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無生物テイマーは家電が好きなのです  作者: はむにゃん
第1章 無生物テイマー、恋人を探す
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魔女と石化

「前方からマンイーターが5匹! レビはみんなに【指令】多めでMP温存。【麻痺】は使い所を見極めてピンポイントで! 」


『わかりました! 』


 というが早いか、誰よりも早く依里亜は走り出し、1番前のマンイーターに切りつけた。HPが2割くらい減る。


「マンイーター」つまり「人喰い」。色々な凶悪な生物に付けられる名前ではあるが、このゲームでは移動する人喰い植物である。


「以蔵とブンジは【指令】を受けて攻撃! 間に合わなければMPを使うのに躊躇(ちゅうちょ)したらダメ。素早く判断して。ブンジはみんなに【必中】! 火力が足りないと思ったら【スチーム】使って!!」


(ピー!)『バタン!』


「そこは、パラード(防御)ではなく、リポスト(アタックをかわして攻撃)だろ。攻めが甘い! 」


 父の声が掛かる。


 依里亜がフェンシングを始めたきっかけは父親である。依里亜自身はすぐにやめてしまったが、父は週末にはフェンシングサークルのコーチに行くほどの腕前だ。


 依里亜の余っていたレイピアを片手に、依里亜とは別のマンイーターを突きまくっている。ピンポイントで弱点に当たっているのかクリティカルヒットを表す閃光を連発している。これで、初バトルとは思えない。



 依里亜の両親が仙台から出るとは思えなかったが、一応安全のために、とHPの底上げのためにレベルアップに来ていた。なにせ転生組は死んだら終わりだ。


 かつて、家の前を歩いていたケルベロスが言っていたように、南より北の森の方がモンスターレベルが全体的に高い。しかし、いまはあの時よりもレベルは上がり、しかもパーティはフルメンバーの6人である。今のところ苦戦らしい苦戦はない。


「お父さんとお母さんは、何ができるかわかんないから適当にやってて! たぶん死なないでしょ? どうせ」


 父は自慢の機動力を発揮し、走り回りながらレイピアを突きまくる。後ろにいるモンスターは後ろ足で蹴り飛ばす余裕もある。


 一方母は……もう何だかわからない戦いをしている。


「【ファイア】! 【ウインドカッター】! 【サンダー】! ふはははは! 」


「お母さん、属性関係なし? 」



 母親の職業は【トリプルジョブ】


【女帝】【魔女】【妖精】の3つの職業持ちで、ステータス画面を出すこともなく、どれでも好きな職業に瞬間的に代われる。これだけでもチートだ。


 そして今戦っているのは【魔女】。まだLv1のはずだが、何種類もの魔法を使っている。さすがに敵のHPを削るのは1割くらいではあるが、その攻撃バリエーションは多すぎである。おそらくまだ見ていないものも含めて全属性の魔法が使えるのではないか。これでレベルが上がればどうなるのか想像もつかない。


 マンイーター5匹を倒すのに5分も掛からなかった。

 全員のレベルが上がった。特に依里亜の両親のレベルは一気に5にまで上がっていた。


 母のMPがやや少なくなっていたが、マナポーションを飲むほどでもなかった。レベルアップでの全回復の影響も大きいが、元々のMPの最大量が多いのだ。


「次は【女帝】で戦ってみようかしら? 」


 母親は楽天的というか何も考えてないと言った方がいいか。楽しいことが大好きな人であるが、それは「いかに自分が楽しいか」である。「周りを楽しませよう」とは全く思っていないので、勘違いをしていると大変な目にあう。


 家に来た時みんなを(ひざまず)かせたのもそれだ。ノリでやったので反省も後悔もゼロである。もちろん母だけは大満足であった。


 強制土下座をさせたのは【服従】のスキル。ある程度上のレベルにも効果があり、スキルをやめるまで体は動かせない。別に攻撃スキルという区分でないため、平常時でも使えるのは恐ろしい。


「あら、スキルが増えてるわ」


 増えていたのは【威光】。【女帝】の方のスキルであった。【敵一体の攻撃力ダウン】である。


 母親のチート性能は3つの職業を持つだけではない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことである。つまり、【魔女】で戦っても、【女帝】も【妖精】もレベルが同じだけ上がる。


 ちなみに【妖精】は小さくなって飛べる、ということはできるが、レベルが上がっても【いたずら】スキルが上がるだけのはずれジョブだ。


 草むらがガサガサと揺れ、2mくらいの蛇が現れた。慣れは恐ろしい。蛇くらいであれば逆に大きい方が攻撃を当てやすいから簡単なのではないか、と思ってしまう。


「よし、ここは父ちゃんに任せろ。」


 父親は余りにも無防備に突っ込み過ぎた。急に足が動かなくなりヘビにたどり着く前に前のめりに倒れ込んだ。


『石化……バシリスクですね』


 バシリスク。蛇型、トカゲ型、鳥型等がいるが、目の前にいるのは蛇型。猛毒と石化に優れる。コカトリスの別名。



「じゃあ、私の出番【キュア】! やっと役に立ったわ地味スキル! 石化と毒に注意よ! とりあえずみんな距離とって! とりあえず【ファイア】! 」


 依里亜が時間稼ぎ的にスキルを発動し、パーティは体勢を立て直す。父もすぐには足が完治しないのか引きずりながら下がる。


「魔法主体で攻めてみるよ! 」


 母は女帝になって【服従】を掛ける。バシリスクは少しの間動きが止まるが強引にスキルを打ち破る。レベルが少し高いのか。母は諦めて魔女に変わり、いつでも攻撃魔法を撃てるようにする。


 レビの【指令】からの【必中】【アイスシュート】【スチーム】のコンボ。攻撃は当たるが思ったよりダメージが入らない。

 体の防御力が高い。さらには手足という「パーツ」がない分、区切りがわからず、狙いどころがわからない。


「レビ! 【弱点サーチ】! 」


『了解……口の中みたいです! 』


 バシリスクは、石化魔法と毒霧を交互に口から出すものの、すぐに弱点の口は閉じてしまう。毒は近づかなれば問題なしだし、食らっても【キュア】も【ヒール】もある。しかし、とにかく弱点をつかなければダメージが入らない。


「あれを開けっぱなしにするってことよね。レビ!ちょっとごめんねー。一応【バリア】は張るし、あとで【キュア】掛けるからね? お父さんもう動ける?」


「動けるぞ」


『え? なに? 』


 依里亜はおもむろにレビを掴むとバシリスクに向かって投げつけた。


『わーーーー!やめてーーー!』


 バシリスクが口を開けた。石化魔法が発動し、レビが端から石化しバシリスクにあたる前に落下する。


『ぎゃあああ! 死ぬーー!! 』


 そこに1馬力の全速力で走ってきた父が、レビを拾いあげると依里亜に向かって投げる。依里亜はレビを受け止めすぐに【キュア】をかけ、石化を解除する。


 バシリスクが再び石化魔法を吐くが、高速で駆け抜けている馬の速度には追いつかない。


『……ふぅ、なんとなくやりたいことはわかりましたけど、先に説明してくださいよ。死ぬかと思った。ほんとあの時助けてくれた依里亜さんは……』


 レビの文句を依里亜はスルーした。戦いは厳しいのだ。というより依里亜には絶対の自信と信頼があったのだ。

 自分が狙いを外さず投げるということに、敵の追撃方法に、そして父の脚の速度に。


「やっぱり自分に迫ってくるものに対しては、石化で追撃してくるわね。そして石化で重くなった攻撃対象は届かずに落ちる。つまりはこういうこと!! 」


 というと依里亜は地面から何かを拾うとバシリスクに投げつけた。


「みんな攻撃準備!今、口開けるから!」


 バシリスクは追撃とばかりに石化魔法を出すが、投げられたものの速度は落ちず、開いた口に挟まり取れなくなった。


 そこにみんなが魔法スキルを集中した。開いたウイークポイントの口に大量の攻撃を食らったバシリスクのHPゲージは瞬間的に吹き飛んだ。


『依里亜さん、石を投げたんでしょ?』


「そうそう、石は石化しても石だからスピードは落ちないわ。強肩キャッチャーは盗塁なんて許さないのよ」


『前半はよくわかるけど、後半がよくわからないです』



 その頃、マイカは駐車場で暇そうにずっと独り言を呟いていた。





おお!PVが400超えた\(^o^)/ありがとうございます。

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