表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無生物テイマーは家電が好きなのです  作者: はむにゃん
第1章 無生物テイマー、恋人を探す
12/83

実家と両親

「ピンポーン」


 実家の呼び鈴を押す。


「ほら、ブンジ行儀よくして! 」


 依里亜は、自分で言いいながら冷蔵庫やレンジの行儀よさって何だよと思いながら、買ってきた手土産にチラと目を向けた。

 仙台人が仙台人の所に行く時に仙台銘菓の「荻の月」を買って行くのはどうなのと思ったが、ほぼ100%外さないのも確かだ。


「はーい、いま開けるから」


 家の中から父の声がした。久々の再会に軽い緊張感に包まれた時、玄関からは予想外の生き物が現れた。



 玄関から出てきたのは、半人半獣……なのか? 上半身は犬の顔をした人間。下半身は馬。正確にいえば人型をした上半身が、馬の首から上の部分にくっついている。馬の足は2本ではなく4本。つまりケンタウロス、のようなもの。犬の顔、人の体、馬の体という構造の生き物が現れた。


 依里亜はその体を上から下まで何度か視線を往復させた。3度目の往復で犬の顔と目が合った。


「あ…え…間違えました。ごめんなさい」バタン。


 自然と謝罪が口に出た。丁寧にドアを閉めた。門まで引き返し改めて表札を見る。実家である。


 すると玄関が中から再び開けられた。


「依里亜、俺だ、父さんだ」



「……ほらね、だから来たくなかったのよ」


 たっぷり間をとったあとの依里亜の呟きは、胸に抱いていたレビにだけ聞こえた。父親の(ひづめ)の音が鳴る。



「お父さんそれなあに? 」


 部屋に通された依里亜は、ソファーに座ると遠慮なく質問をした。


「それ?どれ?」


「その変な格好よ!! 」


「変? これが!? 立派なケンタロウスではないか」


「それどっちかといえばただのキメラ生物。あと、お父さん『ケンタ()()ス』じゃなくて、『ケンタ()()ス』ね。」


「え!そうなの? 職業に迷ってた時に、荒井さんが名前が健太郎ならちょうどいいのがありますよって勧めてくれたんだよ。この馬の格好だってお似合いですって言ってたのに」


「『チーっス!ケンタロウっス!』ってただの自己紹介じゃない。明らかに騙されてるわよ、それ! つか、荒井って誰よ! あと上半身ケンタウロスじゃない!! そして突っ込むところ多くて追いつかないわよ! 」


「荒井さんて、ゲーム始める時に来た運営の人だよ」


『あー、荒井照なら、あのチュートリアルの時来た運営のブラフの日本名ですね』


 レビが思い出す。


「そうそう、その人。何でも教えてくれたよ。で、この姿も抜群にカッコイイって」


「……インチキ運営め。で、その上半身というか顔なに? その犬」


「父さんエジプト神話も好きだから、アヌビスも迷ってたんたけど、荒井さんが両方いけますよーって。まあ変と言うならやめるか」


 というと父親は半透明のステータスパネルを表示し、ポチポチとなにやらいじると、上半身が筋肉質の人の体になった。


「……え、脱げるの? 」


「だって、お風呂とか寝る時とか確かに不便なんだよねー。これで完璧」


「あ、そうなんだ……」



 そのまま誰しもが無言のまま1分が経過した。



「下半身は馬のままかい!脱がないのかい!」


 依里亜が再び突っ込む。


「え、だってケンタロ……ウロスは俺の今の職業だから」


「下半身が馬の方が風呂も寝るのも大変でしょ! 」


 全力での突っ込みで、依里亜はポーションでも飲みたくなるくらい精神力を削られていた。


「いやあ、慣れると大したことないぞー。この格好で営業行くと好評なんだ。売上は隕石が落ちて死ぬ前の3倍だよ? 飛び込みの営業でも子供を背中に乗せたりすると、ほとんどの家で買ってもらえるよ。あと走るとすごく速いから車がいらなくなった。ガソリン代もすごく浮いているよ。まあ、この格好だと運転はできないけどな、はっはっはっ」



 父親の職業は「ケンタウロス」Lv1。

 スキルは【変身】【見たことがある人型のものに変身できる】



 色々変身できるがアヌビスが父の1番のお気に入り。その姿で娘をお出迎えしたかったらしい。


 でも、変身できるの上半身だけって何? なんに変身しても、腰から下は四足の馬って何? イケメン俳優に変身してもパカパカ歩くの? 明らかに致命的なバグじゃない。運営、絶対めんどくさかったので放置したな、これ。


 依里亜の中で、運営のブラフのあだ名が「イケメン詐欺師」に確定した。



 ガックリと脱力してると、母親がリビングに入ってきた。お茶でも持ってきたのかと思った。


 久しぶりとでも声を掛けようと思って見ると、なにやら中性ヨーロッパ風の(きら)びやかで派手な、普通の日本の戸建ての家には全く似つかわしくないドレスを着ている。頭には王冠が乗っており、右手にはなにやら先端に宝石の着いた杖を持っている。

 お茶なんて持ってない。この格好でお茶なんて運ぶ訳がない。物凄く嫌な予感がした。



「ものども! ひざまずけ!! 」


 何かのスキルが発動した。全員強制土下座。体が勝手に動いた。


「お母さんの方がさらにめんどくせえ。もうほんとめんどくせえ。」


 いくら上げようとしてもびくともしない頭を下げながら依里亜が呟いた。


休日なので2本目を投稿してみました。

よろしければ評価、ブクマ等お願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ