンデレでかわいいわねえ」


 と言うと依里亜はブンジを撫で始めた。さらに庫内が明るくなる。


(ピー!)

『うひひひひ ふひひひむふふ でへへへへ』


「それはちょっと気持ち悪いわ」


 というが早いか庫内の明かりは瞬間的に消え、ドアが力なく開くと丁寧に白い水蒸気まで上がった。ブンジはそのままピクリとも動かなくなった。


「サーモスタットでも働いたのかしらね? ふふふ」


 女性は時として残酷である。



「レビは元々テレビだから【幻影】は映像系のスキルってことかしら。戦闘時以外は使える?」


『やってみますね』



 座っているパーティに向かい合うようにパーティのメンバーが現れた。映像としては立体感、質感もあり、かなりよく見ても偽物とはわからない。


 映像としては、いわゆる鏡に映った左右反転の姿ではなく、今ある姿をビデオカメラで撮ってそのまま再生しているかのような状態。


 だから、依里亜はみんなの中で1番右に座っているが、目の前に映っているのは自分の姿ではなく、反対側にいる母親の姿である。


 本体が動くと幻影も動く。


 父親が手足を動かしながら幻影の確認をする。


「いわゆる生放送だね。母さん、なんかスキル出して見てくれないか」


「いいわよー。ウォーターウォール!」


 地面から壁状となった水が現れる。バリアに使える戦闘時以外も使用可能なスキル。しかし、スキルで起こっている水や光、地面のひび割れなどは幻影では再現されない。


「ふむ、今のところクロマキー合成で切り抜いたみたいに、人物のみの幻影だね」


 父親は心配そうな顔をするが、依里亜はなんの問題もなさそうな顔をしている。


「でも、何かしてるように見えれば十分役目は果たすと思うけどー。元々が代わりに戦ってくれるスキルじゃないし。フェイクや陽動としては十分使えるわ。……ところでお母さん、また見てないスキルを出したわね」


「いいでしょー、私のスキル読み上げる? 」


 みんなの注目が母に集まる。半透明なステータスパネルを開いた母がスキルを読み上げる。


「えーとねー、魔女としては、【ファイア、サンダー、ウインドカッター、岩石、ホーリー、からみつき、ウォーターウォール】あ、スクロールできるわね。2ページ目も読む? 」


「あ、いいわ……どうせ言われても覚えきれないわ。母さんは好きに戦ってていいわ。【からみつき】は木属性のスローかな。」


「じゃあ、次に女帝スキルね? 」


「あ、まだあるのか……」


「【服従、威光、暴力、重税】かな」


『何か言葉だけでも怖いスキルが聞こえましたね』


 レビが引きつった声をあげる。


「【威光】は敵の攻撃力ダウン。【暴力】は呼び出した精霊たちが敵をとり囲み継続ダメージ」


「物理的な毒状態か……状態異常解除では防げないと……」


「【重税】はドロップアイテム3倍だって」


「それは是非かけ続けて欲しいわね」


「次に妖精スキルは……【いたずら】しかないわ。Lv6まで上がっているけど。効果は、【何が起こるかわからない】」


「それ、なんとかプンテってやつよね。おもしろそうだけど、パーティ全滅とかもありえるから戦闘時は使用禁止でお願いします。いたずらで人生終わりたくはないわ……お父さんのスキル?は? 」


「父さんは、えーとー」


 父親がステータス画面を出すと、みんなの視線が集まる。


「……Lv1で覚えた【変身】しかない」


 全員がお約束のようにずっこけた。



夜にもう1話更新予定です。ぜひご覧下さいませ。

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